フォト
無料ブログはココログ

« エンゲルスの「イギリスにおける労働者階級の状態」その1 | トップページ | 経営人間学シリーズ(15)経営人間学について「ひつめぐ」さんの質問に答えます。経営人間学11 »

2011年3月 3日 (木)

エンゲルスの『イギリスにおける労働者階級の状態』 その2 人間とは

当時のイギリス社会

前回は、この本が生まれる当時のイギリス社会などの背景について書きました。ここでは具体的に、この本の中の、これはと思える部分をかきだしてみたいと思います。訳文は「マルクス、エンゲルス全集」大月書店版です。文章の内容は一部簡略化してあります。コメントは筆者による。

 私は(労働者)諸君の生活状態を知るためにできる限りの誠実な注意をはらってきた。文献を集めるだけではなく、諸君の住宅をたずね生活条件や苦悩について語り合い、諸君の圧政者に対する闘争をこの目で見たいと思った。p225

 私は諸君がただのイギリス人、単独の孤立した国民の一員以上であることを知った。私は諸君が人間であって、自分の利益と全人類の利益とが同じであることを心得ている、あの巨大で国際的な人類の家族の一員であることを知った。~この「単一不可分の」人類の家族の一員として、言葉のもっとも強い意味での人間として、このようなものとして、私および大陸の多くの人たちは、あらゆる方面における諸君の進歩を歓迎し、諸君が迅速に成功を収めることを希望する。 p226から227 

 コメント-ー「人間」というものを考えるとき、このような見地で考えることは大切なことではないでしょうか。

 機械が採用されるまでは、原料を紡いだり織ったりする仕事は労働者の家の中で行われた。これらの織布工はその賃金で立派に生計を建てることができた。~彼らは壮健で立派な体格の持ち主で、聖書に耳を傾ける「尊敬すべき」善良な一家の主人たちであった。~しかし彼らはロマンチックで情緒に富んでいたが、人間に相応しくないこうした生活から抜け出ることはない。少数の貴族に奉仕するはたらく機械にすぎなかった。~             産業革命はこのような状態を徹底的に推し進めたにすぎない。労働者を機械に変え、残された独立的な活動の最後ののこりかすまで奪い去ったが、まさにこうすることによって労働者に対してものを考え、人間的地位を要求する刺激を与えた。(p230~232)

 ロンドン人が文明の驚異を実現するために、自分たちの人間性の最良の部分を犠牲にしなければならなかった。二三の少数者が自分の能力を完全に発展させ、(その代わり)何百もの力が無為に放置され抑圧された。すでに街路の雑踏が何か不快なもの、なんとなく人間性に逆らうものを持っている。~それらの人たちはみな同じ本性を持ち、幸福に成りたいと同じ関心を持っている人間ではないのか?~走りすぎる群衆は、~だれも他人に対しては目もくれようとしないのである。~個人の孤立、利己心が今日の社会の根本原理になっている。~強者が弱者をふみにじり、少数の強者すなわち資本家があらゆるものを強奪するために、多数の弱者、すなわち貧民には、ただ生きているだけの生活も残されないという結果になる。(p251)

コメントーこの原理は当然今の日本社会にもはたらいている

 厳しい生活状況におかれているロンドンの三家族の例を挙げ、ロンドンのすべての金持ちよりはるかに有能で尊敬すべき有能な家族がこのような非人間的な状態におかれており、自分に罪はなくあらゆる努力をしているのに同じような運命に遭遇するかも知れないと思っている。P258

 追加です

 一人ひとりの労働者の日常の食物そのものは、もちろん労賃に応じてちがう。~割といい労賃のものはいい食物に、つまり毎日かかさず肉にありつき、夕食にはベーコンとチーズにありつく。次第にかせぎの少ない層に行くと、動物性の食物は、ジャガイモの中に刻み込まれたわずかばかりのベーコンになってしまう。もっと低い層に行くと、これもなくなってただチーズとパンとオートミールとジャガイモだけしかなく、最下層のアイルランド人のところまでいくと、ジャガイモだけが食物になっている。 P303

コメント-エンゲルスの時代からずいぶんたった日本でも同じような状態ではないでしょうか。生活保護ももらえずに餓死してしまう人がいるくらいですから。

 プロレタリアは自分の必要とするものを、国家権力によって独占を保護されている、このブルジョアジーから手に入れるしかない。したがってプロレタリアは法律の上でも事実の上でもブルジョアジーの奴隷である。~そのうえ、ブルジョアジーはまるで労働者が、自由意思で行動し自由な共生されない同意によって成年に達した人間として、自分と契約を結んでいるかのような外観をも労働者に与えるのだ。(p306)

