パウル・クレー展に行ってきました 東京国立近代美術館
上の絵は「獣たちが出会う」で、下の絵は今回は展示がなかった「死と浄火」です
私がとっている日経新聞が主催する「パウル・クレー展」を見てきました。かねてから日経新聞にはカラーで2ページごとに、クレーの絵が紹介されていて、私はクレー展に行くのを待ちかねていました。初めは京都で開催し、5月31日より竹橋の東京国立近代美術館で開催されました。私は初日はさけ、6月1日に行きました。10時オープンの前に、40人ほどの大人と、小学校低学年の子供たち30人ほどが待っていました。
パウル・クレーは私が最も好きな画家で、学生時代にクレー展を見たつもりでしたが、カタログが見当たりません。学生時代には私も油絵などをかいていて、またクレーをまねした絵をいろいろかいていました。大学のコメント集の表紙になったり、第二サタケビルの地下のドライエリアに大きな絵を描いたりもしました。
クレーの本はいろいろ買ってきました。1957年の{Klee}英語版(図版393)、1962年の「パウル・クレー」フェリックス・クレー(みすず書房)、1971年刊の「クレー」現代世界美術全集13(集英社)、そして1993年に開催されたクレー展の資料集、そして2011年今回かった「パウル・クレー」(終わらないアトリエ)などです。
特に東京Bunkamura- ザ、ミュージアムで開催された「クレー展」の資料集「パウル・クレーの芸術」はA4くらいの大きな版で367ページ、図版が268入っている立派な書物です。このクレー展はとても充実した内容でしたので、実は今回大いに期待していったクレー展が少し見劣りしてしまいました。
今回国立近代美術館で開催された、クレー展は特徴があります。すなわち、クレーは自分のアトリエをとても大切にしていて、そこにきちんと自分の絵を置いていること。それぞれのアトリエにおかれていた絵を、ナンバーをうって、この絵はここにおかれていたのですという表示をします。
またもう一つは、クレーの絵の制作過程を示すもので、まず、線描画をかいて残し、改めて色彩をつけたものと対比するというやり方。最初にかいた絵をハサミで切り離し、2つ3つに分解するという方法。絵の下地に別の絵や文をかいてそこに新しい絵を描いたり、裏にもかいたりするものです。ともかくクレーはいろいろな方法を試しています。
今回のクレー展では小さい素描画が大変多く、節電で暗くしていることもあって、非常に暗くさえないような感じがしました。それは前の文化村の大きなカラフルな絵をたくさん見たことと対比してしまったからでしょう。今回のクレー展では179点が展示され、そのほかに切り離されて一枚になっているものがありました。三分の一ぐらいが文化村のクレー展にもあったものでした。文化村ではクレーの最晩年の1940年に描かれた「死と浄火」が印象に残りました。今回のクレー展では1938年にかかれた「獣たちが出会う」の絵の印刷の複製を買ってきました。これは人間学研究所のガラス戸にはりつけました。
パウル・クレーは1879年に、スイスで生まれました。ミュンヘンで美術学校で学び、制作を始めます。1906年結婚し息子が生まれます。それがフェリックス・クレーです。そしてカンディンスキーやマルクなどと前衛芸術の団体「青騎士」を作ります。1921年には画期的な学校であるドイツのワイマール国「バウハウス」の教授になります。さまざまな作品が生み出されます。しかし1933年にヒトラーが政権をとると、クレーらの絵は退廃的であると攻撃されます。そしてスイスに戻ります。1939年には1年で1253点の絵を描きます。1940年6月病気になり、60歳で死去しました。
クレーの絵はとても繊細なものと大胆なものとがあります。特に初期にかかれた線描画はよくこんな細い線でかけるなという細いものです。左利きのクレーは自画像もたくさん書いていますがいかにも神経質そうです。スイスやドイツの気候風土も影響しているのかもしれません。同じ抽象画でもメキシコのホアン・ミロの大胆な原色を使った絵と対照的です。
絵を見に来た、ふたりづれの中年女性が、このぐらいなら、私たちでもかけそうねといっていました。いろいろ試して、膨大な絵を残してきていますから。すべてが傑作というわけではありません。
いずれにしても今回の展示会を少し前の展示会にくらべ、けなしましたが、絵の素晴らしさは変わりなく皆さんもぜひ一度はご覧になることをお勧めします。
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