実用的人間学とは カントの人間学を基にした佐竹の提唱する人間学
総合的、科学的、実用的、地球市民的とは
その1、カントの 『実用的見地における人間学』について
佐竹幸一の提唱する、実用的人間学は、総合的、科学的、実用的、地球市民的な人間学であると言っています。それは、具体的にどの様なものなのかを、お話ししてみます。
その大もとはカントの『実用的見地における人間学』にあります。カントが最晩年に講義したのが、「人間学」と「自然地理学」でした。『人間学』はその講義をもとに書かれています。その人間学の講義はおもしろく当時大変人気のあった講義であったようです。ともかく、認識論から性格論、人相術まで、大変幅が広く、通俗的で大変面白いのですが、しかしカント学者からは、理論的に大したものではないと、軽視されています。
1798年に出版された、カントの『実用的見地における人間学』の序文には以下のように書かれています。人間に関する知識の学説を体系にまでまとめたと学問である、(人間学,Anthropologie)には生理学的な見地からのものか(いわば人類学)、それとも、実用的な見地(pragmatisch)のものかの二つのタイプが可能である。~実用的人間知は、人間が自由に行為する生物として、自分をどうするのか、どうすべきなのかについて研究する。われわれの人間学はこのような人間学である。このような知識は、学校を出たあとに、身につけなければならない「世間知」とみてよい。~しかし、ただ人間に関する知識を、羅列的に知っているだけでは、実用的な人間学と呼ばない。それは人間を世界市民(訳により世界公民)ととして認識するときに初めて実用的と呼ばれる。
カントによれば、人間は、技術的な素質、実用的な素質、道徳的な素質を持つ点で他の動物と区別される。「実用的な素質」とは、技術的な発展(道具の発展)の素質を基礎として、人間は文化、社会を通して、文明化(市民化)していく素質をいう。そして最後に、人類全体の道徳化の素質を高めることが(永遠の)課題として人間に課せられている。人類全体が、道徳化されていく方向を求めることこれが世界市民となるということである。
人類の歴史を過去から未来に向けて、通時的に、技術的段階(文化)、社会形成段階、(文明)、道徳的段階(世界市民)の三段階として把握するのはカントの一環的な歴史観であった。 参考 カント全集15、人間学 渋谷治美訳 岩波書店
佐竹の実用的と、地球市民的とは、このカントの実用的、世界市民の意味ををふまえながら、ひとつはよりよく生きていくための知恵(世間知)を、人間に関する知識を、どのようにまとめ上げ実際に、役立てようとするということを、求めようとすることと、地球市民とは、人間だけの道徳のレベルだけでなく、世界の環境問題までを視野に入れた、見地に立つべきであるという、考え方に基づいています。
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