人類の起源は道具の使用と重なる 猿人から石器使用(道具と人間)
石器を使って肉を食べていた証拠
8月21日付の新聞各紙は、いまから340万年前に、猿人が石器を使って動物の肉を食べていた可能性を示す石器が見つかったと、12日発行の科学誌『ネイチャー』に論文が掲載されたと報じました。アメリカ、カルフォルニア科学アカデミーのゼレセナイ・アレムセゲド博士の国際研究グループによるものです。
発見された場所は、アフリカ東部のエチオピアの北東部ディキカというところで、従来は最古とみなされる石器は260万年前のものでしたから、80万年前にさかのぼります。使い始めていたのは現生人類であるホモ・サピエンスを含むホモ(ヒト)属の初期の人類であるとみなされていました。しかし340万年前には、まだホモ属にはなっていない猿人(ピテクス類)が、すでに石器(道具)を使っていたということは、人類の起源を探るにあたってはきわめて重要なことです。国立科学博物館の河野礼子研究員は猿人とホモ属の違いについて再考を促す発見だと言っています。
化石はウシ程度骨の肋骨やヤギ程度のものとみられる大たい骨の破片です。化石の表面に線状の傷が見つかったため、電子顕微鏡で調べた結果、石器でつけられた跡と分かったというのです。鋭利な石でつけた傷やたたき割ったような跡が残っていました。傷に挟まっていた石の粒も見つかったといいます。石器そのものはまだ見つかっていません。発見が期待されます。
化石が見つかった場所から200メーターほど離れた場所には、「ルーシー」とよばれる有名なアファール猿人(アウストラロピテクス・アファレンシス)が見つかっています。「ルーシー」とはいろいろ発見された化石の中で、ほぼ完ぺきに骨がそろっている化石です。身長1メートル位で、脳の大きさは400ミリリットルで、チンパンジーなみですが。日本の足で直立2足歩行をしていたということがはっきりしていて、脳の大きさより、直立2足歩行が先行したことを示す大切な化石です。女児なので、「ルーシー」となずけられました。直立2足歩行して自由になった手でいろいろな道具を作りだしてそれを使用するというのは、人類の大きな特徴です。
『道具と人間』(人間を学ぶ総合的学習の勧め) について
当人間学研究所の名誉所長である、小原秀雄女子栄養大学名誉教授も道具の製作と使用がいかに人類進化にとって重要であるかを常に述べておられました。
そして、人間学研究所の主要研究課題として取り組み、その成果は教科書副読本として『道具と人間』シリーズとして2004年に、『道具と人間』小学校中学年、高学年、中学校プログラムの3分冊として明治図書から発行されました。柴田義松、小原秀雄、北原眞一監修価格 2000円
この本の中学校プログラムに筆者も
「お風呂に見る道具の変遷」、「占いについて」、「人間と顔」(自画像を描く)
という三つの項目を書いております。
食べ物の変化が大脳の発達を促す
道具を使って、動物の肉をはぎとったり、骨をたたき割って、なかの骨髄を食べることができるようになり、食べ物の幅を広げ、またその摂取された動物性の高タンパク質が、大脳の発達を促したという点でも、この初期猿人が道具を使っていたということが分かったことはきわめて大きなことと思われます。
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