ホモ・サピエンス(現生人類)ネアンデルタール人と混血?
2010年5月7日付の新聞各紙には、「ネアンデルタール人と、現生人類(ホモサピエンス)とが、混血した可能性が多いということがDNAの分析の結果わかった」、と報じられました。ドイツのマックスプランク進化人類学研究所などの、国際チームが、7日付のアメリカの科学誌『サイエンス』に発表したということです。
今年の3月25日にも、やはりドイツの研究者がシベリア南部のデニソワ洞窟にいた104万年前に誕生したデニソワ人が、その後4万から3万年前まで現生人類と共存していたと発表したばかりです。 今回発見されたのは、クロアチアの洞窟で見つかった約4万年前の旧人(ネアンデルタール人)の3人の女性の骨片で、そのゲノム解析をした結果わかったといいます。ネアンデルタール人はアフリカから40万年ほど前にアフリカを出て、ヨーロッパと、西アジアに広がっていきました。ネアンデルタール人は、がっしりとした骨格で脳容積はホモサピエンスより大きく、埋葬等の宗教的な儀式なども行っていたとされています。その復元像ははじめ毛むくじゃらな野蛮なスタイルだったものが、頭骨の正確な復元により、今では、北方に住むものは金髪であった可能性が高く、顔つきもいまではホモサピエンス(現生人類)とそれほどかわらないとされています。遺伝子的にはほとんど同じようであるため当然混血して子どもができることでしょう。戦って滅ぼしたのではなく、ときには協力も行われたはずです。
4万年から3万年の間の1万年の間は両人類が共存していたということが分かっています。またイスラエルやシリアの地域では7、8万年前からの、もっと古くから両者が共存していたと思われます。そのころに混血したのではないかと言われています。ネアンデルタール人を、ホモ、ネアンデルターレンシスという別の種ではなく、ホモ、サピエンスの亜種だという説もあって、遺伝子的にも大変近く、混血する可能性は十分にあります。そしてそのネアンデルタール人の遺伝子配列(ゲノム配列)は1から4%、現代人に移行していると推計しているのです。アフリカの南部と西部アフリカに残ったホモサピエンスにくらべ、フランス、中国、パプアニューギニアのホモサピエンスのゲノムを調べた結果、ネアンデルタール人の遺伝子のゲノム配列ににている要素が入っているところが多くなっているというのです。要は、アフリカに残っていたホモサピエンスは、ネアンデルタール人が住んでいなかったアフリカでは混血しようがなかったということです。
ネアンデルタール人とホモサピエンスがどのような関係があったのか、大変興味深い内容のニュースでした。従来では、言語を獲得し、文明度を高めた、ホモサピエンスが、ネアンデルタール人を圧迫し、全滅させたという説も多かったので、今度発表された内容は両者の関係をよく知るための、貴重な成果でした。改めてもう少し詳しい研究成果が出てくることでしょう。
追記 2015年8月25日
2014年に出された、スヴァンテ・ペーボの書いた本が2015年6月30日に「ネアンデルタール人は私たちと交配した」という題で出版されました。書評でも大きく取り上げられ、NHKスペシャル「生命大躍進」や国立科学博物館でも特別展が開かれ、その中で取り上げられました。2015年10月には、人間学研究所の合同例会で、筆者が話しをすることになっております。8月には関連したブログをたくさん書きました。
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