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2012年3月17日 (土)

天然ガス価格下落 原発いらない根拠に しかし日本は高く買うしくみ 

日経新聞の2012年3月16日の「ウォール街ラウンドアップ」という記事に、アメリカの天然ガスの価格が100万BTU(英国熱量単位)あたり、2,1ドルを下回り2009年9月につけた2ドルに迫った。ニューヨークの先物価格でも前年の同じ時期の4割以上下回ったと書かれていました。

 ニューヨークなどが暖冬であることと、注目の「シェールガス革命」もあって、天然ガスが異常にだぶついているということなのです。15日発表で、在庫が過去5年の同時期の平均より50%以上も多いのだそうです。

 市場の注目は、急騰が続く原油とのデカップリング(非連動)で、ゴールドマンサックスによると、「エネルギー閑散で原油が天然ガスの7倍強にも割高になるという水準」だといいます。すなわち、原油価格が高騰し、天然ガス価格が急落しているということです。

 昨日、吉本隆明氏がなくなられました。私も、吉本氏が週刊誌に書いた、「けた外れに安い原発止めれば、人間はサルになる」という文章を批判したブログを書きましたが、急にアクセスが多くなったので、どうしたのかと思いましたら、16日の夕刊に記事が載っていました。吉本氏だけではなく、原発止めれば、発電コストが急増して、電気料金が上がるとさんざん言っています。東京電力は値上げを申請しようとしています。そういう主張をする人は天然ガスについてはあまり触れずもっぱら、石油価格の値上がりを強調します。天然ガスは、ガスコンバインドサイクルや、コージェネや燃料電池などを活用すると5円を切るほどの発電価格になります。原発の発電コストは政府側の試算でもどんどん価格が上昇しています。実際は10円以上になります。

 「天然ガス価格」という名前でNiftyで検索してみましたら、最初に

[天然ガス価格の推移]というのが最初に出てきます。アドレスがうまく転記できないのですがよろしければ直接、アクセスしてください。それによれば、2011年5月あたりから日本や欧州では上昇しアメリカでは下がっています。なぜこういう状態になっているかといいますと、次に出てくる「天然ガス価格が下がっているね 荒谷のローリスク株式長期投資」

http://phaya.blog18.fc2.com/blog-entry-362.html

を見ていただければいいのですが、日本や欧州では、輸入LNG価格の原油価格連動方式をとっているからです。すなわち、石油を安定的に購入するために、たとえ天然ガスの価格が下がっても、石油価格が上昇すると、LNGも高く買うという協定です。

 そのブログには天然ガス調達で、日本は「一人負け」の状態で3ドルで購入したLNGを12ドルで、買わされる状態だといいます。その理由は、電力企業がかかわって、S字カーブ契約と呼ばれる原油価格連動のLNG価格契約方式をとっているからだといっています。これはひどい時代錯誤だといっています。

勘ぐれば、天然ガスを安い価格で買い、(前の高い価格でさえ、天然ガスでの発電コストは安いのです)発電コストがさらに5円以下になるようでは、原発が必要だという根拠が全くなくなってしまうからではないかと思います。原発擁護派が盛んにいう、二酸化炭素の排出も少ないですし。天然ガスは石油と異なり、様々なところから生産され、中東の比率は少ないのです。原発擁護派は天然ガスでの発電のことはほとんど口にせず、石油は高い、自然エネルギーがいいというが、太陽光で原発一基分発電するには山手線の内側全部を、太陽光発電にしなければならないじゃないか。そして発電コストが極めて高い~無理だといいます。天然ガスでの事を全く触れないのです。

 すでに脱原発を決めた、ドイツのメルケル首相は、天然ガスの石油連動方式をやめると決めています。日本も、全く不合理な石油、天然ガス連動の契約を破棄し、安い価格の天然ガスを輸入し、天然ガスでの発電を進めるべきです。天然ガスでの発電の良さは、家庭用から、中小ビルでの自家発電など多様な発電ができることです。今でも自家発電が増加して、一部電気を東電に売っていますから、原発がなくても全然大丈夫なのです。

 いま、都や世田谷区役所や城南信用金庫などが東電以外の電気会社から入札で電気を買うようにしています。このことも私がブログに書いています。私の住んでいるビルはずいぶん前から、エネットという会社から電気を買っています。それらの電気会社は天然ガスでの効率の良い発電機で発電していますから、東電が電気代あげても、価格を上げないといっています。今は天然ガスが石油と連動しているので、このままでは、電気代を上げるという可能性がありますが、安くで天然ガスを輸入できれば、逆にずいぶんと電気代は下がると思います。ただ、エネットなどの電気会社は需要に発電機の建設が間に合わず、断っている状態だそうです。ちなみに新宿区では、もう発電能力が無いからと断られてようです。原発が稼働しないから、電気代上げるなどといっていると、東電以外の会社がどんどん伸びて、東電から買う人が少なくなります。そのためにも早く送電線の使用料を下げるとか、発電と送電分けるようにとかすべきです。

