絶世の美女ー悪女、妖女かどうかも男性しだい 春秋時代夏姫と巫臣
春秋戦国時代の際立った美女 西施と、夏姫
中国の4大美人の一人が西施で、「ひそみにならう」ということわざでも有名です。呉王夫差が西施を寵愛し、政治をかえりみず、越王に負けてしまいました。それは、范れいの策によるもので、越王が勝利した後、西施は范れいとともに逃げて余生を全うしたといわれます。妖といわれる美人でも、相手が范れいならば大丈夫なのです。
その時代に、同じような絶世の美人で、西施と並び称されたのが、夏姫です。夏姫は春秋時代の鄭の国の公女として生まれます。当時は鄭は小国で、強国の晋と楚の間で苦労していました。夏姫に関しては、春秋左伝や史記に書かれ、その後さまざまに書かれてきました。だいたい儒教の立場からいえばトンデモない悪女であり、妖女ということになっています。日本でも、中島 敦や海音寺潮五郎や駒田信士などが書いていますが、宮城谷昌光の『夏姫春秋』はもっともおもしろい小説となっております。宮城谷さんはこの小説で直木賞をとりました。海越出版から、講談社の文庫本になっています。その内容を中心に書いていきます。
夏姫と、交わったものがことごとく死んでしまう
鄭の公女として生まれましたが、10歳で兄の子夷(後の霊公)が寝所にしのんできます。この霊公はあとで子栄と子夏に殺されます。夏姫を奪った子栄も子夏も殺されます。父は13歳でとなりの陳という国の公子である、御叔に嫁がせます。そして、子が生まれ、子南が生まれます。しかし御叔は身体が衰えて死にます。陳の国の大夫である孔寧と儀行父とが、息子を応援するからと言って交わりを求めます。さらには陳公までがお互いに夏姫からもらった肌着を身につけ、見せ合うという状態になってしまいます。息子の子南はそれを見て陳公を殺します。他の二人は楚に逃げ込みます。息子の子南は1年5カ月善政をしきますが、楚の荘王は陳を責め、子南を殺してしまいます。楚に逃げた二人も殺されてしまいます。
荘王はとらえた夏姫を後宮に迎えたいと思ったのですが、占いや学問に長じた巫臣(屈氏、屈玄の祖ともいわれる)に占わせます。巫臣は夏姫を好きになり、夏姫を後宮に入れるのは凶であるといいます。天下をねらう荘王は、それに従います。それで、老人の襄老に下げ渡します。しかし襄老も戦争で死んでしまいます。するとその息子の黒要が40歳くらいの夏姫を受け継ぎます。巫臣は襄老の以外をともに受け取りに行くと言って、夏姫を伴いそのまま、晋の国に亡命してしまいます。おこった荘王は巫臣の一族や黒要を殺してしまいます。このとき、夏姫はもう50歳くらいだったのですが、20代にも見えるほど若々しく、その後娘を産んだといわれます。
妖女かどうかは男しだい
夏姫は次々と、いろいろな男性に身をまかせ、そのことごとくが早くに死んでしまいました。儒教的な倫理からいえばとんでもないことですが。息子のためや世話になった家宰のためにやむなく身を任せたのであって、じぶんから進んでしたことではありません。死んだ男たちも、自業自得な面があります。ですから、しっかりとした知性と教養をもった、巫臣のもとでは何事も起こらず、幸せに暮らすことができたのです。私たちの身の回りで、夏姫のような絶世の美女と付き合うということは、めったにあることではありませんが、付き合う男しだいで、女性も善にも悪にもなるし、正にも邪にもなるのではないかと思います。
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