「人間にとって顔とは」(NO3) 美人と魅力について
女性の顔がどう描かれてきたかをしめしています。美人の基準も時代により変わりました。
『人はなぜ心を病むか』という本において、吉田脩二氏は、心を閉ざし22歳で死ぬと思いこみ、まったく表情がなかった女性が、病気の回復とともに、「ほんまにあんたかい!」とびっくりするほど生き生きと美しく魅力的に変わったと述べています。健康であればそれぞれに美しく、ブスなんかいない、といっています。また大島 清氏は『人は恋するとなぜ美しくなるか』において、人は恋するとホルモン分泌は活発になり、肌もきれいになり、目が輝き、生き生きとした表情になる。そしてまた、男女を問わず、相手を美しくするのはパートナーしだいであるといっています。
恋愛にかぎらず、相手の表情や魅力というのは、相対する人の感情によって大きく変化するものです。相手にたいして好ましい感情をもって相対しているときは、相手もそうなってくるものであり、魅力的にも感じられることが多いのです。正面を向いた写真によるテストだけでは表情によっての微妙な変化や、人がそれぞれの状況次第で顔が大きく変化するという点を見のがしてしまうのです。
美人の基準は、民族により、時代により、大きく変化してきます。日本においても奈良平安時代の美人のしもぶくれの顔は、オカメ顔として、今美人とされないし、戦後のわずかな間でさえ大きく変化してきました。中国では唐の時代の世界の三大美人とといわれる楊貴妃は極めて肥満していて、現在の美人の基準には到底あてはまりません。しかし心理テストではこのような変化をほとんど無視せざるをえないのです。しかし、だいたいにおいて、自分たちに似たものを美しいとみる傾向があり、例のコンピューター合成によって作り出された平均顔に少しプラスアルファーされたもの(目を少し大きくするとか)をもっとも美しく、魅力的と感じるようです。
さて、化粧品会社、美容整形手術医、ダイエット食品メーカーなどは、コマーシャルによって、「これが美人だ」と宣伝し、「美は金で買える」と思わせています。エステ会社は広告で、すでにちょうどよい足の形をさらに細くさせ、私が見るかぎりではちっとも魅力的ではない状態が良いと思わせています。さまざまなかたちでこれが美人であるというモデルを次々に出すことで、多くの一般女性は自分の容姿に自信が持てなくなっているという報告があります。そして引っ込み思案となり魅力を減じることがあります。困ったものです。現在の日本では、メタボ症候群についてあれこれ厳しく、太りすぎと非難はしても、もっとも死亡率が高い「やせ」については問題にしません。結果として日本人女性は、男性に比べ、やせがかなり多いということになります。
そして本書によれば、聖書からコーラン、トーマス・マンにいたるまで、容貌にハンディキャップのある人たちを、異質な人と疎外する傾向があるといっています。テレビや映画でも善玉は美人かハンサムで、悪人は醜いと相場が決まっています。今、さまざまな社会情勢の中で、事故などにより、容貌が損なわれるケースも増加してきています。その中で、ハンディのある「状態」を肯定する考えかたにもとづいて行くように、メディアを建設的によく批判していく必要があると述べられています。また、コンプレックスをもつがゆえに暗くなり、対人関係が悪くなることによって、いっそうイメージが悪くなる悪循環を断ち切るためのリハビリが必要があるといっていますが、まったく同感です。
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