経営人間学(16)『下町ロケット』を読みました。続編ともにテレビドラマに
『下町ロケット』あらすじ
『下町ロケット』という第145回直木賞を受賞した小説を読みました。「週刊ポスト」に連載されていたものです。著者は池井戸潤氏(2010年11月出版、小学館)で、三菱銀行勤務のあと、小説を書き始めすでに賞も受けていた人です。この小説は8月から連続ドラマになるそうです。読んでいない方のためにあらすじを書きます。
主人公は佃 航平といい、宇宙開発機構の研究員でしたが、打ち上げたロケットが失敗し、機構をやめて、父親が経営していた大田区の精密機械製造業に入ります。資本金3000万円の中小企業ですが主人公が社長になってから売り上げを3倍に増やし100億円弱、社員数は200人といった中小企業です。
話の始まりは、京浜マシナリーという日本を代表する1部上場企業の機械メーカーが、突然下請けの佃製作所に、その製品を自社生産するので来月でやめてほしいといってきます。売り上げの1割の10億円分が突然なくなるのに、そのための機械や社員はそのまま残ってしまいます。代わりの注文もありません。大企業は平気でこういうことをやります。そしてたちまち資金繰りに困ります。3億円ほど不足するというのです。
そこでメイン銀行の白水銀行に、その銀行から出向してきて経理部長になっている殿村を通して交渉させます。ところが、銀行は柳井という課長代理が融資は無理だと断ります。銀行はお金が要らないときに借りないかといい、お金が必要な時には、貸さないものです。わたしも親の仕事を継いで、中小企業の経営者を43年間やってきましたので、そういう辛い思いを何回もしてきました。資金繰りは、ベンチャー企業により1億5千万は調達できますが、不足しています。
それに加えて、小型エンジン製造のライバル会社のナカシマ工業(一部上場)が、特許権の侵害だと損害賠償を求めてきます。その会社はいつもそういう方法で、小さなライバル会社をつぶし、あるいはのっとってきたのです。それは特許に詳しい神谷弁護士の力で、逆に特許侵害で訴え、損害賠償を逆に勝ち取ることになります。ナカシマ工業の担当者は新聞記者に、とくとくとこのようにのっとってきたということを話し、それが記事になり信用は失墜します。
宇宙開発に取り組んでいる帝国グループの一つ帝国重工(三菱重工らしい)は人工衛星を上げるロケット開発に取り組んでいますが、その水素エンジンに必要なバルブシステムの特許を、佃製作所という中小企業が先に持っていることが分かります。はじめ、吹けば飛ぶような中小企業だからと特許の買い取りを持ちかけます。それを断られると、今度は年5億円で特許を借りうけようとします。佃製作所の社員からすれば、今までかなり開発費をつぎ込んだ、バルブシステムの特許を売るなり貸すなりして、収入が増え、自分たちの給与が上がることを望みます。
しかし、佃社長はそれを、製品の納入にしたいといいます。帝国重工の宇宙開発グループ主任の富山は納入のための厳しいテストをして落そうとします。その横柄な態度に、佃製作所の社員もおこります。そして、経理部長の殿村もそういう態度なら、帝国重工の申し出を断ろうといいます。「そんな会社なら部品供給も無理、ましてウチの大事な特許を預けることなどできません」と。そして「会社が小さいからといって、舐めてんじゃねえ」という言葉が発せられます。これは日ごろ大企業からいじめられている中小企業がいってみたい言葉です。佃製作所には経理部長のほかに営業第一部長の津村、第二部長の唐木田、そして技術開発部長の山崎などがいて活躍します。しかし、顔が四角く髪を真ん中から分けていて殿様ばったみたいな顔だという殿村部長が、銀行の出向者という作者の立ち場からの思い入れがあったように思えます。
―佃品質、佃プライド
連続ドラマになり大評判
◎2015年12月に連続10回の連続ドラマになりました。前半はロケって編。後半は2015年10月に出版された本『下町ロケット2 ガウディ計画』です。TBS日曜劇場が毎週日曜日21時から放送され、20%越えもある視聴率で、最後の20日の最終回は何パーセントになるかと期待されています。
12月20日には、TBSで超緊急特別ドラマ企画と銘打って、今までのドラマの感動シーンを夕方7時から2時間番組を組みます。そのあとに、約1時間20分の番組本番が続きます。最終回は、「裏切者は許さない日本プライドを持て!日本ロケットの夢・人工弁の夢を打ち上げろ!!」です。
新聞のテレビ番組欄に2つの番組が黄色く印刷され、下にも「よる9時ついに最終回25分拡大/よる7時超緊急特別ドラマ企画」の宣伝が入りました。人気の高さとテレビ局の力の入れようがよくわかります。
その2つの番組の前に、2時から5時までの3時間「今夜激動のフィナーレ『下町のロケット』完結これで準備は完璧SPとして、「感動のダイジェスト」、ガウディ計画編のすべてがここにある!!100人に聞いた各シーンBEST10,最終回の見どころは?
