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2011年6月25日 (土)

「人間になる」、ための家族の役割 河合雅雄氏家族をもったサルを”ヒト”とよぼう

今、霊長類からいかにして人類への道に進んで行ったかについてはかなりわかってきています。東アフリカの大地溝帯は現在も分離しつつありますが、熱帯雨林だったものが、山が生じたために、雨が降るところと乾燥地帯いわゆるサバンナに分離しました。霊長類は森林の樹上で生活しやすいように進化してきました。ところがサバンナの発生で、そのまま森林にとどまるものと、サバンナに進出したものとが、ほかの霊長類と、人類の祖先が分かれた元になりました。

 最初の猿人の骨は約400万年前のアウストラロピテクス・アファレンシス(猿人)です。特徴的なことは脳容積はそれほど外の類人猿とかわらないのですが、直立2足歩行をしていたと思われる骨が特徴です。他の類人猿ではナックル・ウオークというこぶしを地面につけて歩くのですが、さいしょの人類は完全な直立二足歩行でした。そして直立することにより、手があくことになりそこで、道具を作ったということが大きく他の類人猿との差が生じました。

 京都大学のサル学は今西錦司氏が大変ユニークな研究法によって発展し、様々なことが明らかになってきました。今西錦司氏は以前から、人類の誕生に関して、人類の誕生には、男女老若を含む30人くらいのグループ(バンド)を作り、危険な肉食獣から身を守ったり、集団で狩りをしたといいます。バンドの中では家族(オイキア)が単位となっていたといっています。

 河合雅雄氏は1924年生まれで、京都大学で、霊長学を学び霊長類等の様々な観察をした結果を『人間の由来』(上下、1992年刊、小学館)にまとめました。河合雅雄氏は著名なカウンセラーである河合隼雄氏のお兄さんです。

 河合雅雄氏はその本の中で、様々なサルの社会を比較研究しています。霊長類はもとより、サバンナで生活する、マントヒヒやゲラダヒヒの社会も比較研究しています。またゴリラや、オランウータン、チンパンジー、そして最も人類に近いピグミー・チンパンジーの社会を比較研究しています。

 ピグミー・チンパンジーは普通のチンパンジーよりも一回り身体が小さく、ネオテニー的(幼生成熟)で額が高く、眼窩上隆起がなくあごが突出してません。雄と雌の差も少なく、二本足で歩くのが外のチンパンジーよりも上手です。ピグミー・チンパンジーは雌の生殖器が発達し、様々なストレスは雄雌問わず性行動で解消するという特徴があります。雄は雌や子どもに対してたいへんやさしいという特徴もあります。

 人類の祖先が、サバンナの中に進出するということは大変大きな危険がありました。たくさんの猛獣に狙われるからです。人類の祖先は、家族(オイキア)という社会単位を作って、その家族がいくつか集まって、集団を作り、狩猟をし、肉食獣から身を守ったといわれます。雄(男)はまとまって狩猟に出かけ、雌(女)は家の周辺で採集をするという分業となります。

 狩猟をするためと肉食獣から身を守るためにに、武器(道具)を作りました。また狩猟をうまく行うために合図なども必要になってきます。その中でしだいに言語が発達して行きます。狩猟をすることにより、肉を手に入れることがおおくなり、食物の変化は大脳の発達を促しました。

 男は手に入れた肉をその場ですべて食べてしまうのではなく、それをもちかえり、仲間や家族に分配します。外の家族との採集したものとの交換も発生してきます。ゴリラなどでも雄が子供たちと遊んであげるなどという行動が見られます。ピグミーチンパジーと同じように性を介して男女のつながりが深くなります。人間には発情期はなくなり、いつでも性交可能となりました。男女は対等、平等なものとなりました。家族への愛情が家族の結束も生まれます。また家族の中ではインセストタブーの意識も生まれ、ほかの家族との結婚によって、他の家族との結束も深まります。河合雅雄氏は家族という社会単位を生み出しことによって、500万年くらい前に類人猿からヒト化(ホミニゼーション)への道が開かれたと言うことがこの『人間の由来』の結論として提起しています。

 原初の人間社会は、アフリカの採集民族であるサン族やピグミー族の生活を見るとだいたい同じようであると推測できるといっています。

 付録としてついている小冊子に森 毅氏との対談がのせられています。河合雅雄しによれば、河合氏は次のようにいっています。「今ぼくがが考えている家族の概念から外れた人間が出かけている。人類が家族の概念から外れた社会を作るようになれば、もう別の社会になったと考えたほうがいいと、いう考え方です。極端にいったら家族は全部なくなってしまうとか、そうなったらそれは人間ではなくてほかの生物です。ホモ・サピエンスではなくホモなんとかになるんでしょうね」

 同じく京都大学の山極寿一氏は『家族の起源 父性の誕生』(1994年、東大出版会)で、動物の父性は雌が特定の雄を父親と認知するところから始まるといっています。そして人間の場合は、配偶者間の認知から、集団全体の認知として、集団の規則の中で徹底されるといっています。父と息子の世代が一緒になってインセストの回避と外婚制の導入によって人間独自の社会へと高めて行ったといっています。

 現在の日本の社会では、年収300万の壁があり、それ以下の男性の結婚率は大幅に下がるそうです。小泉内閣以後の、正規社員のパート化により、年収が減少し、結婚をする人の数が減少し、生まれる子供もどんどん減少しています。フランスなどの手厚い政策がある国では人口は増加し始めています。政府の政策により、人間が人間となった基本である家族の減少、また様々な家族の崩壊現象は、日本の社会に暗雲をもたらしています。このような政治は変えなければいけないのではないでしょうか。

追記 :2011年12月に、「NHKBSプレミアム」放送で放送された、「人間進化はるかな旅 人間らしさって何?」もこのような基本的な考えを元にして放送されました。

 

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