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2013年1月15日 (火)

「八重の桜」にみる自然の時代考証 戦争場面に外国産の牧草が映っていた 岩田氏より

NHKの大河ドラマ「八重の桜」が始まりました。前回の平 清盛がひどい低視聴率で、私もブログに書きました。今度の「八重の桜」を見ましたが、なかなかおもしろそうでこんどは女性にも評判が良いのではないかと思われ、かなり視聴率は高まるものと思われます。

 人間学研究所の会報である『人間学研究所通信 第61号』(”HUMANOLOGY”、2013年1月発行)には、人間学研究所の副所長で、「子どもと自然学会」の顧問(元会長)である、岩田好宏氏が「自然の時代考証について」という題で、投稿されました。大変興味深い内容でしたので、岩田氏の了承もいただき転載させていただきました。内容は以下の通りです。

「自然の時代考証について」

 新春、竹中直人主演テレビ作品「御鑓拝借」があった。いつもとは違って竹中がはしゃぎすぎることなく演じて、終わり方を除けば好感のもてるものだった。ただ一つだけ気になることがあった。幟の骨太に書かれた字が「御鑓拝借」であった。当用漢字前は「拜」ではなかったか、あるいは「拝」も使われていたのか。確認していない。

 1月6日の日曜日の夜、新しい大河ドラマが始まった。また時代考証に悩むことになると思った。大石学さんという優れた歴史家が時代考証を担当しており、建物、衣装、道具類、しぐさ、景観などに十分考証がされるだろうと思っている。屋外で撮影する場合、背景に電信柱や電車、鉄筋コンクリートの建物などが入らないように、十分な配慮がされているのであろうが、果たして動植物まで及んでいるのか。

 これまでの時代劇には、テレビも映画も帰化植物が良く出てきた。もっとも多いのは、ヒメジョオンである。ひどいのになると、劇中重要な意味をもつものとして、この北米産の植物が出てくる。例えば主人公の侍が劇中の出来事を回想して終わるときに口にくわえている場面などであるり、女性が野原の中を歩む場面で、わざわざこの植物の群落が選ばれるというようなこともある。酷い場合には、園芸植物を野原に植えつけたものもある。

 さて、新しい時代劇「八重の桜」はどうか。ついそのようなことを気にしながら見たがやはりあった。二つの場面が気になった。一つは、戊辰戦争の時の福島県の原の中の場面で、外国産の牧草が背景に見られた。二つ目は、主人公の女性が子ども時代に、藩の殿さまの行列を木に登ってみた後、木から下りてくる場面がある。ヒメジョオンと思われる白い花をつけた群落が背景にあった。しかし、考慮したためか、どちらの場面も、動き回る人物に焦点が当てられ、背景のこれらの群落の姿は流れて「ぶれて」いて、鮮明ではなかった。

 日本列島の大部分は、植生からいうと、ブナクラス域であり、特別の環境のところを除いては、草原になりにくい。河川敷であるとか、高山地帯、あるいは海岸の砂丘・岩礁、溶岩地帯などだけで、その他の環境のところでは、草原は人為的以外ではできない。河川敷の植物が育ち、群落をつくり遷移が進行すると、ヨシなどの群落になり、さらにヤナギ、ハンノキなどの疎林になる。しかし、多くの場合はそうならないうちに、大雨による洪水で河川敷は冠水して、これらの植生は破壊される。海岸砂丘では、塩風と飛砂が植物の生育の障害となる。高山地帯は、春から秋にかけて、植物の生育できる期間が短く、多くは、開葉から開花、結実までが短い植物が、生育している。

 畑は作物など草本植物が多く、収穫が終わると里植物が繁茂するが、それらは丈が低い草で、栽培期をむかえると除草、耕しによって姿が消える。萱(カヤ)原は、春の終わりから成長を始めたススキを主とした植生になると、肥料、飼料、屋根の材料を採取するために刈り取られて,遷移はとめられ、冬から春にかけては、カラスノエンドウやハコベ、ホトケノザ、など越冬植物の群落に変わった。このように除草、火入れ、草刈り、放牧という様な人間の行為によって、植生の遷移が中断されたり元に戻されたりして森林までには達することができず、その途中相としての草原になっている。

 そして、こうしたところは外来植物の侵入しやすい環境でもある。戦争場面を撮影するような広大な草原の場面を撮影する場合には、遠景としてとらえ、近写をさけなければならない。それを怠ると、江戸時代でありながら、明治以後日本に入れられた外国産の植物が、場面を占有することもある。花の色が目立つ大きな花の植物も注意しなければならないだろう。それらの多くは、園芸植物が逸出したものである。「八重の桜」の中の戦闘場面は、栃木県那須野の放牧地で撮影されたのではないかと思う。そうだとすると、大半は外国産の牧草の原となっていたのではないか。時期が春の終わりごろだったので、これらの植物は丈を伸ばして繁茂するまでなっていなかったのが幸いしたと思われる。現地を見ていないのでなんともいえない、憶測だけのものになってしまった。

 以上のような内容です。生物学者である岩田氏による観察でこそ、わかることで普通の人は、まったく気がつかないことが多いのですが、みなさんも、ためしに、歴史ドラマを見た時に、どうだろうかと見直してみると思白いかもしれませんね。

