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2011年3月24日 (木)

「錯覚の科学」が脳科学の通説を覆すあなたの脳が大ウソをつく(270)

『錯覚の科学』という本(C・チャブリスとD・シモンズ2011年2月10日文藝春秋刊)の新聞広告が出たときに、すぐに購入したいと思っていました。近くの書店にも出ていたので買ってきました。英文の原題は "The Invisible Gorilla"で、すなわち、「見えないゴリラ」で著者である前にあげた二人の心理学者が行った驚くべき実験に基づいています。本の帯封には、本の中の一文が紹介されています。

「私たちは2つのチームがバスケットの試合をする短いビデオを制作した。次に、学生にビデオを見せ、片方のチームがパスする回数をカウントしてもらうという実験を行った。

実はビデオの途中で、ゴリラの着ぐるみをきた学生が試合に乱入するシーンがあった。 

しかし驚いたことに、およそ半数の学生がゴリラに気づいていなかった!」

 ゴリラの着ぐるみをきた女子学生が登場し、選手の間に入り込み、カメラのほうに向かって胸を叩き、そのまま立ち去った。その間9秒。パスの数を数えさせるのは気をそらすためのものだったのです。そしてあとでその時にパスを数えているときに何か変わったものに気づきました?とたずねます。半数の人はいいえと答えます。ゴリラがいたんですよ、というと、「え、うそ」と。いろいろ条件を変えてみてもやはり半数の人がゴリラを見落としてしまうのです。

 これは予期しないものに対する注意力の欠如から起きるもので科学的には”非注意における盲目状態”とよばれているものです。この実験は1999年に雑誌で紹介されて以来、各地で実験され、心理学の世界で大きな話題となりました。わたしもこのころテレビ番組で見た記憶があります。そして2004年には変わった面白いものとして「イグ・ノーベル賞」をもらったのでした。この眼には見えているのに脳に達していないということは、さまざまな所で、出てきているのです。2001年にハワイ沖で、アメリカの原子力潜水艦が、日本の漁業練習船を「潜望鏡では見えていたはず」なのに船長は見落としてしまった。船長は潜望鏡をのぞきながら『その時私は、ほかの船がいることを予想も期待もしていなかったと」そして衝突させてしまったのです。

 このような「人間が払える注意は有限だ」という、人間の脳の働きを知っているか、知らないかで大きな違いが出ます。そしてこの本では今まで脳科学で通説とされてきたものがみな間違っているということを具体的な追試験で明らかにしてきたのです。具体的には

サブリミカル効果などというものは存在しない

(映画の中にコカコーラの映像を人に意識できない程度の短い間入れると、それが刺激となり、無意識のうちにコーラが買いたくなるという話)

2、いくらモーツアルトを聞いてもあなたの頭はよくならない 

1993年に科学雑誌『ネイチャー』にモーツァルト効果があると発表された。その後科学的な再試験の結果、効果が無いことが明らかになった。しかし世の中には依然としていわば迷信として人々の間に広がっています。そして「モーツァルトを子供に聞かせると良いと」いう風に人々におもわれています。その挙句は、乳牛にモーツァルトを聞かせるとよく乳が出るとか、野菜に聞かせるとかとんでもないところまでエスカレートしています。

3、レイプ被害者はなぜ別人を監獄送りにしたのか?

よーくレイプ犯人を観察していたから、この人に絶対に間違いないといって、まったくの別人を、この人だと強く主張して、その結果陪審員はある関係のない人を有罪として、牢獄へ送ったが、DNA検査では全くの別人であった。しかし本人はこの人に違いないと確信していた。

4、脳トレを続けても、ボケは防止できない 

たとえば任天堂の脳トレソフト『ブレイン・エイジ』は科学的実験の結果、効果が無いことが分かった。他にも様々な脳トレソフトが売り出されています。

5、「えひめ丸」を沈没させた潜水艦の艦長

艦長は目では船が見えていたはずなのに、脳が船を見ていなかった。(そんなものがあるはずがないと思いこみをしていた)

人間の脳では一つのことに集中すると、必然的にほかのものへの注意がおろそかになる。車の運転中に携帯電話をしていれば、注意が散漫となり事故が起こりやすい。ハンズフリーでも同じであると。でも多くの人はそうは思わない。                   ゴリラの実験のように人は自分が予期したものを見る。逆に予期しないものは「見えない」また同じように自分がこうだと思い込んだ予期したものを記憶する傾向がある。

 ひとは自分は見落としなど「するわけがない」という誤った思い込みがある。しかし実際にはごく簡単な変化も見落としてしまう。

 最後に結論として、自分の回りに見えないゴリラを見つけようと心掛ければ、より優れた判断やよりよい暮らしが可能になるかも知れない。

~記憶の錯覚を理解すれば、自分も含めて人の記憶を頭から信じ込むことが減り、重要な事柄については自分の記憶を確かめるようになるだろう。

自分の思考や行動についても、自分の直感や本能的な勘が正しいかどうかを見直してみよう。結論に飛びつく前に肩の力を抜いて、思い違いが無いか、「ゴリラがいないか」もう一度ゆっくり考えようといっています。

 これは私の提唱する実用的人間学的な考え方に共通するところがあります。それはものごとを総合的に、科学的な、批判的な目で見ようという態度と共通しています。多くの人は自分のみたこと考えたこと、思っていることは絶対に正しいと思い込んでいます。そのお互いの思い込みの違いが大きな対立にもなります。ところが人間は簡単にビデオに表れたゴリラを見落としてしまうものであり、色いろな記憶の間違いをおかすものだということをしっていれば、物の考え方でも人間関係でも随分と違ったものになるでしょう。

 解説では 成毛 眞氏が「脳トレ・ブームにだまされるな!」として以下のように書いています

 今盛んにはやっている「脳トレ」の本などで、脳内の血流が増えたというような実験結果があっても、血流量が増えたから認知能力が向上したとは必ずしも言えない

 ほんものの脳年齢を維持するには、毎週三日に一回、有酸素運動として45分間のウオーキングをするだけで、前頭葉の脊髄灰白質の減少が止まるという。知的能力を保つには認知能力を鍛えることとは関係なく体を鍛えたほうがよいというのである。

 ここではほんの少ししか紹介をしていませんが。人間は自分が思っている以上にいろいろな錯覚や間違いを起こすものだということです。ところが本人は自分は絶対に錯覚などの間違いをおこすはずがないと考えて、さらに大きなミスを起こしてしまうのです。興味をお持ちの方は、直接本をお読みになるといいと思います。価格は1571円プラス税です。

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