コメントーこれは現代の日本でも基本的に変わってはいない

 労働者を生活できないような境遇におき、そのことによって犠牲者となることがわかっていてもその諸条件を存続させる行為はまさに、社会的殺人である。p326

 多くの家庭では妻もその夫と同じように家の外で働く。そしてその結果は子供の完全な放任であり、子供は閉じ込められるか追い出される。このような子供がいく百人もあらゆる種類の事故によって生命を失うといっても少しも不思議でない(P340)                -日本においても親の収入によるこどもの教育格差が、その後の子供たちの将来において大きな格差になって固定化してしまっている。

 労働者は支配階級にたいして怒りを感じている間だけ人間なのである。自分たちを縛り付けている首かせを辛抱強くがまんし、首かせをしたまま生活を愉快にしようとし始めると労働者はたちまち動物になるのである。(p346)

 企業は、強制労働一般にみられる人間を動物化する作用をさらにいく倍も強めた。(p351)

 労働者は、日常生活においてはブルジョアジーよりもはるかに人道的である。乞食はたいてい労働者だけに呼びかけるものだ。労働者にとってどんな人間でも人間であるが、一方ブルジョアにとっては労働者は人間以下のものなのである。(p357)

 万人の万人にたいする戦争といった状態のもとでは、小数のものが利益を独り占めし、そうして大多数の者から生存手段をうばう。機械が改良されるたびに労働者は生活の道をうしなう。そして改良が重要であればある程それだけ失業する階級の数も増加する。そのたびに一群の労働者のうえに、商業恐慌の作用がもたらされ、欠乏、貧困および犯罪が生み出される。(p336から367)

コメントー日本も全くその通りではないか。大企業は不景気だといって、簡単に社員を首切りし、また低賃金に押さえつける。そして下請けには最低限の支払いしかしない。その一方で、政府に献金し、働きかけて、さまざまな優遇策を手に入れる。その結果、社内留保は驚くべき数字に膨れ上がっている。(下記参照)

 労働者の住宅が工場から半時間またはたっぷり一時間かかるほど遠いところにあっても工場主はちっとも気をかけない。-(日本ではこれではまだいいほうですね。日本では満員電車でもっと時間がかかります)イギリスのブルジョアにとっては自分が金さえ儲かれば自分の労働者が飢えようが飢えまいが全くどうでもいいのである。一切の生活関係が金もうけを物差しにしてはかられ、金を生まないことは馬鹿げたことであり、非実際的で観念的なものである。(p511)

コメント-日本の大企業は、不景気だとかいいながら、大量の利益を社内留保として抱え込みながら、(2012年1月追記 資本金10億円以上の大企業が保有する内部留保が2010年度で266兆円に達することが労働総研の調べでわかりました。前年度比9兆円増です。ところが民間企業の年間平均賃金は2000年に比べ2010年には50万円も減少しています。赤旗2012年1月17日)労働者の賃金を下げ続け、非正規化し、雇用を減らしています。さらには政府を使って、一方では消費税を上げさせ、法人税を下げさせようとしています。エンゲルスの指摘しいることはもう古いのでしょうか。まさに指摘している通りではないでしょうか。マルクス、エンゲルスはもう古いというのは誤りです。

 労働者にとっては自分の生活状態に全面的に反対するよりほかには自分の人間性を実証するための活動分野が何一つ残されていないとすれば、こうした反対をしている時にこそ最も愛すべきもっとも気高い、もっとも人間的なものとしてあらわれるに違いない。(p447)

 ブルジョアは労働者を人間とは考えずに、いつも面と向かって人手(hand)」と考えている。ブルジョアはカーライルが言うように、人間と人間との間に現金支払い 以外の関係を一切認めない。自分と自分の妻との間のつながりでさえも、百のうち99はただの「現金支払い」にすぎない(p511)

 資本家が慈善という立場で行う新救貧法はプロレタリアは人間でなく、また人間として扱われるに値しないということが公然と宣告されている。~プロレタリアが人間ではなくまた人間として扱われるに値しないということが公然として宣言されている。イギリスのプロレタリアートの人権を奪還することは、イギリスのプロレタリアートに安心して任せておこう。(p528)

コメント -いかがでしょうか、エンゲルスが書いた状況と今の日本の状況があまり変わっていないと思わないでしょうか。そして昔より格差はさらに広がっています

 GDPが世界第二位(今年三位に落ちたようですが)にも関わらず、根本的な矛盾が変わっていないところが資本主義の本質的な矛盾を示すところです。

 資本主義の世の中ではいかに人間が人間として扱われてこなかったか、また労働者の運動が人間の回復を求めることであることがよく分かると思います。 

 

 

« エンゲルスの「イギリスにおける労働者階級の状態」その1 | トップページ | 経営人間学シリーズ(15)経営人間学について「ひつめぐ」さんの質問に答えます。経営人間学11 »

マルクス、エンゲルス人間論」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« エンゲルスの「イギリスにおける労働者階級の状態」その1 | トップページ | 経営人間学シリーズ(15)経営人間学について「ひつめぐ」さんの質問に答えます。経営人間学11 »

2023年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

最近のトラックバック