村上春樹 『1Q84』とカルト宗教 「多崎つくる~」の本と関連して 2017年更新しました
2017年10月6日、ノーベル文学賞、カズオ・イシグロさんが受賞
これにより、このブログも急にアクセスが増えています。
2017年のノーベル文学賞は、日系英国人のカズオ・イシグロさん(62)が受賞しました。
氏が書いた「日の名残り」が、英語圏最高の文学賞とされるブッカー賞を受賞していました。ノーベル賞を期待していたハルキストには残念でした。
2018年7月6日、松本死刑囚の刑が執行されました。地下鉄サリン事件から23年になります。また同時に幹部6人の刑も執行されました。まだ6人が未執行です。教団は2000年にアレフと改称、07年には「ひかりの輪」が分派し、15年にはさらに1グループが分派しました。 7月6日のブログのアクセスが急に増えました。(2018年7月6日追記)2013年5月、ブログ更新をしたわけ
『色彩をもたない、多崎つくると、彼の巡礼の年』を読みましたので、その感想をブログに書くことにしました。それには3年ほど前の2010年6月に書いた『1Q84』に関してのブログとともに読んでいただくと、わかりやすくなると思い、まず先行して以前に書いた2つのブログを更新いたしました。このブログは、3年前からずっとアクセスがあり、最近では急にアクセスが増えました。現在は累計で6000件以上になっております。
膨大な売り上げ、と各国への翻訳
『1Q84』(1,2,3 新潮社)を読みました。ともかくすごい人気で、書店のベストセラー10の中に3冊も入っていて、今も売れ続けています。佐竹は、歴史小説が好きで、司馬遼太郎や宮城谷昌光などは、その小説のほとんどを読んでいます。特に、自分でも後漢初期の小説『人、相食む』を書いているところなので、中国の歴史小説は、かなり読んでいて、人間学研究所の書棚にもたくさん置いています。しかし、これほど人気があるのだからさぞ面白いのだろうと、三冊まとめて買いました。三冊で6000円近いのでかなりの売り上げになるのでしょう。
途中で、男性の主人公の天吾が、編集者の小松から、小説はこのように書くといい、というのがあって、なるほどと、大変勉強になりました。この小説は「1Q84」となっていて、1984ではありません。1984年(昭和59年)とは、麻原彰晃が「オウムの会」を始めた年です。日本では中曽根首相の時代であり、国民の中流意識が90%に達した年です。一方で、夕食には半分の父親が食卓にいないという状況がありました。1980年代には末法思想がはやり、新新宗教と言われるものの信者が2600万人に達したと、文化庁が報告しています。このころは1999年に恐怖の大王が降ってくるという、ノストラダムスの予言を信じる人も多かったのです。
『1Q84』では、「ヤマギシ会」と「エホバの証人」と「オウム真理教」と思われる、カルト宗教がその話の中心をなしています。女主人公の「青豆」(これが苗字です)は「エホバの証人」の信者が母親で、母親といっしょに、各家庭を回っていましたが、途中で両親から離れます。この小説では、「証人会」となっています。
話の中心は、「さきがけ」という農業共同体(コミューン)を中心にかたられます。これは、「ヤマギシ会」がモデルです。ヤマギシ会は1974年に山岸巳代治が始めたもので、自分の財産を持たないでいわば原始共産性のような組織を目指しました。はじめは農民主体の穏健なものでしたが、1972年の連合赤軍事件や、浅間山荘事件のあとで、一部過激派が、この組織に入ってきました。小説では1976年に、武等派の「あけぼの」が分離します。その後、「あけぼの」は、本栖湖で、警官隊と銃撃戦を行うようになり、『1Q84』の世界ではそれ以後、警察官の制服が変わり、レボルバー式の拳銃から、べレッタの自動式けん銃に変わってということになっています。これはオウム真理教が、1989年に、坂本弁護士一家を殺害したことと、その後の1995年の「地下鉄サリン事件」に続く出来事に対応させています。