 参考 こういちの人間学ブログ

 「早く家庭用電気も自由に選べるようにすべし」 2012年1月24日

 「原発問題で、電気会社変えてみたら、エネットなど」 2012年1月18日

2012年5月追記

 4月27日の日経新聞で、東京ガスと住友商事は、米国産のLNG調達に向けて米社と協議を始めた、と報じています。米国の許可が下りれば2017年から輸入を開始する予定。アメリカはシェールガス発掘により天然ガス(LNG)価格が低下しています。今後東京ガスはLNGを使って発電にも力を入れるとしています。

 また4月28日の日経新聞に、東京ガスは単価の安いLNGを使った発電に力を入れていくことに。LNGはガスコンバインドサイクルなどによる極めて発電効率が良い発電が可能です。

 東京ガスは横浜の扇島パワーで40万KWの発電機を増設稼働(現在81万KW)。その結果240万KWになります。これは原発に二基以上の能力になります。さらに20年までに300万~500万KWに能力を引き上げる計画です。この電気はエネットなどの電気販売会社で東電より安い価格で売られます。500万KWは福島第一原発よりも大きい発電量です。

 低価格で効率の良い天然ガスの発電が伸びれば、原発は必要がありません。それなのに、政府や、各電力会社は、原発を再稼働しなければ、電力不足になり停電するとか、発電の原材料費が上がるから電気代を値上げしなければならないなどと嘘をついています。

                                                 

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原発、エネルギー問題」カテゴリの記事

コメント

「反原発」で猿になる ! (吉本隆明)を読んで 2012.3.15

「週刊新潮」2012.1.5-12のインタヴュー記事を読んで唖然とした。かつて、吉本隆明を自立の思想家として高く評価して、「試行」にも投稿した一人として(もう三十年以上も前になるだろうか)、なんともやりきれない気持ちになった。
 ここで開陳されている言い分はほとんど反駁するのも馬鹿ばかしい底のものだ。「考えてもみてください。自動車だって事故でなくなる人が大勢いますが、だからといって車を無くしてしまえという話にはならないでしょう」だって ! こんな子供だましの理屈が通用すると思っているのか。また、核分裂による原子力発電と放射能によるレントゲン写真技術を並べて安全性を論じるなんて詭弁そのものだ。
 吉本は科学技術の進歩への素朴な信仰にしがみついているに過ぎない。スリーマイル島・チェルノブイリ・福島という一連の大事故が当時の原発技術の先進国(米国、ソ連、日本)で起っていることを深刻に受け止める必要がある。しかも、これらはほんの四十年足らずの間に引き起こされたではないか。現在でも中小の原子炉事故は頻繁に報告されている。原発をめぐる議論の中心にある「恐怖感」について云々しているが、目下大衆の間に広まっている過度の放射線への恐れは、昨年の福島原子炉の深刻なメルトダウン(炉心溶融)事故による膨大な放射能の拡散と広範な自然破壊・人体汚染という「歴然たる現実の脅威」のもたらした結果であることに目を塞いでいる。激しい爆発による発電所の災害の惨状は一連の写真で記録されているではないか。どこに目をつけているのだ。吉本は未曽有の惨禍から何も学んでいない。「福島」原発の大惨事なぞまるでなかったかのようだ。
 このインタヴューには、現実の脅威や惨状を直視する姿勢がいちじるしく欠落している。こうした現実感覚の鈍さは終始一貫しており、まさに恐るべきものだ。
事故を起こした発電所の中に現在も放置されたままの、大量の危険な使用済み核燃料はどこに運ぶのか、科学的にどう処理するのかといった、当面の技術的な方法や処置についても、ほとんど考慮する気配さえない。
 その代わりに、人類史的な観点からの原子科学の素晴らしさと優位性への賛美が繰り返されるばかり。「人類が積み上げてきた科学の成果を一度の事故で放棄していいのか」というわけだ。名にし負う理科系詩人吉本隆明、お得意の「原理的」な考察とやらである。こんな居丈高なご託宣に惑わされてはならない。むしろ、ここに思想家、批評家としての知的誠実さへの欠如を指摘せざるを得ない。自分の知性が誰よりも優れているという驕りがある。批評家にとって不可欠の,自分を批判するという心構えが失われている。
 ここで、ある素粒子物理学者の文章を紹介しておこう。「核融合炉の誘致は危険で無駄」(小柴昌俊)「朝日新聞「論壇」2001.1,18」これは「物理学を学んできた」立場からの「核融合」(「二十一世紀の夢のエネルギー源」 ! )についての意見である。原子力や放射能に関心ある方はぜひとも一読されたい。ここには吉本にはない、知的誠実さがある。
最後に、原発論議の流れの中で、唐突に小林秀雄を担ぎだしたのには、あきれたというより、思わず笑ってしまった。自立の思想家はどこへいったのだ。虎の威を借りる狐さながらだ。思想家としてみずから墓穴を掘ったにひとしい。
 スリーマイル島・チェルノブイリ・福島の原発大事故から何一つ学ばぬ者はむしろ「猿にも劣る」というべきである。 
 3.11には「東日本大震災市民のつどい」(東京・日比谷公園)に参加した。「さよなら原            阿羅漢老人 船木裕

「後記」この一文を書いた直後,思いがけず、吉本隆明の訃報を知った。生前の吉本さんに見せたかった。発」のために、還暦の老骨に鞭打って、これからも静かな怒りを少しずつ燃やし続けたい。

投稿: 阿羅漢 | 2012年3月26日 (月) 08時40分


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