稲盛和夫氏の節税に見る日本とアメリカの大金持ちの違い 毎日新聞追加版
この記事は、三日前ほど前の新聞赤旗にのっていた記事です。少し読みにくいかもしれませんが読んでいただければわかると思います。いままで、証券優遇税制で、20%の税率であったものを、8年前の2003年に10%に下げていました。2011年の6月に、証券優遇税制を2年間延長する法律を成立させました。その際、配当に関して証券優遇財政が適用されない「大口株主」の定義を、「発行株式数の5%以上」から、「3%以上」に変更しました。財務省は、この改正によって、大株主のうち約1300人が増税になり、所得税で68億円程度の増収になると見込んでいました。3月決算企業の報告書が11月に出そろい、10位までの大株主の一覧表が掲載されます。その結果、1年の間に、保有株式を減らし、3%未満にして証券優遇制度を引き続き受けられるようにした企業が、少なくとも250人いることが分かりました。
その節税額は33億円にもなります。財務省の増収見込みの4割が消え、まだ変更できるのでさらに増える可能性があります。
一番多いのが京セラの名誉会長の稲盛和夫氏で昨年は、配当を8億8500万の配当を受けたはずです。それが優遇税制で、一割の8850万円の税金で済みました。今年から「大口株主」となるため、そのままなら総合課税で、2億9千万円の増税になるはずでした。ところが株を売って3%以下にしたのです。稲森氏は証券優遇税制の恩恵で、8年半で6億円も減税されていました。稲森氏は比率を下げるため京セラの株を売り、100億近くの収入もあるはずです。稲盛氏は民主党政権のもとで、日本航空の会長に就任し、労働者を大量に解雇した人物として有名です。(以上「無慈悲に首切り、自分は節税」という垣内 亮氏の赤旗にのった話の要旨です)
不景気という理由で、賃金を下げ、正社員を減らし、一方大企業では大きな利益を上げ社内留保を増やし続けてきました。大量の株をもった大金持ちは証券優遇制度で、わずかな税金しか払わず、所得格差はどんどん開いて行きました。こういう不平等に目をつむり、一般庶民には所得税増税と、消費税を増税しようとしています。一方大企業には法人税を下げ、証券優遇税制も、ほんの少しばかり変えようとしてもほとんど抜け道で、意味のないものになってしまいました。
稲盛和夫氏は、京セラ、KDDIの創業者で、民主党の支持者として知られ、特に前原誠司氏の後援者だそうです。最近は民主党に落胆しているそうですが、民主党から依頼されて2010年日本航空の会長となっています。いろいろな企業経営の傍ら、稲森財団を作ったり、若手経営者向けの「盛和塾」を作ったり、臨済宗で得度を受けたり、様々な本を書いたりと、松下幸之助氏と同じような影響力を持っています。
『稲盛和夫の哲学 人は何のために生きるのか』という本がかなり前に出ていて、大変な哲学だと大いにもち上げていたのが印象に残っています。そして「日本躾(しつけ)の会」の理事(元副会長?)です。
でもちゃっかり、持ち株比率を下げて節税しているところをみると、違法ではないにしても、アメリカの一部富裕層が「私たちの税金を上げて」と自分たちに増税するように働きかけているのとずいぶん違うなーと感じた次第です。
これはブッシュ前大統領時代に成立した富裕層減税の撤廃を求めてのものです。アメリカの資産家や企業家200人が参加しています。
日本でも増税が必要なら、まず第一に証券優遇税制を無条件に20%に戻すべきです。国により30%の国もあります。それでも高額所得者にとっては低い税率だといえます。本来総合課税にするのが正しい姿です。
いったい日本人で、大金持ちがこのような優遇を受けているということをどのくらい知っているのでしょうか。
追記 2011年11月30日 毎日新聞11月30日朝刊記事
「大株主、配当課税『回避』相次ぐ」 4面 13行7段 目立たないところですが
「優遇処置廃止受け 保有比率引き下げ」と報じています。11月29日参院財政金融委員会で、共産党の大門実紀史氏が節税額が33,6億円に上るとの試算を示したうえで「課税逃れだ」と指摘。安住財務相は「事実だとすれば、大変残念だ」と答弁しました。
株保有比率が高い、オーナー経営者などの高所得者は所得・住民税合わせて50%の最高税率が多いとされる。しかし増税処置に伴い株式保有比率を3%未満に下げるケースが続出した。
