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2010年8月16日 (月)

法人税の実質税率国際比較に対して 「通行人さん」にこたえます

8月15日付で私の書いたブログ「韓国と日本の比較」に対して「通行人」さんが、「日本の法人税の実効税率がそんなに高くない」というのは誤りであると、書いてこられました。コメントの中では、長くてこたえきれないので、改めてこちらに書いてみました。

 「通行人」さんによれば日本の法人所得税(以下法人税)の実効税率は、先進、中級工業国の中では、高いとおっしゃっています。ですから、日本の大企業は税率の高い日本を避け、税率の安い国を選んで事業を分散しているのではないかと言っています。それで一つ疑問なのは、そのように日本で法人税を払わないようにしている大企業が多いのだということです。ではそういう大企業は日本が法人税率を下げたら日本で法人税を払うようになるのでしょうか。そんなことを言ったら世界一低くするまで戻らないのでしょうか。

 それから、「通行人」さんが言っている実効税率には、企業の社会保険負担などが入っているのでしょうか。さらには日本では研究開発控除があって、大企業がその恩典を受けていることなども、計算に入れているのでしょうか。

 「法人税の実効税率の国際比較」については、その名前で、WEBで検索していただくと、上位に出てきますが、井立雅之氏(神奈川県総務税制企画担当部長)の詳細な資料があります。興味がある方は、ぜひお読みになってください。

 国の法人税は日本30%、アメリカ35%、ドイツ25%、フランス33%、イギリス、30%、イタリア、33%になっています。基本の国の法人税そのものは特別に高くはありません。ところが日本では法人地方税が9,54%あって合計で、39,54%となりそれが他の国より高いと言われるのです。それでは地方税などを入れて比べてみましょう。合計額でアメリカ、40,75%(カリフォルニア州税を含める、州により違い、ニューヨーク市では49,95%です)、イギリスは30%、ドイツ48,55%(付加税含む)フランス36,67%(付加税を含む)、中国25%、韓国24,2%です。いずれも2010年1月現在の数字です。

 企業は税金の他に、社会保険料の会社負担分があります。日本においては50%ですが、ヨーロッパでは企業の負担率が高いのです。アメリカは社会保険料の支払いがありませんが民間の保険会社に支払う金額はばかになりません。さらに日本にはない会社の所有する不動産に対しての税負担をさせる国もあります。井立氏の資料の別表5で、GDPに対する法人所得税の不動産に対しての課税まで含めた実質税率は、日本9,3%、イギリス8,3%、ドイツ9,2%、フランス15,8%、イタリア14,3%アメリカ7,2%となっていますが、アメリカは民間保険会社に払っている保険料は、計算に入っていないので実質はかなり高くなっているのです。この結果、井立氏は「日本の法人税実効税率は先進諸国の中で、高いとは言えない」といっています。このことは財務省の役人も実は知っていることなのです。表面だけの数字で日本の法人税は高いから低くしろなどという経団連の連中の厚かましさはどうでしょうか。また、実態を知らないで、確かに、日本の法人税は高いから消費税を高くしても、法人税を下げるべきだというのはおかしなことではないでしょうか。

 それに「通行人」さんも言っているように、大企業というか多国籍企業は、会社を税金や賃金の安い国に分散させ、税金を日本にたくさん払っていないではないですか。さらに、日本では、研究開発費の税額からの控除があり馬鹿にならない金額を大企業はまけてもらっています。また減価償却費も最近、早く償却できるように企業に有利なようにかえられました。研究開発費は平成19年3月期で、トヨタは762億円、ホンダは241億円まけてもらっています。また大銀行がこのところ大幅に利益を出しているにも関わらず、前の損失を埋めてからというので、税金を長いあいだだはらっていません。また会社や金持ちに有利な株式などの有価証券での利益に対しての20%の税を10%に下げたまま戻していません(証券優遇税制)。このようなことはおかしなことではないですか。このようなことをすべて論議する必要があると思います。

 

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

「悩める税理士さん、フォローありがとうございます。専門家の立場で、表面の数字の「実効税率」だけでは比較できないということを書いていただきました。でも、多くの人々は日本の法人税の実効税率は高いからさげるべきだという、「通行人」さんのような考えを注入されているのではないでしょうか。      また「悩める税理士」さんの言うようにソフト産業医業関連を伸ばすのも大切なことだと思います。
 改めて書きますが富士通総研HPで賃金の下落がデフレの原因であると、かいています。(「米国は日本のようなデフレにならない」 根津利三郎 富士通総研8・13)それによれば日本の給与体系が賃金の低い非正規社員の比率を高め、それをいままでの自民党政府政府が後押ししてきました。給与を上げないで、内需を高めないで、景気がよくなるわけがありません。税理士さんは中小企業は税を納めるどころではないと言っています。私も永年中小企業の社長をやってきて、下請けの単価をあげてもらえないないために苦労してきました。

現政権は法人税率は下げるが、課税ベースは確保する。
つまり、租税特別祖措置法に規定する所得を下げる特例を改正するとしています。
実効税率だけで比較はできないと言うことです。
実効税率が諸外国に比して、少々高いとしても課税所得が措置法の特例により減額されれば納税額は少なくなります。経済刺激の特別税額控除なども残されています。
だから、実効税率だけで納税額が高い低いとは言えません。
ましては、税率が高いので企業が諸外国に逃げたともいえません。それ以外の要因が大きいのでは。
と言うことから、日本の実効税率は決して高いとは言えません。
中国などに負け、製造業が成り立たなくなったのではないでしょうか。
ちょっとそれますが、では、ソフト産業医業関連などの立国になってはどうでしょうか。
中国は日本の医療を信用しています。
私は現に難病の患者を治療のために受け入れています。医療従事者を増やし、外貨獲得に貢献したらどうでしょう。今は国内の医師は不足ですから、すには出来ないことですが、長期計画で日本の将来へ向け考える必要があります。税収も増えると思います。
今、満足に税金を払う事のできる中小企業は少ないと思います。私の顧問先で節税相談のできる羨ましい企業はほとんどありません。いかに収益を上げるかばかりです。実効税率云々以前のことです。
苦悩する税理士

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