「心のなかの勝負は51対49のことが多い」他 『こころの処方箋』4
このブログは2010年6月29日に書かれたものです。一部書き加えて更新いたしました。
第16章 「心の中の勝負は51対49のことが多い」
第15章 「一番生じやすいのは180度の変化である」
「心の中の勝負は51対49のことが多い」という文章が16番目で、「いちばん生じやすいのは180度の変化である」という文章は15番目の文章です。これは関連した内容です。そしてこのことを知っておくと人をみるときの心構えとして大変役に立ちます。筆者自身もこのようなことをいくつか感じました。
河合隼雄氏はカウンセリングで、中学生や高校生と話をすることがよくあったのですがそのありさまの一つを次のように書いています。
あるとき、無理に連れてこられた高校生で、椅子を後ろに向け、私に背を向けて座ったこがいた。このようなときは、われわれはむしろやりやすい子が来たと思う。この子は、お前なんかと話をしないぞという対話を開始する。「これはこれは、話す気がないらしいね」というと、「当たり前やないか、こんなことしやがってうちのおやじはけしからん・・」という具合に対話が弾んでいく。
こんなときに私が落ち着いているのは、心の中のことはだいたい51対49ぐらいで、勝負がついているからであると。この生徒も、カウンセラーのところなんか行くものかという気持ちと、もしかしたら自分のことをわかってくれるかもしれないという気持ちが共存していることが多いというのです。51対49というのはわずかの差なのだけれど、それは無意識のうちに沈んでいて意識するところは2対0のように感じられる。意識的には片方が強く感じられるが、実はそれほど一方的ではない。
51対49より50対50位になると、なんとかごまかすために、「大きい声を出す」人が多いように思う。わざわざ、高校生が椅子を後ろ向きにするのは、「お前などに話さない」という反面「なんとか助けてほしい」ほうが前面に出てきそうでたまらなかったのだろうと。こういうときに相手の大きい声につられて、ことらも大きい声を出して「こちらを向きなさい」などいうとせっかく逆転の動きが止められてしまう。もう話なんかするものかとなってしまう。
もっとも、人間は時に本当に「大きい声」を出さねばならない時があるので、厳密にいえば、「場にそぐわない大きい声」とか、「不必要な大きい声」を出すときは逆転の可能性が高いというべきでしょう。もちろん、前のだしたような態度も同じです。要は勝負を焦ることはないといっています。
その結果として、人間が変化するときには.もっともおきやすいが180度の変化だということになります。大酒のみの人が、ぴったり酒をやめる。感心していると急に戻ったりする。非行少年が急に変身して途方もなく「よい子」になる。周囲が称賛するとまた急に逆転が起こって「やっぱりあの子は悪い子だ」という。
自分の生き方を両親の生き方と比べてみると、そっくり同じかその正反対なことが多い。その方向を20度とか30度とか変えるのではなく180度変化をする傾向がある。そのようなものだと思っていれば、180度の変化が起きても、やたらに喜ぶこともないし、じっくり構えられる。前に書かれているように人の心は49対51ということが多いので、急激に変わることが多いのです。
そういうものだとゆっくり構えていれば、又もとに戻って悪くなったとしても、だまされたなどと怒らないでまたよくなっていくことを期待して、ゆったりと対していけます。本人も、よくなったときに、経験したことを生かして、次第に本当に定着して、よくなっていくものだというのです。このようなことは別にカウンセラーとして、人と相対していなくとも日常生活で、私たちがそういうものなんだーと、心得ていくかどうかで、ずいぶん人間関係がよくなっていくことでしょう。
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