TBS"人間とは何だ”最新遺伝子ミステリーをみて 人間は変わりうる ポイントは遺伝子スイッチ
2013年2月11日にTBSの特別番組が放送されました。テーマは生命38億年スペシャル、最新遺伝子ミステリー”人間とは何だ・・・!?”というものです。カラーの大きな新聞広告もあり、ビデオを撮りながら、メモを取りました。その要旨を紹介いたします。
上と下は新聞広告の一部です。21時から23時までの2時間番組でした。番組では6つのテーマについての話がありました。監修者は榊 博士です。
1、年をとらない少女の話し
上図の左に一見赤ちゃんに見えるけれど、実はもう20歳になっているグリーンバーク家の少女のお話です。 生まれてから、成長や発達は止まってしまった。榊氏によれば、遺伝子がないのではなく成長していくための遺伝子のスイッチがはたらかないせいだとのことです。よく調べれば成長や老化のしくみがわかるかもしれないということです。
遺伝子(DNA)のはたらきには1、親の情報を子に伝えるという役目。2、生命を維持する役目とがある。遺伝子の働きは、50%はその人の生活の仕方や環境で変わる。すなわち遺伝子のスイッチが入るかどうかで決まってくる。
2、長寿遺伝子の話し
京都府の京丹後市は115歳で世界一の長寿者である、木村次郎右衛門三始め、100歳以上の人が61人もいる長寿市である。上の図で左下に写っているのが吉岡新資さん100歳です。身体は悪いところがなく夏場はゲートボールをし、30分歩いていく。毎日の散歩を欠かさない。吉岡さんは朝食も自分で食べる。今日の朝食は梅干しと昆布のスープと、トーストしたパンと、イワシのカンズメでした。娘夫婦と3人暮らしだそうで、若い時には原いっぱい食べたけれど、年をとってからは腹八分目にしていると、話していました。筆者がブログで批判した若杉友子さんは、パン食はダメだといっていますが、関係ないようです。
慶大の坪田一男教授は適度な運動をすると、長寿遺伝子(Sirt3=サーチュイン遺伝子)がスイッチオンし活性化するようだといっています。また103歳の新谷とよ五さんは特別に運動はしていないが、趣味の編み物をし食事はやはり腹八分目にしていると。4年前のアカゲザルの実験でも30%カロリーオフにしたものと普通にえさを与えたものではカロリー制限したほうが身体機能や脳も若々しいということを猿の比較で示していました。ただこれはアカゲザルの結果をそのまま人間に当てはめていいかどうかという問題があります。
坪田氏はまた長寿遺伝子とは健康に役立つ遺伝子群のことで、それにはいろいろなものがあり、一つがスイッチオンすると、次々に他の長寿遺伝子もスイッチオンされる傾向があるといっていました。例えば20分程度の運動を続けるとスイッチオンする。106歳の小国さんは毎日30分以上の畑仕事をして元気を保っているというような例です。
筆者が思うに、この話しのあと、司会の安住さんと松たか子さんが盛んに自分は腹八分目なんて無理だといっていましたが、まだ若い二人が無理に腹八分目にする必要がないのです。前に書いた吉岡さんがいっているように、基礎代謝の大きい若いころには腹いっぱい食べても大丈夫なのです。基礎代謝が落ちあまりカロリーを必要としなくなったときに腹八分目にして肥満を防げばいいのです。
3、がん抑制遺伝子と5年前に胃がんになるリスクが分かる。生活を変えることによりがんリスクは減少
人間の体内には、がんを抑制する遺伝子があるが、これがいわば錆ついてオフとなると、いろいろながんが起きてくるというのです。国立がんセンターでの検査ですが、がん死亡率第2位の胃がんでみると、胃の粘膜を少し取り、遺伝子(DNA)を調べると遺伝子のさびつき具合=発がんの危険度が分かるというのです。胃がんが起きる5年前に、超早期診断として将来胃がんが起きるかどうかが診断できると。胃がんになりやすいリスクは煙草や濃い塩分などがある。それらによって危険度が増し、がん抑制遺伝子がオフになってしまうと胃がんになる。しかしそれも、一つは生活の仕方や環境を変えることによって変えられるのだといっています。また最近では、骨髄質形成不全症候群(というがん)にはNTT東日本関東病院ではアザシチジンを投与して抑制遺伝子をスイッチオンさせ、生存率を二倍にすることができたといっています。
