人類の起源 ① ラミダス猿人以後・追記・NHK「人類誕生」2018
ラミダス猿人とアファール猿人の違い
人間とは何かということも追及する人間学にとって、人類の起源の問題は、きわめて重要なことは言うまでもありません。ここでは、ごく最近発表された、アルディとなずけられたラミダス猿人と、その前に、人類の起源としてもてはやされたルーシー(アファール猿人)との比較、チンパンジーとの比較などを書いてみることにします。
2009年の10月2日のScience誌に、1994年にすでに発見されていた、ラミダス猿人について、11本の論文からなる、特集が発表されました。カリフォルニア大学のホワイト教授と、東京大学の諏訪 元教授の共同研究によるものです。ずいぶん前に発見されたのに正式な研究成果の発表はずいぶん遅くなりました。今は11月3日から29日まで国立科学博物館に、レプリカですがおかれています。比較のためのチンパンジーの頭骨とルーシーの骨盤模型が展示されています。国立科学博物館には、いろいろな年代の人類の復元模型が作られています。大変よくできていますから、興味のある方はぜひご覧になるといいでしょう。
アフリカ大地溝帯の乾燥とサバンナ化
今から、600~700万円前、アフリカの大地溝地帯で乾燥がすすみ、森林がサバンナに変わっていきました。このとき、樹上生活をしていたチンパンジーやゴリラなどは後退した森林にのこりました。ところが、サバンナ地帯に住もうとする類人猿が現れました。それこそが人類の起源となる、最初の猿人の発生です。過酷なサバンナで生き残るために、人類の祖先は、直立2足歩行を始めました。直立すれば、遠くも見えますし、何より手が空いたのです。そしてその手で道具を作るようになりました。河合雅雄氏はヒト的な家族が生じ、男女の分業が始まり、労働の始まりは社会の始まりのもとであると言っています。
ラミダス猿人(アルディピテクス・ラミダス)
ラミダス猿人は、エチオピアで発見されました。身長120cm、体重45から50キロの成人女性で「アルディ」となずけられました。年代は440万年前です。350万年前のアファール猿人のルーシーよりかなり前になります。特徴は脳のサイズは300から350CCで、チンパンジーなみでした。450から500ccのルーシーに比べて、身体に比較してかなり小さいと言えます。ただチンパンジーに比べると、額の出っ張りや顎の出方などはかなり違います。何よりも2足歩行していたというところが決定的に違います。ですから、人間になる道は脳の巨大化ではなくまず直立2足歩行であったと言えます。そして道具の製作と使用、そして労働の始まりです。
アファール猿人 (アファレンシス)
「ルーシー」(アファール猿人)は、やはりエチオピアで発見され、身長110cm、体重29kgです。「アルディ」に比べると脳が大きくなっています。アルディは土踏まずのアーチがないことや、足の親指が動かせる、など樹上生活も可能な形を残しています。腕もかなり長かったようです。アルディは、そんなに歯が摩耗していないのに対して、ルーシーは、イネ科の植物や根茎類などをかじってかなり摩耗しているという違いがあります。アルディは森林とサバンナの境界あたりに住んで、地上と樹上を自由に行き来していたのではないかと言われています。
人類と他の霊長類の違い
一夫多妻的な霊長類のオスの犬歯はオス、メスで大きな違いが出ます。犬歯のゴリラでの雌雄差は50%、チンパンジーの雌雄の差は20から30%、アルディの、犬歯の男女差は10から15%とあまりなく、一夫多妻ではなく、チンパンジーに比べると攻撃性も強くなかったようです。家族で生活していた可能性が高いのです。ですから河合雅雄氏の説にも近いと思います。
チンパンジーと人類の遺伝子の違いがあまり大きな違いがないといいますが、直立2足歩行、手の自由と道具の製作と使用、家族の分業と社会生活の変化などは、チンパンジーと大きな違いがあり、その後の脳の発達などに先行して起きています。600万年前の最初の人類に分岐するものとして、まだ断片的な化石しか見つかっていないサヘラントロプスなどにも共通する部分が多いと言われます。これからいろいろな新しい発見があり、人類の起源に関するミッシングリンクも次第につながってくるように思われます。
★ 河合雅雄氏の家族が人類を生み出した、という話は私のブログに書いてあります。
よろしければご参照ください。2011年6月25日版
追 記 NHKスペシャル・シリーズ「人類誕生」の第1集 2018年4月9日放送
「こうしてヒトが生まれた」
20種類もの人類が生まれ、ピンチを生き残った者だけが生き残った。
440万年前にアフリカで生まれた「アルディピテクス・ラミダス」
サルとヒトの特徴を合わせ持ち身長は120センチくらい、普段は木の上にいて、地上に降りては二足歩行で木の実などをとっていた。ところが大地の激変で草原が乾燥化していったが、一夫一妻制が有利に働き生き残った。
ラミダス猿人とアファール猿人との比較
ラミダス猿人は脳はそれほど大きくなかった。足の形も樹上生活に向いたような足で木をつかめるような形だった。直立二足歩行は果物などを抱えて持ってくるのに適していた。
ラミダス猿人の復元図
ラミダスの骨盤は、現代人と同じように直立2足歩行に向いた骨盤の形。
ラミダスはチンパンジーに比べ、オスの犬歯が大きくなかった。一夫多妻のチンパンジーのオスの犬歯は争うため大きい。
240万年前の「ホモ・ハビリス」は、動物の骨を砕いて骨髄を食べるために石を使った。
道具を使うヒトの誕生です。
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