12月21日に世界は終末?マヤ暦の終末論 科学的批判的判断力が必要
毎日新聞2012年12月19日の「水説」で、毎日新聞専門編集委員の潮田道夫氏が「マヤ暦の終末論」に関して書いています。以下記事を一部略しましたが、ほぼそのまま書いてみます。
12月21日に世界は終末するのか。
古代マヤ暦では今月21日で世界は終末を迎える。そんなデマが世界に広がっている。各地で大騒動だ。
中国では食品の買いだめに走る人が多いらしい。それどころか「終末グッズ」が流行し、「ノアの箱舟」などと称する一種のシェルターが、日本円換算で何千万もするのに飛ぶ売れいきだそうだ。
口コミで流言を広める団体もあるようだ。危険視した当局が57人を拘束した報道もあった。
ロシアでも同様らしい。モスクワに近い街では、恐怖に駆られた男が通行人を無差別に襲撃し、4人が重軽傷を負った、という。マヤ暦騒動は笑っていられない段階に至っている。
こうしたうわさや流言飛語が発生するには、それなりの理由がある。以下に書くことは、噂に関する研究で有名な広井脩氏の著述で知ったことである。
タモツ・シブタニという日系の社会学者によれば、噂はマスメディアが情報の供給義務を十分に果たしていないとき、「マスメディアの補助的チャンネル」として拡大していく。あるいは報道に食い違いがあるときなども危ないのだそうだ。 ~
うわさや流言はマスメディアが十分に機能していない専制国家で、発生しやすい。そしてうわさや流言の背後には、人々の不満がある。これが重要。
中国で人々が奇妙な振る舞いに走っているのも、例えば格差拡大などへの意識せざる不満表明と考えれば合点がいく。権力者が神経質になっているのも当然だ。
その点日本は・・といいたいが、過去を振り返ればあまり大口はたたけない。うわさが飛び交う社会はどこかに問題がある。日本では大騒動こそ起きていないものの、学校の怪談の類の「都市伝説」は次から次に発生している。日本人の心の中でも鬱積したものが渦巻いているのである。
以上です。
今中国などで起きていること (以下私のほうで付け加えました。)
河南省では人類が滅亡するということに絶望した男が刃物を持って学校に入り、子どもを次々に傷つけ、けがをした児童は23人にのぼったと報道されました。これは下記に書いた全能神の影響を受けたと報じられています。アメリカのように、銃を乱射したらもっとすごい惨事になります。
中国の四川省では12月に入ってから、世界が暗闇になるという話を信じて、ろうそくを買い求める人がたくさんいるとのことです。
また中国では、人々に終末論を振りまいたとして宗教組織である「全能神」のメンバー101人を拘束したといわれます。19日までにはさらに500人を拘束したとのことです。「全能神」では中国共産党を「赤い龍」と呼び、絶滅しなければならないといっているとのことです。
21日追記
20日付の中国紙新京報で、「全能神」にかかわって逮捕された人数は1000人近くに上ったとのことです。青海、貴州、山陝、山西省そして内モンゴル自治区です。これらの地域は内陸部で、中国の発展から取り残された地域です。政府に対しての人々の不満も強いというところです。
いま中国では様々な便乗商法がまかり通り、世界の終末の時に逃げ出しやすい革靴なども売り出されているそうです。また大洪水のときに逃れる球体のカプセルが日本円で78万円で売られているそうです。南京市の54歳の女性は自宅を売った上、さらに借金をして、その有り金全部を寄付したそうです。おそらく死んだ後の来生で、極楽にいけることを願ったのでしょう。中国ではテレビの放送で、デマに惑わされないようにと、わざわざ放送する事態だそうです。なにもなかった後で高いお金を出した人は、だまされたと、さぞがっかりすることでしょう。
フランス南部ではUFOの目撃が多いとされるビュガラッシ山の近くの人口200人のビュガラッシュ村では、この村だけが破滅を逃れられると信じた人々が数千人も押し寄せて村のまわりにキャンプしてすみついているそうです。村では便乗してUFOワインを便乗して売り出しているとか。
またNASAでは12月21日は何かが起こるという証拠は何一つとして無い。その日は特になにも起こらないごく普通の日であると声明を発表しています。たしかに、人類が滅亡するという事態は、世界的な核戦争とか、強大な小惑星などの衝突ぐらいしか考えられません。この一日二日でどうなるようなことはあり得ません。
22日追記
テレビ番組で、いろいろな怪しげな減少や出来事を出してあなたは信じますか信じませんかという様な番組をやっていました。一応見ながら録画もしましたが、その中で、「マヤの暦から、22日に人類は絶滅するかどうか」というのがありました。21日の夜に放送しているのですから。21日に滅びますかと問いかけるのはナンセンスなので、22日としたのでしょう。結局、新しいスタートになるという結論でしたが。
私のこのブログも20日に800件、昨日は400件と多くのアクセスがありましたが、22日の今日になると激減しています。すんでしまえば、もう見る必要もないのですから当然でしょう。中国で、だまされていろいろお金をたくさん出して何か買ったりした人は、なにもなかったとわかった時にお金を返せとか大騒ぎになっているのでしょう。
神秘主義と終末論
この終末論は、神秘主義を振りまく人々が騒いでいるもので、1999年のノストラダムスの「ハルマゲドン」による終末論の時は今よりももっと大騒ぎで、オーム真理教や様々な怪しげな宗教が終末論を振りまきました。しかし何事も起こらなかったわけで、日本で今、あまり騒がないのは、あれほど騒がれた1999年のハルマゲドンがなにも起こらなかったではないかという、神秘主義に対する批判的な気持ちがもとになっているように思えます。