長寿遺伝子をスイッチオンするには、緑茶や、赤ワイン(レスべラトロールがはいっている)、ヨーグルト、水素水なども良いと。それはミツバチが元は同じ働き蜂と同じ(遺伝子)でも、ローヤルゼリーを食べると、女王蜂になるのと同じようなものだというのです。
4、母親の極度のやせは生まれる子どもを肥満体質にする
60年前にオランダがドイツに占領されていたとき、母親が極度の栄養失調になった。そして生まれた子供は大人になり、肥満などのひどい生活習慣病に悩まされたということです。今まで人類は何度も飢餓にさらされましたが少ないカロリーで生き延びるための遺伝子を発達させてきました。ところが妊娠している母親が極度のカロリー不足になるとその胎児で生き延びるための遺伝子が働き、子どもが超肥満になりやすいというのです。
最近では20代の若い女性が、ダイエットによりやせ過ぎが多くなっています。そのことにより生まれてくる子供が、肥満しやすく生活習慣病になりやすい状態で生まれてくるということです。若い女性がそういう事実を知らないということは、問題ですし、やせが美しいと宣伝するダイエット業界やファッション業界には問題があると筆者は思います。
5、チンパンジーと人間の違いは?家族と言葉が人間にした。
500万年前にチンパンジーと人は共通の祖先から分離しました。京大の松沢哲郎教授によれば、人間とチンパンジーの、遺伝子の違いはほとんどなく、98,8%が同じあるというのです。京大の松沢研究室では、テレビ画面を見て数字を記憶する能力をしらべたところ、母親チンパンジーのアイちゃんと息子のアユムは1~9の数字を、0,5秒で記憶してしまう能力を持っています。それは人間よりも能力は高いのです。また色と漢字との対応も分かっています。チンパンジーは環境のいろいろな変化を瞬時に判断する能力において人間より優れているというのです。
人間の場合は、言葉を使う能力を獲得しました。言葉に関連する遺伝子FOXP2を持っています。チンパンジーも持っていますが構造が違い、話ができません。FOXP2の遺伝子がスイッチオンしないと、言葉をうまく使えないのです。ロンドンのデイビッドという少年はFOXP2遺伝子に異常のあるために、相手の話している言葉は理解できても、うまく話すことができません。このことは人間とは何かを知るために重要である。ソーク研究所では人間の脳はいろいろと活発な機能を持った遺伝子が80種類もあるといっています。
またチンパンジーでは子育ては母親だけで育てるが、人間の場合は父親や兄弟祖父母などの家族で育てる。その家族の間のコミュニケーション能力を発達させて行ったのが、チンパンジーと人間とが大きく分かれるもとになっているのだといいます。京大では河合雅夫氏始め、家族がヒトが人間になっていくにあたって大きな役割を果たしたといっている学者が多いのです。
6、遺伝子のスイッチオンのしくみはIPS細胞そのもの
京大の山中伸弥教授はIPS細胞の発見でノーベル賞を受賞しましたが、遺伝子のスイッチオンのしくみはIPS細胞のしくみそのものと同じです。受精卵からしだいに分裂して、5日間で100ほどになります。この段階ではどのような器官にもなりうるるのです。しかしその後遺伝子がスイッチオンしてそれぞれの器官ができてきます。ふつうはいったん各器官になったものは元に戻れません。ところが山中教授は、皮膚の細胞を取り出し、4つの遺伝子を組み合わせて働かせ、初期化させたのがIPS細胞ということなのです。ですからこれはどのような細胞にもなっていきます。
自分の細胞からつくる、IPS細胞は拒否反応を起こしません。今後は医療の面でIPS細胞の研究の発展により、飛躍的に医療が進むことでしょう。
7、過酷な場所で生きるように適応したアファール人 助け合い生活して発展してきた人間
エチオピアの北部のアファール地方は人が住むには世界一過酷な場所である。火山地帯で様々な有毒ガスに満ちている。また世界で最も暑いところである。
