脳ブーム、あなたは間違った考えを信じていませんか?
さてクイズです どれが正しくどれが間違っているでしょうか?
1、 右脳と左脳は異なる働きを担う。どちらかが優位かで”右脳型”と“左脳型”にわかれる
2、私たちの脳は全体の10~20パーセントしか使っていない。
3、語学や楽器演奏など、学習には適切な時期があり、それを逃してはいけない
4、睡眠学習は効果がある
5、記憶力は改善できる
6、女性の脳と男性の脳は大きく異なる
7、生後3歳までに、脳の基礎的な能力は全部決まってしまう
みんな正しいのではないの?とおっしゃる方もいるかもしれませんね。普段そのように言われています。しかし実はみんな誤っているか確証がないのです。
「ジャパンスケプティクス」という学会誌の最新号に、学会運営委員の池内 了氏が「400字の宇宙」というコラムに「脳神経科学神話」という短文を書いています。それによりますと、「今、脳ブームとやらで、書名に「脳」がつく本が3000冊以上も出ているという。かって「脳内革命」という本がベストセラーになったが、その流れをくむのか「心の時代」といわれるようになり、無定形の心を操るのは物質的な脳だから、脳の機能がわかれば心がわかると過大にに考えられている為かも知れない。脳科学研究者やスピリチュアルの専門家がマスコミをにぎわせているのがその例証だろう。しかしまだ不確実な知しか得られていないのに脳を活性化するとか隠れた力を引きだすとか言われ、FMRI(機能磁気共鳴映像)による写真を見せられると信用したくなる。それで上記のような言説が世間に流布されている。「日経エレクトロニクス」誌が独自に調査した結果では、「人間の脳はほぼ無駄なく使われている」と考える人は9パーセントにしかすぎず、「人間の脳は10%ぐらいしか使っていない」と考える人は91%に上るそうです。いかに「神経神話」がまかり通っているかがわかります。
この「神経(ニューロ)神話」というものは日本だけではなく、世界中に広がっているものなのです。2007年とだいぶ前に、経済協力開発機構(OECD)の報告書で、「脳科学神話を一掃する」といって、上記7項目を詳しく論じ、批判しています。そしてこの誤った考え方に基づいて、教育することによって、子供に悪影響を及ぼすというのです。2010年1月には、日本神経学会が声明を発し、「脳ブーム」や「疑似・脳科学」に対する警鐘を鳴らしました。
OECDの報告書によると、19世紀の中ごろにはやった非科学的な「骨相学」の根拠に基づいて、アフリカのルワンダによる民族紛争で、べルギーが少数民族のツチ族を、骨相学的にいいからと支配層にする根拠に使ったいうことを行っています。「骨相学」は「頭の形で人の優劣や性格の違いなどがわかる」という誤った学説です。血液型もそうですが、誤った疑似科学は正当な科学より広まりやすいのです。昨年日本神経学会の声明後、各新聞などが取り上げましたが、いちねんたっても、その「脳科学ブーム」が収まる気配はありません。相変わらず、教育熱心なお母さんなどが、早く幼児のうちに「脳力」をアップしなければと幼児教育に大量のお金を投じています。そのた子供のために「脳力アップ」のためのいろいろな本や教材を買っていますが、それが却って子供に悪影響を及ぼすとしたら。それは恐ろしいことです。
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