うつ病の人間学 その1 うつ病とは何か
2007年の2月に、実用的人間学セミナーでお話したことの要旨を書いてみます。今うつ病は、深まる不景気の中で、過重労働、失業、仕事の変化(コンピュータにかかり切りなど)ぎすぎすした職場やそれが持ち込まれてしまう家族環境、さまざまな要因で、うつの人が増大し、うつに伴う自殺も死亡原因の上位で3万人以上で推移しています。特に20歳から39歳までの死亡原因の1位とい深刻さです。すでに3年近く前にお話したことですが、その深刻さはさらに増しています。デフレスパイラルによりさらに一般の人々の収入も減少し、状況は悪化するのではないかと思われます。早急にさまざまな対策が取られなければならないところです。
うつ病とは何か
うつ病(depression)とは、気分障害の一つで、よくうつ気分や不安、焦燥、精神活動の低下などの精神的症状、食欲低下、不眠と言った身体的な症状などを特徴とする精神疾患です。個人差はありますが、しばしば自殺しようとする気分が起きて、実際に自殺してしまうのが恐ろしいところです。そうとうつを繰り返す躁うつ病と、うつだけのうつ病があります。この病気は「こころの風邪」と言われるほど、だれでも掛かりうる可能性があります。うつ病の障害有病率は、男性15%、女性25%で女性のほうがかかりやすいものです。
「仮面うつ病」 身体的な症状が目立ち、抑うつ的な精神状態が現れないものを言います。自分がうつ病という自覚がなくないかを受診します。うつ病が中なか発見できず、重症化するケースもあります。強迫症状や、パニック障害、不安障害を併発することがあります。フィンランドでは、うつに基づく自殺者が大変多かったので、国を挙げて取り組み、かかりつけ医にうつ病についての講習を施し、早く見つけるようにし、看護師にもうつに対しての教育を強め対策をすすめた結果、劇的に自殺者減少したようです。
「大うつ病」 抑うつ状態が激しく、自殺を企て実行する人が多いものをいいます。
「パニック障害」 実際には危機ではないのに、脳が幻の危機を感知してパニック発作を起こします。息苦しくなって、心臓が早くうち、胸が痛くなる。心臓発作に似ているが、心電図をとるとなんでもないのです。電車の中など決まった場所で起こりやすいのだそうです。
お悩み相談の中で、「ストレス・うつ」についてはどのような傾向があるかなどについては、「エキサイトフレンズ」という出会い系サイトの大手で調べてみましたそれは登録人数300万人という、サイトの中で最大のものです。いろいろある中で比較的まじめな感じのサイトです。そのうちお悩み相談は男性約2万人、女性1万人でした。これは真剣なお悩み相談ばかりです。さらにその中で、「ストレス・うつ」についての項目では男性1481件、女性710件でした。年代別にみると、男性は 18歳から35歳が561人、35から45まで、623人、45歳以上297人です。女性は18から35が353人、35から45が267人、45歳以上が90人でした。だいたいの傾向がわかるとおもいます。35と45歳とが重複していますから完全な資料ではありませんがだいたいの傾向が分かると思います。男性は、中年に一番多く、女性は若い世代が多いということです。
会社内でうつ病になった人
この当時の佐竹の会社で、うつ病になった人について。リフォーム業務を担当したが、力量的にも厳しい仕事を受けて、仕事時間も、トラブルも生じ、うまく進展しないので、その仕事が終わるころにはうつ状態となり、会社に出てこなくなりました。心配した、会社のメンバーが、かわるがわる、部屋をたずねました。はじめは家で丸くなって寝ているだけだったそうです。傷病手当で6割お金が出るから安心してゆっくり治してくださいと社長の私は伝えました。自分を心配してくれている人がたくさんいるというのが支えになったそうです。トランペットをふいてみて、深呼吸をすることが多くなり、次第に音楽を通しての仲間や職場の支えで、次第に復活してきました。そのうちに次第に活動的になり、ようやく職場に復活するようになり、表情も別人のように明るくなりました。
うつ病の自己診断テスト
実用的人間学研究会では、うつ病の自己診断テストをやってみました。テストにはハミルトンのうつ病評価制度やツングのうつ病尺度などいろいろあります。参加した皆さんはさすがに該当する人はありませんでした。ちなみに100点のうち、39以下はうつがなしで40から49は軽度の抑うつ状態、50以上が中どのうつです。ちなみに私の場合は31点でしたが、私の妻は43点でした。このテストについては「うつ病の人間学」でひきつづき紹介いたします。ご自分で試してみてください
うつ病は総合的人間学的に解決しなければならないと思います。
うつ病にはきわめて、多くの要因が絡みあっています。まさに人間のあらゆる側面が関係しているのです。原因には、カテコールアミン説、脳内セロトニンの減少、ストレス仮説などがあります。
1)生物学的側面 身体因性のうつ病
① シナップス神経伝達物質 セロトニンやノルアドレナリンの減少による
② 病気がうつ病を引き起こす 甲状腺機能障害、アジソン病、クッシング病、糖尿病、脳腫瘍、すい臓ガン、脳卒中、悪性貧血、月経前などに起きる可能性がある
③薬が引き起こす可能性 インターフェロン、ステロイド、降圧剤、抗パーキンソン病薬
④ 遺伝学的なもの うつ病は遺伝的に発生しやすい傾向があります 内因的なうつ病は遺伝的な要素が大きそうです
⑤疫学的な研究 地域での違い 地域における心の健康づくり~うつ、うつ病の予防と対応という、鹿児島県の川薩保健所の取り組みがあります。大変優れた取り組みで参考になります。また資料活用自由というのも助かります。改めて紹介します。
2)精神医学的側面
躁うつ病は統合失調症と共に基本的な精神病の一つ
精神薬理学とともに総合的に治療する
3)心理学、精神療法 認知療法やカウンセリングなど
様々な療法が試みられています
4)人間(対人)関係学による対策
人間関係がストレスを引き起こす大きな原因、反応性のうつ病は、周囲のさまざまな状況のストレスの蓄積により発生する
5)社会学、経営学、社会精神医学、司法精神医学など
会社や組織のなかでの過重労働、人間関係の悪化など 今これが一番問題である うつ病に対して会社でカウンセリングの対策をとっているところも多い
6)文学や哲学など
精神異常は、しばしば文学哲学に大きな影響を与えています
例、 夏目漱石 躁うつ病など小説も後期にはその傾向が反映される その他文学者で精神病で、作品に影響を与えてという人は大変多いのです。
このようにさまざまな要因が絡まって生じています。一つの分野だけではとても対応が難しいのではないか。そこで実用的人間学的な取り組みも必要になってきます。
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