ここは人類で最古の化石アファール猿人(ルーシー)の発見されたところでもあります。ここに現在住む人たちは、身体の代謝機能が高く、体内に入った毒物を速やかに外に出してしまう能力を持っています。またちじれ毛は汗をため、頭の温度を下げる機能があります。また肌の色も黒く強力な紫外線から身を守ります。エチオピア人は血液型の割合でO型が4割を占めます。南米のヤノマミ族は100%がO型です。風土病にO型は強く、地域に血液型の面でも適応してきたのではないかといっています。
筆者が思うにかといって、現在よく言われる血液型人間学で血液型と性格をうんぬんするのは誤りです。
アファールに住む人々は、うまく焼いた石を使って、パンを焼き、ヤギの皮に水を入れ、蒸発熱により下がった冷たい水を飲む智恵を持っています。また彼らは塩湖にある塩をとって生計を立てています。また大切なヤギをさばいてみんなで分け合ったりして助け合って生きています。
人間は人体の中の塩分を調節して、体液が海と同じ塩分になるように調節する能力を持っています。人間は様々な環境の中で生き抜くために様々な遺伝子と其のスイッチを獲得してきました。人間は身体という器、文化、思想、社会などをつくってきました。その中でどのようにスイッチを入れどのように生きていくかは本人次第です。
いずれにしても他者のことを自分のように感じて助け合っていくのが人間の特徴ではないか。人と人とを結び付けていくことも遺伝子のスイッチの一つです。そういった面で、人間は進化を続けています。このように結論付けています。
筆者が思うに、人類発生後かなり長い間人が人と助け合って生きてきたのに、階級社会が発生して以後、他人を搾取し、傷めつけてきたのも人類の歴史です。このような人が人を搾取し苦しめる社会ではない人間社会が実現できないものかと思います。
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コメント
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とら猫イーチ様 スエーデン語を勉強されているとか、素晴らしいですね。小説を原文で読まれるのですね。大したものです。北欧諸国は人間を大事にするという点では、新自由主義の国である、アメリカや日本などとは大きな違いがありますね。
南米のボリビア、エクアドル、べネズエラなどやタイ新自由主義から脱して、貧富の差をなくしていこうとする政権ができて、成果をあげています。
日本も一般の人々の所得が上がって、本当の意味で野景気が良くなっていけばいいのですが。
投稿: こういち | 2013年2月20日 (水) 11時21分
>人が人を搾取し苦しめる社会ではない人間社会
原始共産社会では無い今日の世界では、なかなか難しい課題ですね。 でも、政治・経済の面で、一つのモデルとしては、スウェーデンやノルウェー、それにフィンランド等の北欧諸国が挙げられます。 何れの国も、人口が少なく、地方分権と代表民主政が機能し、環境重視の街造りに歴史があります。 また、政治家と国民の信頼関係が強くて、歴史ある国家として国際社会から尊重される存在です。
重税にも関わらず、社会保障の整った行政が手厚い施策を国民に差し伸べ、自然と動物にも保護の施策を整えている姿は尊敬に値する程です。 反面では、外国人移住者への差別や外国人犯罪の増加もあり、一部では重大な犯罪が発生したりしているのは御存じのとおりですけれども。
私は、昔からスウェーデンが好きで、スウェーデン語を少しばかり勉強しもしました。 今でも、時折思い出しては、辞書を引き引き勉強しているのですが、この国の人達は、大抵、普通に英語が出来るので、態々、スウェーデン語を勉強する必要も無いのですけれども。 最近では、例の、ヘニング・マンケルの警察小説に嵌ってしまい、またまた、語学の勉強をする破目になってしまいました。 どちらにしても魅力のある国ではあります。
投稿: とら猫イーチ | 2013年2月19日 (火) 22時50分