オウム真理教は1984年に、麻原彰晃がヨガの修行の会である「オウムの会」を始め、1987年には「オウム神仙の会」さらには「オウム真理教」となり、カルト集団化していきました。『1Q84』では、「さきがけ」のカリスマ教祖的 存在で、麻原彰晃を思わせる人物が出てきます。『1Q84』では、仮想世界で、その世界を支配する、リトルピープル(数人の小人)の意思を伝達する役割となっています。その教祖は、リトルピープルのお告げを伝達するために、10歳の自分の娘や、後二人の少女と性交しなければならないとなっています。その代わり、物を念力の力で動かすなどの超能力を持っているということになっています。
追記 無意識と神秘と不条理な世界
ここで出てくるリトルピープル(白雪姫と7人の小人のような) が、『色彩をもたない、多崎つくる~』の中でも、村上春樹氏特有の神秘的世界を動かすものとして扱われています。もう一つのブログにも書いていますが、本人が壁抜けして飛んでいくのか、幽体離脱して行くのか、本人が意識していないのに、遠く離れたところ、言ってしまうというのは「、『源氏物語』の六条の御息所の生霊が、本人の意識外に飛んでいって、人を苦しめる」のと同じパターンです。『色彩をもたない、~』の小説では、主人公の多崎つくるの意識外で、いわば生霊が高校の同級生のシロを強姦し、妊娠させるようなのですから。主人公の多崎つくるの夢?の中で、同級生の女の子シロ、とクロと性交し、シロの中で射精する寸前で、年下の男友達の口の中に射精し、それが時空を飛んでシロを妊娠させるということです。
2013年10月7日(月) このブログと2013年5月18日に書いたブログのアクセス増えました。ノーベル文学賞の有力候補のようで。
2013年10月、ノーベル賞の受賞者が次々と決まってきます。ノーベル文学賞の最有力候補に、村上春樹氏の名前があがっています。前から有力候補とされていましたが、なかなか受賞しません。それについては、受賞しないいくつかの理由があるとされています。
日本語で書かれているので、英訳されないと、読まれにくいと。「多崎つくる~」はまだ英訳されていないようです。
いわゆる「純文学」が受賞しやすく、村上春樹氏のような通俗小説的なものは受賞しにくいと。
また、筆者のブログでも書いていますが、未成年者との性交ということが、よく出てきて、倫理的に問題になるということなどでしょう。
いずれにしても、イギリスのブックメーカー(賭けや)である、ラドブロークスでは1番人気だそうです。はたしてどうなるでしょうか。
◎2013年5月18日
「『1Q84』における性描写ファンタジーにしてもおかしいと思ったこと」
http://koiti-ninngen.cocolog-nifty.com/koitiblog/2013/05/q84-1b81.html
つながります。ぜひご覧ください。
« 『1Q84』における性描写 ファンタジーにしてもおかしいと思ったこと 更新版 | トップページ | 人間学研究所 5,6,7月例会のお知らせ 8月泊まり込み研修会企画 通信63号 »
「小説、絵、映画など 芸術」カテゴリの記事
- 工作舎の本のご紹介2 『巡礼としての絵画』メディチ宮のマギ礼拝堂とゴッツォリの語りの技法(2023.09.05)
- 上野の都立美術館のマティス展を見ました。素晴らしいものです。ぜひご覧になってください。(2023.07.13)
- 60年前、私の学生時代、東京教育大学の学園祭で同じクラスの藤沢君と、「想像動物学」の展示をやりました。(2023.04.29)
- 宮城谷昌光氏の「馬上の星」(小説馬援伝)とブログ筆者の、「第五倫伝」の中の「馬援と馬氏」について(2023.01.29)
- 「国宝 東京国立博物館のすべて」展に行ってきました。帰りに上野精養軒ででランチ 12月18日、高校の展示会と国立博物館2度目の訪問(2022.12.18)
コメント
« 『1Q84』における性描写 ファンタジーにしてもおかしいと思ったこと 更新版 | トップページ | 人間学研究所 5,6,7月例会のお知らせ 8月泊まり込み研修会企画 通信63号 »
春樹の「1Q84」は私にはかつてなく面白い恋愛小説と読めました。天吾と青豆の互いの想いというものが、今では失われた純愛のようで、良い話でした。あのようでありたいものが胸に残りましたね。宗教の教団のことなどは別段今風として、別段どうこう思いもしませんでしたが。
三冊、一気に読めました。「ノルウェーの森」も良いと思いましたね。
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2012年6月23日 (土) 06時03分