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2010年7月10日 (土)

「人間は奇跡そのもの」 井上ひさしさんの言葉より

 2010年7月7日にNHK総合テレビで放送された、「クローズアップ現代」の「記録せよ、そして記憶せよ、ー井上ひさしの言葉からー」をご覧になった方はいらっしゃいましたでしょうか。残念ながらしっかり記録しておかなかったための、間違っているところがあるかもしれませんし、十分にご紹介できないのですが、とても感動的なお話だったため、ご紹介することにしました。

 井上ひさしさんは1934年に山形県に生まれ、今年2010年の4月9日に肺がんのため75歳でなくなりました。父親と5歳で死別し、義父から虐待を受け、さらにはお金を持ち逃げされ、やむなく母はカトリック修道会に久さんを預けました。修道会の献身的な活動に感銘し、洗礼を受け信者となりました。その修道会の応援で、上智大学に入りました。在学中から浅草のストリップ劇場の前座の台本を書きました。その演者の中には若き日の渥美清もいました。その後放送作家になり、有名な「ひょっこりひょうたん島」の台本を書きました。その後は、小説に、随筆に、戯曲にと多数の作品を書きました。小説では「吉利吉利人」や伊能忠敬を描いた「四千万歩の男」などが特に有名です。文化功労章を受賞し、日本芸術会員となり、日本ペンクラブ会長も務めました。もう一つの側面は、政治的にもいろいろな活動をし、「世界平和アピール7人委員会」や「九条の会」の呼びかけ人などもやってきました。

 井上ひさしさんはたくさんの小説や戯曲の中で、日本が引き起こしてきた戦争にたいしてのするどい批判を書いてきました。その中で、確か私の記憶では「太鼓たたいて笛ふいて」という戯曲だったとおもいます。天皇に対して戦争の政治責任を問います。と共に自分たちにも政治責任があるのだと。                                           それから「人間は奇跡そのもの」という言葉は、戦時下で子どもができても、生まれる子が女の子では意味がないから、子どもを下ろそうかという娘に対しての言葉です。役者の名前ははっきりしませんが、国民服を着た中年の男性が直立不動のままその娘にいいます。

 「この宇宙には数えきれないほどの星があります。またそこには多くの惑星があります。(確か4兆とか言っていましたが)、その中に水ができた惑星ができたのは奇跡です。その惑星に生命が生まれたのも奇跡です。この地球上に生命が生まれたのも奇跡です。また人間が生まれたのも奇跡です。そして命がつながって今あなたがここにいるのも奇跡です。あなたに子どもができたのも奇跡です。だからあなたは生きていかなければならないし、子どももうまなければならない」

 きちんと記録しなかったために、きちんとその言葉を再現していませんが、大まかな内容は以上のようなことばです。なんと素晴らしい言葉でしょうか。付け加えるとよく、膨大な精子の中から、たった一つが卵子と結びついてあなたが生まれた、それは奇跡的なことだとも聞きます。                                                      「人間は奇跡そのものだ」だから人間は生きていかなければならない。またあなたも生きていかなければならない。きわめて単純明快な言葉です。だからこそ、その奇跡的な大切ないのちを簡単に奪ってしまう戦争に対して、井上やすしさんは強い怒りを感じているのです。

 現代の日本では、貧しくなるのも自己責任だとかいい、強いものが勝って当然という世の中です。新自由主義とグローバル化した社会のもとでは、そのような考え方を、日本の支配層はさまざまな形で、人々の心の中に植え付けてきました。また所得格差が増大する政治を小泉元首相以来続けてきた結果、デフレスパイラルになり、景気は一向に回復せず、人々の心も暗くなってしまいました。その中で、「私は生きていてもいいのだろうか」という問いを発する人々の増大、そしてうつ病がまん延し、自殺者も3万人以下に成りません。その中で改めて「人間は奇跡そのものだ」、「大事なものなのだ」ということを知ることが大切ではないでしょうか。それも「人間一般」ではなく、今生きている個人個人一人一人が、大切で奇跡で大切でかけがえのないものであるということです。

 それも単なる、個人の心がけで改善されるものではないのです。私は私のブログで書いたことですが、毎日新聞の5月3日の記事でダライ・ラマが話した「拝金主義と決別を」を、批判しました。ダライ・ラマはいいます。「長引く不況でリストラや借金苦、学校や職場のいじめ・・自ら命を絶つ人人の他、心を病む人も多い。--現代社会は人間への愛や慈しみが欠けていると」続いていいます。「祈りだけでは解決しない。次世代のために内なる価値観を重視する教育システムが必要だと」そして、「自殺を考えるなら、人に助けをもとめること、物乞いになっても恥ではないと」

 現在の日本のありさまを引き起こしたのは、大企業や高級官僚や一部の政治家たちが行った具体的な政策と政治の結果なのであって、断じて愛や慈しみが欠けているのでも、教育が不足しているのでもありません。物乞いになっても自殺するななんていうのは論外です。生活保護の申請をことわられて餓死したりしたのも、物乞いにならなかったからいけないのですか。でもダライ・ラマなどのいうような論調はよく世間で言われていることです。このような日本の状況を変えるのは、心がけではなく、民衆のための世策を行う政治に帰ることしかありません。明日は参議院選挙です。民主党が民衆の味方ではなくなり支持率を下げたのは残念なことです。

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