西洋人相術について 英文の本を訳してみました (1)
本はだいぶ古くなりました..買って間もなくこの人相術の部分だけ翻訳してみましたが発表するところがなくそのままにしていました。
日本においては、手相術は占星術にもとづく西洋手相術を元にしていて、人相術は東洋人相術を元にしていると、私のブログに書きました。西洋人相術は、それをそのまま日本人に当てはめるといろいろな不都合が生じるからです。日本人では目と眉の間(田宅)がうんとあいていたほうが、富貴な相とされますが、西洋ではまの抜けた顔になってしまいます。
それから、西洋では髪の毛の色と、眼の色というのが性格判断に大きく影響するのですが、日本では共に黒か、せいぜいが黒褐色だけになります。そこで、では西洋の人相術ではどのように人相を見ているのかを紹介してみようと思います。
"The Compllete Book of Fortune"という本で、ロンドンのBracken Booksというところで、初め1936年に出版されたもので、私の購入した本は1990年版のものです。640ページの大型の本で、そこには、様々な占いについてかかれています。手相術、占星術、骨相学、筆跡学等々、全分野について書かれています。人相術については、295ページから318ページまで23ページ分書かれています。
人相術についての表題は"The Art of Physiognomy"で、人相術とか観相術とか言われるものです。前半は人相術(フィジオノミー)についての説明が書かれています。「人相術とは、人の顔面と身体の形から性格を読み取る技術(art)であり、科学(science)であると定義づけています。また、一方ではある人物の人相から彼の未来を予測する占いもしくは解釈法ともいえる。頭蓋骨の形で、読み取る技術である骨相学や手相術は人相術の1分野であり、人相術の助けとなるものであります」
以後人相術の歴史について書かれています。人相術は古代に起源をもち、特にギリシャにおいては、より高い地位につくに値する性格や適性をもっているかどうかを評価する際に大いに貢献しました。その基本はどのような動物に似ているかということです。たとえばあるものは獅子のように気高いとか、あるものはブタのように下品であるとかです。
16世紀のナポリ人であるG・デッラポルタは動物との比較を推し進めた本を書きました。(日本では『自然魔術 人体編』として1996年に青土社で翻訳されています)その後1世紀ほどあとで、スイスの牧師である、ヨハン・カスパー・ラーバーターは、人相学における大きな貢献をしました。彼は、優れた観察力と数多くのイラストを書いて友人の一人であるゲーテが多いに称賛した人物です。
オランダの解剖学者であるピーター・カンペールは1781年に類人猿やほかの動物と人間の顔の比較を行いました。スコットランド人のチャールズ・ベル卿は1806年に感情表現とそれに伴う筋肉の動きについて研究し、生理学の分野から人相学へ貢献しました。パリの医者である、ギローム・デュシェンヌは1862年に、顔の神経に電流を流し、喜びや、苦痛などの表情を自由に起こす実験を行いました。有名なチャールズ・ダーウインは1872年に発表した『人と動物の感情表現』(1948年邦訳 改造社)に多くのデュシェンヌの図版を引用しました。この本は、『人間の由来』とともに、人間と外の動物との顔と表情の共通性をもって、ヒトが進化した存在であるとしましたものです。イタリアの人類学者である、パオロ・マンテガッツアは、1890年に、英語版の『人相学と感情』を書いて、ダーウインの見解をより深く推し進めました。
以上が本にかいてあることの導入部の要旨です。続いて章を改めて、「容貌における性格表現」について書いています。
顔から彼の性格を読み取れるということは、わかりきっていることのようにおもわれます。しかし、落ち着いて平静で、かつ気品があるように見える顔は実は空っぽな心であるかもしれないし、容姿端麗で、落ち着いた感じの美人が実は、輝いたひらめきやウイットに富んだ知性に恵まれないことを知っている。 性格を判断するにあたっての問題点は、どの人も、自分がどの程度まで、自分の性格を偽っているかしばしば、ときには全く分からなくなってしまっているということです。文明社会では、ほとんどゆりかごの時代からも、彼がしたいことをしたり、人びとが、彼について受け入れられないような感情を表すということを、抑圧し、押さえつけてきたからです。
若い時に受けた教育により、自制し自分の感情をいおおい隠すことを学んできました。しかし強力な感情のストレスや、酒に酔ったり、麻薬などによって、おおい隠された感情があらわれ、一気に彼の心の中の深層や本当の姿を知ることができるものです。~
だから我々は、それらの人々の表面に現れたものだけで判断してはいけない。しかし、それらの隠された衝動があるにも関わらず、道徳的で、社会的な生活をしている人は、そのかくされた衝動と戦うことによって人から称賛を受けるのである。
今明らかなことは、ある人の人相を判断するときに、その顔だけですべてを読み取ろうとしないことである。我々は、見ているものが本ものであるかどうか、偽りのものかを見極めなければならない。そして彼の裏に隠された要素についても知らなければならない。
以上一部を訳しました。後半はいくつかに分けて翻訳します。
ある人の顔において現れた特徴があるにしても、しばしば誤ってしまうことがありうるということを良く知っておかねばならない。
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