ある電子部品大手の創業者の場合今年3月末時点で3,6%所有していたのが9月末には2,9%に低下した。(毎日新聞には書いていませんが、稲盛和夫氏のことです。)
今年1月以降3%未満に引き下げた大株主は述べ268人で配当総額112億円、そして説税額は33,6億円にのぼる。と書いています。
★ 同日の日経新聞朝刊に関連した記事が出ているかどうか詳しく探しましたがどこにも記事はありませんでした。日経新聞だけを読んでいる人は知らないということになります。
追記 : 2011年12月5日 (12月3日 赤旗記事より)
アメリカの著名な投資家ウオーレン・バフェット氏は8月のニューヨーク・タイムズ紙への寄稿文で「富裕者に増税を」と主張しました。「昨年の自分の連邦税は、課税所得の17,4%だった」としてその負担率が自分のオフィスの社員たちより低かったといっています。(そして自分たちに課税をといっています)
オバマ大統領はそれを受けて「年収100万ドル(約8000万円)を超える富裕層の負担率が中間層より低くなることを許さない」ということを「バフェット・ルール」と名付けて、税制改革の一つとして掲げました。
豊田自動車社長の豊田章男氏の所得と税額を推測しています。昨年度の豊田氏の年間所得は、基本報酬が8400万円、賞与が2400万円、ストックオプションが2700万円合わせて1億3500万円。あと自社の持ち株を457万4000株ももっていて配当は2億583万円となります。給与所得は最高税率で40%だが、配当は証券優遇税制が適用され、所得税だけだと7%で、さらにストックオクションには課税されません。それで所得税は5130万円で、15,1%となり、バフェット氏より低くなります。さらに社会保険料分を入れると5438万円で負担率は16%です。住民税を入れても20,7%です。
一方トヨタ自動車の昨年度の正社員の平均年収は727万1090円で、社会保険料を含めると年収に対する税の負担率は30,7%となり、豊田社長の負担率を大幅に下回っています。
このような不公平は早急に、解消されるべきでしょう。
2012年2月8日 追記
niftyの記事の中で、雑誌「SAPIO」の2011年12月28日に掲載された記事で、「『利他』 人のために生きる」という、瀬戸内寂聴さん(89歳)と、稲盛和夫氏(79歳)の対談の本の紹介をしていました。
二人とも仏教者であると紹介されています。そして、この前の東日本大震災の時に、日本人が利他の精神で活動しているのに感動した、などと書かれています。稲盛氏は「他を利するには、己の欲を抑えなければならない、そして足るを知ることが必要である」と、言っています。そして記事には最後に、「日々『利他』を実践し続けているからこそ、ひびく言葉だ」と称賛しています。
稲盛氏は、いろいろな所に寄付をしているということで、「利他」で、「己の欲など無い」とおっしゃっていますが、本来払うべき40%の総合所得の課税ではなく、10%しかない、「証券優遇税制」で、いままで優遇され、それを一部が20%になったのを、持ち株を売って、多額の節税をしているのは、はたして利己の欲を抑えて、利他の精神で行われたことなのでしょうか。
2013年10月9日追記
稲盛和夫氏の4年ぶりに書きおろした『燃える闘魂』(毎日新聞社刊)という本の宣伝が各紙に出ていました。ビジネス本で1位となりたちまち8万部と売れているとの新聞広告がありました。少し前の広告ですからさらに売れているかもしれません。
推薦の言葉で五木寛之氏が「世のため、人のためという『徳』に基づく資本主義は、はたして成功するのか。声は稲盛和夫さんの壮大な挑戦である」
そして、『日航』再建の次は日本再生!逆境を跳ね返す成功の哲学を説く、とあります
『サンデー毎日』の2013年9,15日版では
「稲盛哲学を辿る」という記事があります。
京セラをつくり、KDDIをつくり、日航を再生させた他に「稲盛財団」をつくり社会貢献を続けている。また「盛和熟」をつくり、稲盛さんの経営哲学を学ぶ場をつくったということです。また稲盛ライブラリーをつくり学びの場を提供したと礼賛しています。
盛和熟では「そして税金を納めるのが嫌で利益を抑えている会社に「税金を納める会社になろう」と教えていると。
これからは筆者の感想です。いろいろと極めて立派な人物であると礼賛されていますが。何か違和感を感じるのです。