終末論を振りまくものは、それがかならず全人類の絶滅ではなく、特定の宗教なりを信じたものだけが生き残るということを前提としています。キリスト教では、ほとんどの人類は絶滅したのが、ノアの家族だけは生き残った、ということになっています。ですから、ノアと同じように我らが宗教を信じたものだけが生き残れるというのです。そして何事もおこらないと、その教祖なりの祈りが通じて、絶滅を免れたとか言うのです。
だいたい2012年12月21日に終末するとか言うのは、中米で過去栄えたマヤ文明が高度に発達した暦を持っていたこと。その長期暦が、2012年12月21日で終わっているからと、言うのです。また2012年に世界が滅びると言う映画などが何本もつくられ、それに影響を受ける人もいることでしょう。3年前の「2012」という映画では日本人だけで310万人が見たそうです。
それで実際はどうなのでしょうか。しかし、そもそも暦というのはいろいろ変わっていくものです。数え方が違えば、昨年すでに終わっているという説もあります。マヤの末裔の古老もいったん長期暦が終わるが、また新しい暦(のサイクル)が始まるだけだといっています。茨城大の青山教授もマヤ文明には、そもそも終末論が無いと否定しています。
中国などで、様々な無駄な出費をしたり、やけくそになり人を殺傷して刑事罰を受けたりする人がいるのは大変不幸なことです。だいたい非科学的なものにだまされやすい人は世界に対しての科学的な知識が欠けていることが多いのです。科学的な知識があれば、そのような説が正しいかどうかはすぐにわかり、ばかばかしいと一蹴します。でもそうでない人はだまされやすいのです。
中国でも、毛沢東時代には、徹底的な毛沢東主義による、思想教育がありました。そして宗教はアヘンだなどとして、排斥されました。しかし、その後、中国共産党が支配する資本主義になり、宗教が容認されるとともに、非科学的ななものも広まったように感じます。中国の人を見ても、唯物論教育を受けた親の世代の多くは、教会やお寺などにいかないようです。ところが、子供の世代のほうが宗教を好きなのです。中国では、単に成績を上げることに熱中し、科学的批判的合理的な判断力を高めるための教育をおろそかにしているように思えます。科学的、批判的な判断力が高まると、共産党批判までに行きかねません。そういった点では日本のほうが十分ではないにしてもまだましなのでしょう。また格差などに対しての不満も、怪しげな迷信が流行るもとになるのも事実でしょう。
カールセーガンの本の池内 了氏の解説
私は、科学的な判断力を全般的に持つことの重要性をこのブログでも再三述べてきました。『カールセーガンの科学と悪霊を語る』(カールセーガン、1997年発行、新潮社)で、池内 了氏が「科学と未来のために」と題して巻末に解説を書いておられます。
今までに様々な似非科学が生まれています。(このマヤ暦による世界終末論もその一つです。)今日本でも「理科離れ」、似非科学への傾倒という現象があります。そして科学を否定する気持ちも生まれてきます。~
トンデモ話を軽々しく信じる心情が、政府や社会の教祖を批判する力を失わせることにある。トンデモ話しに引っかからない一番の方法は、懐疑的思考、つまり、前提なり出発点が正しいかどうか、そこから筋の通った議論が組み立てられているかどうかを、常に疑い追試することである。~
科学に対して否定的な考えもあるが、~しかし科学こそ、人間を人間らしくさせてきた原動力ではなかったのか。逆に似非科学や神秘主義が横行したとき、どれだけ悲惨な死が人々に強制されたことだろう。~
「科学に権威はいない。せいぜい専門家がいるだけ」「科学の価値は、民主主義の価値と相性が良く、この二つが区別できないことがある」とカールセーガンは言っています。
そしてセーガンにとって科学する精神を持ち、それを現実の社会で実践した人は、学歴や職業に関係なく、すべて科学者なのである。
以上は池内 了氏の言葉です。
この私が、大変好きな言葉が書かれています。私の「実用的人間学」も、この意味での科学者になるための手助けをしたいと思っているのです。
12月13日付の中国BBS(電子掲示板)での調査で、中国では12月21日に世界の終末が来ると思っている人の割合を発表しました。中国ではなんと20%の人が信じているそうです。そこでデマを信じて買占めに走ったりします。日本や韓国で13%、アメリカが12%、ドイツは4%だそうです。哲学の国ドイツはさすがの数字だと思います。
2012年12月19日追記
この画像は日本経済新聞の12月19日の夕刊の記事です。ごらんのとおり、マヤ文明の暦が、間もなく「新たな時代」に切り替わる。その始まりは21~23日とされ、終末論に絡めて世界的に注目される。これに飛びついたのがゆかりの地メキシコやグァテマラの政府や旅行業者ら。「聖なる日」を絶好の商機ととらえ、観光誘致に力を入れるが、先住民からは批判も出ている、と書いています。
熱心なPRで、メキシコやグァテマラのマヤ文明の遺跡近くのホテルは予約で埋まっているそうです。
コメント:21日だけではなかったのですね。
マヤ文明は300~900年ごろに最盛期を迎えた文明で、その暦は天体観測にもとづく極めて正確な暦を持っていた。この暦によると現在の世界は紀元前3114年に始まったとされ、2012年21~23日ごろ次の時代に切り替わる、といわれる。
21日10時半
やはりというか、当然というか、世の中何事も起こらない平凡な一日になりそうです。
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