1、学習院院長波多野敬雄氏の原発でのウソ 2、こういちの近況他 (410)
急きょ、『人間学研究所年誌2011(第9号)』に、「原発のうそ」について、書くことになり、昨日(16日)編集者の中江さんに原稿を送り、ほっとしているところです。原発に関していかに、ウソが横行しているかについて、いろいろまとめて書いたわけですが、そうしているうちに、2012年3月15日付の「新宿区新聞」に、学習院院長である波多野敬雄氏のインタビューがのっていました。その話は私が書いた「原発に関するウソ」の指摘にそのままあてはまるので、ここで書き示して見ることにしました。彼の言うことはおおかたの保守的知識人の見解をすべて代弁しているといってよいでしょう。
波多野敬雄氏は、祖父が鍋島藩出身で、戦前は宮内大臣、父は日銀勤務という名家の四男で、昭和7年生まれの80歳です。外務省でアメリカ特命全権公使や国連日本政府特命全権大使などを歴任し学習院女子の学長から学習院院長になった人物ですから、典型的な高級官僚出身者で、進歩的な考えなどは全く期待できない人物です。
「新宿区新聞」によれば、「経済競争には『原発』が必要」として、「安価な電気を大量に生み出せる原子力発電を、今やめたら日本の経済は持たない。風力、太陽光、地熱といった再生可能エネルギーでは、日本の経済競争力は保てない。だからどうすれば原発を安全に保てるかを、皆で考えなければいけないと思っています。あの大震災から、まだ1年しか経っていないから、だれもが惨状を忘れられず、原発を極度に怖がっていますが。しかし世界を見れば、いたるところで原子炉を作っています。明確に反対しているドイツにしても、隣国のフランスから大量に原発による電力を買っている。自国では作らないといっているだけでしょう。今のままではこれから10年の間で、日本経済はダメになってしまうのではないかとの危機感をもっています。電気代が高いことも日本の経済力を弱めている大きな要因です。この先原発を全部止めて、さらに電気料金が上がったら、日本の中小企業は総崩れしますよ。節電に努めたうえで、補完的でも原発を使い、これ以上電気代を上げないことです。日本経済がダメになったらどうするか、日本のメディアもっと考えなければ。」
以上がインタビューで話したことの全文です。この話しの流れは、原発維持、容認者の言っていることをほぼ代表するものといえるでしょう。これに対して、それぞれいかにウソであるかを示して見ることにします。
1、安価な電気を大量に生み出せる原子力発電ということに関して
経産省では、以前、発電1KWに対して原子力5,3円、天然ガス6,2円として原子力が最も安いとしてきました。ところが政府のエネルギー・環境会議は2012年3月14日に、最低でも8,9円とすると発表し、事故の賠償費や除染費用などは含まれていないのでそれを加える必要があると言っています。他の試算では原子力は10,68円でそれに夜間の揚水発電のコストを加えると12円であり、決して安いなどといえるものでないことが明らかです。そのほかに、プルトニウム高速増殖炉「もんじゅ」は2兆4000億円をかけ、青森六ケ所村の再処理工場に開発、建設、維持費に6兆円をかけたが破綻している。そのほかに税金を使って、電源三法に基づく多額なお金を地方にばらまいています。これらのお費用は全く計算に入れられていません。日本の原子力委員会によれば、六ヶ所村などの工場の操業を見送れば工場の操業期間中にわたって日本の発電コストを6~7兆円節約できると言っています。(毎日新聞2012年3月19日)原発をたくさん稼働しているときでも日本の電気は極めて他国より高かったのです。
逆に天然ガスを使った最新の発電所では1KWあたり5円ほどになり、エネットなどの天然ガスによる発電をしている会社は、東電が17%電気代を上げるという中で、もともと東電より安い金額だったのを、電気代をあげないでそのままにするといっています。これで差はもっと開くことになります。そして今申し込みが殺到していますが発電能力が追い付かず断っています。
2、風力、太陽光、地熱といった再生可能エネルギーでは日本の国際競争力は保てない
これは、原発擁護者が必ず言うことです。前にあげた、天然ガスによる効率の良い発電を行いつつしだいに、再生可能エネルギーを増やしていけばいいのです。今各企業は天然ガスによる自家発電を増やしています。天然ガスは、アメリカのシェールガスや日本近海のメタンハイドレードなど、資源は無尽蔵といわれるほどです。国際価格も大幅に下がっています。しかし、日本は石油と連動した買い取り価格制度で高い買い物をしています。ドイツではそのしくみから離れます。ごく最近地熱発電でも効率のよい発電機が作られ、効率が大幅に上昇すると新聞報道がありました。