 なお、「人間学研究所通信」は、人間学研究所の会員の方々に2,3カ月に一度送られているものです。

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小説、絵、映画など 芸術」カテゴリの記事

コメント

こういち 様

誠にお恥ずかしい限りです。 その昔に、亡母と共に、大阪市の映画館で観た折の記憶のまま誤認していたのですから。

それに、勲章の書籍とは写真集です。 読まずに眺めるのみの本です。 一応、ドイツの出版社ですが、ドイツ語は苦手ですので難しい書籍には歯が立ちません。

その昔には、勲章の類は、二束三文でした。 古物商の店先に山ほど積んで売られていましたので、亡母から貰ったお小遣いで色々と買いました。 今でも開かずの間になった部屋の何処かに置いてあります。 そうたいしたものではありませんが、ナチス・ドイツの鉄十字勲章もあります。 これは、大量生産でドイツ兵に与えられたものなので、今でも出回っているようです。 

勲章のコレクターでは、米軍のものを収集している人もいるようです。 これは、日本に駐留している兵隊が多数居ますので除隊する折等に売るのでしょうが、何処のサープラス・ショップでもたくさん置いています。 でも種類が多過ぎて、全部収集するのは大変でしょう。

私も何点か持っています。 兎に角、米軍では何かにつけて勲章を与えるようで、兵隊でも何年か兵役に就くと相当な数を貰うようです。 制服にズラッと略綬を着用した兵隊も居ます。 略綬とは、正式の勲章では無く、制服に着用する彩の良い略式の勲章です。 

因みに、軍人がつけたズラッと並んだ略綬を英語では、フルーツ・サラダと言いますが、彩が似ている処からの連想でしょう。

とら猫イーチ様

 わざわざ4年前のコメントについて、訂正のコメントをいただきありがとうございます。

 ドイツの勲章の本をお読みになって、というのはすごいですね。私も戦争そのものは大嫌いですが、武器や戦術の歴史などには興味をもっています。
 プロイセンの最高勲章、プール・ル・メリット勲章をインターネットで見てみました。きれいな勲章ですね。ナチスの勲章に比べるととても優雅な感じがします。

こういち 様

既に三年も時間が経過しておりますが、私の錯誤を御詫びしまして、謹んで訂正致します。

映画大脱走で収容所長が、胸元にしていた勲章は、第一次世界大戦におけるドイツ軍の最高勲章であるプール・ル・メリット勲章でした。 

映画は、誤謬では無くて、原作に忠実に映画化したものであり、映画が精確であり、私が、第二次大戦時のマザー・クロスと誤認したものです。 数十年間も誤認したままでした。

つい最近に、ドイツの勲章を集積した書物を観ていまして発見したのでした。 映画を見た数十年前の記憶と誤謬を今頃になって訂正した訳です。

慎んで、訂正し、御詫びします。 

映画を見た当時には、じっくりと点検出来ずに、自分が持っていましたマザー・クロスと同じ、と決めつけて記憶したままでしたが、PCでYou-tubeの画像を懐かしさから観ていて停止して点検して確認しましたので、私の見間違いは確かです。

今頃になって気付くのは少し可笑しいですが、死ぬ前に自分の間違いに気付けて良かった、と思います。 

お笑い下さい。 

 わたしも、いろいろな時代の武器や、戦争の歴史には興味を持って図鑑などを買っています。
 「大脱走」私もみましたが、まさか収容所長がそんな勲章をしているとは全然気がつきませんでした。確かにドイツでつくった映画ならそんな間違いはしないでしょうね。
 話しは変わりますが、韓国の歴史ドラマを見ていると、戦闘場面が良く出てきます。実際の戦闘では日本でもそうですが、弓矢と長槍が重要で剣や刀で戦うのはほんとの白兵戦になったときだけなのですが、やたらと剣と剣との戦いが目立ちます。どこでもアニメなども含め、一対一の戦闘が好きなんですね。スターウオーズでも、ライトサーベルでしたか、チャンバラしますからね。

 時代考証は、遡る程に困難でしょうね。 
私は、第二次大戦を舞台にした戦争映画をよく観ますので、一時は、武器や飛行機等に興味を持ち、参考書等を読みました。 軍用品や野戦食糧等にも興味を持ち、自分でも実際に日用品に使用しています。 実際に使用しているのは、いくら何でも第二次大戦時のものはありませんが。 
 そんな眼で映画を観ていますと、呆れるような画面があるのに気がつきます。 昔、観た映画に「大脱走」と云うアクション映画がありますが、この映画に出て来るドイツ空軍の捕虜収容所長が、「マザー・クロス」と云う勲章を喉元にしていたのには、大笑いしました。 いくらハリウッド映画であるにしても、ナチス・ドイツ時代に、子だくさんの母親に贈られた勲章を軍人がしている訳はありません。 これは、当時の軍人に贈られた、騎士鉄十字勲章の間違いか、代用の積りであったのでしょう。 あたりまえの話ですが、ドイツ映画には、こんな間違いは、いくら探してもありません。 

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