1、前に書きましたが、証券優遇税制の変更前に、株を売り多額の税金を逃れました。違法ではないが。あまり徳を人に言える立場ではないように思えます。
2、日航再建ではリストラで多くの従業員を解雇しました。それにより多くの人々が失業の苦しみをあじわっています。これは徳のある行いではありません。再上場してからあまりに従業員を減らしたため人手不足が生じているといわれています。
3、日航が極めて早く再上場しました。その結果、日航の株を多量に保有した、自身が経営する京セラが多大な利益をあげました。またご自身でも利益をあげています。これも違法ではありませんが。やはり徳のある行為ではないと思います。
ということで、何か違和感を感ずるのですが、私だけでしょうか。
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コメント
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「もうすこし世の中を知っている者」さんへ。稲森氏が稲森財団で学術研究などへの援助をしているとか盛和塾で、若手経営者を養成していること、その他さまざまな団体へ寄付しているなどの事を私は知らないわけではありません。また稲森氏の本も読んでいます。
それだけの寄付をしているのだから、かなりの額ですが「節税!」をしてもよいではないかということでしょうね。しかし稲盛氏の援助は松下政経塾の相談役をやっているように、現在の大企業や大金持ちを優先する政治や世の中を擁護する立場に立ったものではないでしょうか。
またそれとは関係なく、お金を寄付していたとしても、せっかく不足する税制を補うために、制度を変えたのに、対象者300人のうちの節税者250人の中に入り、その筆頭になるというのは、あまりほめられたものではないと思いますがいかがでしょうか。本来、稲盛氏クラスのひとたちが株の配当所得に対して、わずか10%などではなく、総合課税で50%(以前は75%という時代があった)くらいはらっていれば、国の税収はかなり上がるはずで、貧乏人からも消費税を高くして取り上げることも無いように思いますがいかがなものでしょうか。
あと、私はまったく稲盛氏をやっかんでなどいませんよ。
投稿: こういち | 2012年1月24日 (火) 12時36分
過去に稲盛氏がどれだけ社会貢献されたか、金額だけでもどれだけ寄付されてきたか、ちょっとは調べてから書くべきだったでしょうね。
浅はかな、やっかみじみたコメントは、いただけないですね。
投稿: もう少し世の中を知っている者 | 2012年1月22日 (日) 08時10分
ブログを読んでいただきありがとうございます。
どういうわけか日本だとお金持ち批判というのが少ないことが不思議です。さらにそのお金持ち(投資家)もこうやって、脱税まがいのことをしているわけで、もっと批判されてもいいと思うのです。
今年はこうした不平等な格差をなくしていけるように、お互い発信していきましょう。
それでは,今後共よろしくお願いいたします。
投稿: Takky@UC | 2012年1月 2日 (月) 18時18分
takkyさん。コメントありがとうございました。早速上記のブログを見せていただきました。まったく同感ですね。政府案では消費税を上げるときに、証券優遇税制を元に戻すとのことになっていますが。そのときではなく、ともかくすぐに、証券優遇税制を元にもどすべきです。また本来大口のものは他国の例のあるように30%にすべきではないでしょうか。こんなかって無い大変な時に富裕者に今までにうんとまけてやった分を回収して初めて、消費税の話をすべきだと思います。また日本でも進んで、納税するという様な富裕者が現れればいいのでしょうが。でも無理なのでしょうね、きっと。
投稿: こういち | 2012年1月 2日 (月) 17時10分
どうもはじめまして。
Nabe Party ~ 再分配を重視する市民の会 のTakky@UCと申します。
トラックバックを送ったのですが、うまく送れなかったのでコメントさせていただきます。
http://nabeparty744.blog111.fc2.com/blog-entry-49.html
日本の投資家のあきれた節税法(証券優遇税制)
内容的には同じなのですが良かったら、こちらのブログもよろしくお願いします。
投稿: Takky@UC | 2012年1月 1日 (日) 19時47分