もう一度一部を見直してしまいました。全部で-6時間20分です
最終回はどのくらいの視聴率になるのでしょうか。
私=筆者の場合
私の会社も会社存続のために、いろいろとがまんをし、元請け会社の横暴に何度も苦しめられた経験がありますので。うちの場合は佃製作所よりもさらに小さい社員数80人ほどの会社で、無理やり合併されてしまいましたが。それでも他の会社にないいろいろな工夫もし、社員も結束した、いい会社にすることができました。
帝国重工の中でも、実際に工場を見た財前部長がその品質の高さに驚きます。また浅木という若手社員も佃製作所に好意を持ちます。実際、大田区の町工場のようなところが手作業で、世界的なレベルの精密機械部品を作っているとテレビでもみています。そういう企業を大事にしないで大企業の思うがまま中小企業をにつぶす政策を政府がとってきています。ともかく危機一髪で製品検査も通り、ついにバルブは正規採用となります。皆は万歳を叫びあいます。「佃品質を帝国重工の連中に知らしめてやりました」「佃品質と我々佃プライドにー万歳!」
そしてついに、佃製作所のバルブを積んだロケット「モノトーン」の成功を祝い、社内は歓喜が爆発し、だれかれとなく抱き合う。社長もこらえていた涙があふれ出し、「ありがとよ、みんな」と何度も繰り返していた。
という内容です。おもしろそうだと思ったら、ぜひ直接お読みください。中小企業にいる人は少し胸のつかえが取れます。
追記
大企業の中でも、人により、中小企業の経営者や従業員に対しての態度にはいろいろな差があります。この小説でも、中小企業を頭から馬鹿にし、尊大な態度をとる、銀行員や帝国重工の富山主任のような人物と、中小企業といえど、しっかりした仕事をしていると、敬意をはらう、同じ帝国重工の財前部長や浅木という若手技術者です。
私が会社の社長でいた時にも、私の会社内に組合があり、その組合は”赤い”社長の私が作らせたと勝手におもって、なんとかつぶそうとしてくる元請け会社社員と、いろいろな経営努力をして、同業他社より、はるかにいい営業実績をあげている私と私の会社を応援してくれる元請け社員がいました。このようなことははどこでもあることでしょう。私は私の会社をつぶさせないために何よりも売り上げ目標に対して達成率を良くしようと努力しました。そのため、営業成績の順位表を毎日うち出せるのですが、当社はいつも最上位でした。当社は新築でも可能な強力な建築リホーム部門を持っており、社員数が、80人と担当エリア(担当需要家数8万件)に比べて多かったのです。ちなみにお隣の店は同じ需要家件数で社員数は50人ほどでした。当社はに総売り上げ約14億円のうち、建築部門は4億円位ありました。三越不動産、JRビルテック、東急リロケーション、エイブルなど、いいお客さんがありました、それで合併させられる5年前ほどは売上達成率で、全社100店ほどの中でいつも1位を争ったのです。しかし、最終日のデータでこれで、全店で1番になったと思ったら、最終的に小さな店が1番に替わっていたり、従来の評価方法なら1番なのに、その時だけ評価方法を変えてあって2番にとか、どうも、全社1番になって表彰されるのを防いでいるように感じたこともありました。
2013年8月31日追記
このブログも2年ほどたっても、多く読んでいただいています。最近のアクセスの多さは現在放送中で大ヒットしている『半沢直樹』のせいだとも思っております。半沢直樹についてのブログも書きましたので興味がありましたら、ご覧ください。
「半沢直樹の大ヒットと同時放送韓国ドラマ『馬医』の共通性」
http://koiti-ninngen.cocolog-nifty.com/koitiblog/2013/08/post-4fob.html
2015年10月18日 追記
「下町のロケット、連続ドラマ始まる」
「下町のロケット」が2015年10月18日からTBS日曜劇場で、テレビドラマになります。新聞でも大きく広告が出ています。主演は阿部 寛さんで、娘役に土屋太鳳です。10月から朝日新聞で「下町のロケット2」を連載開始だそうです。1と2を合わせて全10回の連続テレビドラマになるそうです。午後9時からで最初は2時間番組です。他に吉川晃司、倍賞美津子、杉良太郎、立川談春、春風亭昇太など多彩なメンバーで楽しみにして見てみます。