3、世界を見ればいたるところで原子炉を作っています。ドイツも原発大国フランスから、電気を輸入している。
日本の原発事故以後、世界中で、脱原発の動きが加速しています。ドイツではもちろん、イタリアはすでに国民投票で原発からの決別を決めていました。スイスも脱原発を決めました。オーストラリアでは原発の導入はないと決めました。中国でも推進派から慎重派へと変わりました。フランスでも原発増設計画はゼロとなり、原発推進のサルコジ大統領は大統領選で苦戦しています。フランスはドイツに電気を輸出したこともありますが、2011年夏猛暑により、逆にドイツから電気を輸入しています。波多野氏はこれらのことを知らないのでしょう。
4、原発を全部止めて電気料金が上がったら、日本の中小企業は総崩れになる。日本のメディアももっと考えなければ。
日本の電気料金が、今まで原発を稼働していながら韓国の倍近いというように異常に高いのは、「総括電気方式」という、原発関連施設にかけてきたきわめて高い資産(原発作れば作るほど利益を高く設定できる)や高い給与やマスコミを支配する宣伝費などあらゆる経費を含めて、それに3%をたして設定するという方式だったからです。石油や天然ガスの輸入が増えたというなら、原発をこの際一切やめて、在庫のウランを外国に売却すればいいでしょう。おそらく、もう原発はどこも再開できないと思いますから。
また本来、河野太郎氏が言うように、東電は日航と同じように破綻させるべきで、株主責任や銀行の貸出責任を負わせるべきです。また、東電の持つ送配電設備5兆円を売却し、中小の電気会社の参入をしやすくすべきです。それによる雇用の増加も期待できます。欧米ではすでにそうなっています。また核廃棄物の再処理のための資金3兆円を取り崩すべきです。そうして、「値上げする権利」があるなどと堂々と居直る東電の責任を問うべきです。ところが、政財官マスコミあげて、原発再開の大合唱です。
日本のメディアも考えなければなどという波多野氏は毎日新聞を除けば、産経、読売、日経、日和見の朝日とみんな原発維持に躍起となった記事をかいているのをご存じないのでしょうか。もっともっと、原発を維持せよと大合唱すべきだと言いたいのでしょう。
2、こういちの近況
東日本大震災と原発事故から、1年を経過し改めて、特集のテレビを録画しながら、津波や原発事故の恐ろしさと、原発を擁護する人たちへの怒りが増してきました。それで、3月の人間学研究所の新教育人間学部会で、「原発に関するウソについて」と題してお話しをするために、改めてかなり多くの書物を買いこみ、新聞資料を整理し、それを講演資料にまとめるのは大変な労力を要しました。その結果、32ページにわたる資料が出来上がりました。自分自身でも知識が良く整理されました。また、そのあとで、『人間学研究所通信』(HUMANOLOGY)57号の編集発送があり、続いて、『人間学研究所年誌2010』第9号の発行と続き、事務局長としての、研究所の活動報告や、『人間学研究所通信』の第一号からの記事の内容の整理などの他に急きょ、「原発のウソ」について、書くことになりました。それは13ページになったのですが、まとめるのに苦労しました。
このようなことで、3月から4月にかけて、あまり「こういちの人間学」ブログに手間をかけることができませんでした。特に、原発に関するブログなどが増えて、「人間とは何か」などに関する基礎人間学部門についてはほとんど何も書けませんでした。ブログの更新が遅れているため、このところのアクセスも1日350件くらい(以前は500件ほど)と減少しています。さらに足腰が痛かったり、慢性鼻炎でどうも風邪気味で体調も悪く、気力がわきませんでした。
しかし、メル友さんの応援で、最初からのブログの校正を終わりました。お恥ずかしい内容も多かったのですがこれで少し安心しました。一つ区切りがついたのでこれから、ブログ更新にも頑張っていくつもりです。
2012年4月20日追記
「こういちの人間学」ブログは今日現在で、記事件数累計411件、アクセス累計(2009年7月より)「こういちの人間学」と「こういち」との合計で185000件となり、スタートからの平均で一日180件となりました。
4月26日 追記 アクセス累計 「こういちの人間学」で18万件、コメントが216件になりました。
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投稿: 世良 康雄 | 2015年6月 3日 (水) 13時35分