「半沢直樹、視聴率42%、同時間放送の韓国ドラマ{馬医」の共通性と違い
日曜日の夜九時は、今もっとも視聴率の高い、TBSの「半沢直樹」と、NHKBSプレミアムの「馬医」が重なります。筆者のブログでは、「最近の韓国歴史ドラマ H25,8、30日版」(2013年7月8日で8,30更新) において、その時々にテレビで放送されている韓国歴史ドラマの概要を書いています。現在放送中のものは番組名に青で表示し、終了すると黒に変えています。ずいぶん前から、各局でどのような番組が放送されたがわかるようになっています。
「半沢直樹」と「韓国歴史ドラマ」の共通性
韓国歴史ドラマはBS放送で放送されるものが多く、以前はいろいろなものを見ていて、それをブログに書き、昨年の元日にはNHKの中にある、韓国KBS放送の生放送に韓国歴史ドラマ好きの代表の一人として出たこともあります。しかし最近は再放送が多くなり、見るものが減りました。その中で必ず、続けてみているものがイ、ビョンフォン監督の「馬医」と高麗王朝の「武人時代」です。武人時代は終了しました。
「半沢直樹」と「馬医」は同じ時間ですので、どちらかをビデオに録り、あとで、見ることになります。
「半沢直樹」と、韓国歴史ドラマの共通点は、敵と味方がはっきりしていてわかりやすいこと、主人公は悪しき権力により、これでもか、これでもかと痛めつけられます。しかしそれに耐え抜き、よき仲間も得て、敵の権力者を打ち負かします。皆さん書いているように、「水戸黄門」や「忠臣蔵」的なすっきりさを感じるわけです。
「半沢直樹」では、「くそ上司覚えてやがれ」「やられたら倍返し!」、「10倍返しだ!」という言葉に代表されます。日ごろ新自由主義のもと、生産性向上第一で、人間を者扱いし、一般の社員をバカにし、いじめている現状に対して代弁していってくれてスカッとするということです。正社員を減らし、非正規化し、結婚できないような低賃金でも文句も言えない現状。金持ちは高額品を買いこみぜいたくをしタックスヘイブンにお金を持ちこみ税金を払わない。ところが賃金をあげないうえに消費税まで上げようとする。いかに今の社会が非人間的であるかを示していますね。それへのせめてものうっぷん晴らしであり、反発なのです。おそらく今年の流行語大賞になるかもしれません。
一方「馬医」では、人間扱いされない奴隷である奴婢の主人公である、ペク・ファンフュンがついに王様の侍医にまで上り詰めるという話です。韓国朝鮮は日本と異なり、日本が統治するまで、奴婢(奴隷制度)維持していたというひどい現実がありました。奴婢は人間ではなく牛や馬よりも低く見られました。売り買いされる対象で、生死の権も持ち主が握っていました。この馬医や医女や妓女などや多くのものが奴婢でした。このドラマでも当然これから様々な困難や障害が待ち構えていることになります。
日本と、韓国朝鮮の政治とドラマの違い
日本における、勧善懲悪の基本は『水戸黄門』や『大岡越前』や、『暴れん坊将軍徳川吉宗』や、『松平長七郎』などに見る、いわゆる将軍家や、その下の正しきものに対して、悪大名や悪代官やそれと結託する悪商人などが悪いことをして、いわゆる正しいお上がそれをさばくという構造です。水戸黄門はこの印籠が目に入らぬかと徳川家の権威を示し悪代官や悪家老がひれふします。それが変わったように見えるのが明治維新ですが、それも権威が幕府から朝廷に変わったにすぎません。日本人には今でもお上が正しいというイメージがしみこまされています。悪いのは悪代官であると。傾向があります。日本では今でもお役人様やお上には頭があがらないという傾向があります。それに正面からたてつく共産党などは恐るべき「赤」であると教え込まれます。