2015年11月16日(月) 追記
「下町のロケットが平均視聴率20,2%」
昨日(11月15日)で前半の「下町のロケット」の放送が第5話で終了しました。視聴率はだんだん上がって20,2%だったそうです。瞬間的には26%になったそうです。来週からは後半の話「ガウディ計画」が始まります。
このドラマはすべて見ました。阿部 寛さんがさすが、うまいなーと感心しました。又帝国重工の部長役となった吉川晃司の財前部長役は貫録があり、正しいものは正しいと毅然とした態度を貫き通しなかなかよかったです。
「ガウディ計画」は今度は、人工心臓にまつわる話です。小泉孝太郎、世良公則、2人は憎まれ役です。今田耕司は地方大学の教授役です、などが出てくるそうです。本はもう売りだされていますが、来週のお出かけの時に買ってこようと思っています。
ガウディは心臓人工弁の名前です。
「下町のロケット2 ガウディ計画」ロケットから人体へ
2015年11月10日発売 1500円+税 小学館
発売されてまもなく買ってきて、読んだのですが、毎週日曜日の9時に放送されるうちにもう、ガウディ計画の話になってしまいました。
佃製作所 大田区の上池台にある社員数200人ほどの会社
実際の会社の看板だけ変えています
社長 佃 航平 (阿部 寛)
経理部長 殿村直弘(立川談春)
技術開発部長 山崎光彦(安田 謙)
中里 淳、(データをもってサヤマ製作所に)
立花洋介、加納アキ
営業第一部長 津野薫
営業第2部長 唐木田篤
江原春樹
帝国重工 財閥系大企業 国産ロケットの製作、イメージ-三菱重工
社長 藤間秀樹〈杉良太郎)
宇宙航空部本部長 水原重治
宇宙航空開発G部長 財前道雄(吉川晃司)
宇宙航空部調達部長 石坂宗典 財前のライバル、サヤマに肩入れ
株式会社サヤマ製作所 埼玉県狭山市の精密機器メーカー
データ偽装疑惑で逮捕
社長 椎名直之 NASA出身 (小泉孝太郎)
開発部マネージャー 月島尚人
横田 内部告発
(中里) 佃製作所から引き抜かれる
日本クライン 大手医療機器メーカー
人工心臓開発 佃からサヤマへ発注がえ
製造部長 久坂寛之(平岳大)
専門員 藤堂 保
アジア医科大学 心臓外科ではトップクラスとされる
心臓血管外科部長 貴船恒広 (世良公則)
主任研究員 真野賢作
医師 巻田
北陸医科大学 福井県の私立大学
医師 一村隼人(今田耕司)元貴船の部下
株式会社サクラダ 編み物の会社 親会社桜田経編
社長 桜田 章
PMDA 衣料品や医療機器の審査機関
露骨に中小企業を馬鹿にする滝川
審査役 山野辺 敏
滝川信二 サヤマ製作所に肩入れ
弁護士
佃製作所を弁護
神谷修一(恵 俊彰)
佃家家族 (小説には出てこない)
佃母 (倍賞美智子)
佃娘 (土屋太鳳)
佃元妻
白水銀行
根本節夫(東国原英生)
(春風亭昇太)
週間ポルト
咲間倫子( フリーのジャーナリスト
佃社長に協力、情報提供)
・人工心臓 コアハート
・人工弁 ガウディ
2015年12月13日放送の1場面 真ん中が佃社長
左手前が、一村隼人教授
小泉孝太郎が憎まれ役で、いい味を出しています。
佃製作所は帝国重工からの支援と取引を停止されます。
貴船の言葉
「患者のためといいつつ、私が最優先してきたのは,いつの間にか自分のことばかりだったな、久坂君医者は医者だ。患者と向き合い患者と寄り添ってこそ医者だ。地位とか利益も関係なくなって見て思い出したよ。p360
貴船の言葉はそのまま自分にも当てはまる。(久坂)
2015年12月20日、今日でドラマは終了します。
人気があるのは断然1位の佃航平です。財前部長と殿村部長もベストスリーです。
憎まれ役1位は椎名社長です。
週刊誌の抜き刷り
帝国重工の藤間社長
◎最終の視聴率がどのくらいになったのでしょうか
最終回、10話の平均視聴率は22,3%だったそうです。
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