ところが韓国・朝鮮では違います。高句麗、百済、新羅の三国時代から、新羅、高麗、朝鮮と王朝が変わり、そのたびごとに、前王朝のゆかりのものを皆殺しにしてしまいます。またそれぞれの王朝でも王が庶民のための政治を行わないと、民衆の反乱がおき、ついには王朝が入れ替わります。天は庶民の生活を苦しめるものには、罰を与える、あるいは変えるという考え方がありました。それは中国の儒教の革命の考えに基づいています。
西洋にはフランス革命のように民衆の蜂起で革命を起こし、悪政を倒し、自分達の政府を打ち立てるという伝統があります。
日本でも奈良、平安、鎌倉、室町、江戸幕府などと権力は変わりましたが、天皇がたとえ形式上でもその上に君臨するという形は最後まで変わりませんでした。だから革命ではなく明治維新なのです。日本においてはたとえ一揆があったとしても、お上にうったえるもので、韓国朝鮮におけるような、政府そのものを打ち倒そうとする庶民の反乱はほとんどなかったのです。
「半沢直樹」の場合は水戸黄門などのように、上の権威を当てにしません。どんな上司の悪も、真実を徹底的に調べ上げて、それを盾に、ぐうの音も出させないように追い詰めます。
池井戸潤氏とは
「半沢直樹」シリーズの作者である、池井戸潤氏について少ししかいてみます。池井戸潤氏は、1963年岐阜県の生まれで、ちょうど50歳でしょうか。慶応大学の人間関係学科と法学部を出て、元の三菱銀行に就職します。1995年の東京銀行との合併前に退職し、経営コンサルタントになりました。それ以後ビジネス書を書いたり小説も書き始めました。いろいろな賞を取った後「下町のロケット」で直木賞を受賞し、有名になりました。筆者のブログにも2011年8月6日付の「『下町のロケット』を読みました。会社が小さいからと言ってなめてんじゃねえ」は、かなりのアクセスがあり、2年近くたった最近の4か月間でも1500件ほどのアクセスがあります。中小企業に対する大企業の横暴さ、その中でも社員が結束で、大企業の圧力を押し返していくという痛快さがありました。長い間下請け企業の社長として、大企業の横暴さを身近に感じていた筆者は深く共感したものです。
「半沢直樹」の高視聴率
今回TBSテレビで10回放送される「半沢直樹シリーズ」は驚くほどの視聴率で注目されています。異業種交流会などの中でも当然話題になります。毎回視聴率が上がり、1から5回の関西編では、5回目の視聴率は関東地区で29%最高で33,6%。関西では32,8%で最高が38,6%だったそうです。6回目の東京編も前回と同じ29%の視聴率だったということです。ほかのブログによれば、こんなに人気が出るとは思わなかったため、急きょ回数を増やそうとしたが、忙しい主人公役の堺雅人氏に断られたそうです。放送終了後のキムタクによるアンドロイドの視聴率が急減してキムタクが恥をかくのではとか心配されています。
同時にやはり、池井戸潤氏の作品をもとにした「七つの会議」がNHKで東山紀之主演で土曜ドラマとして放送されています。
「堺雅人」などにみる、配役のうまさ
このドラマの大ヒットは主人公の半沢直樹を演ずる堺雅人氏の好演によるものが大きいでしょう。同じ時期にNHKから放送された同じ池井戸潤氏の「七つの会議」はそんなに話題になりませんでした。堺雅人さんは、いろいろな役をこなし、それぞれで大人気を博しています。筆者としては「塚原卜伝」が印象に残りました。今までの剣豪役は筋肉隆々としていかにも力のありそうな”剣豪”というイメージの俳優がなりました。しかし堺雅人は一見きゃしゃな優男に見えます。何かの時に、はにかんだような表情を見せます。それが私たちに、何か身近な印象を与えるような気がします。ところが、実際には大きな力を秘めているということ。女性が多く見ているというのは堺雅人氏の魅力によるものでしょう。ほかの配役も、奥さんの花を演ずる上戸彩もかわいいし、敵役の大和田専務を演じる香川照之もさすがの芸達者ぶりが見られます。
この「半沢直樹シリーズ」の原作は『オレたちバブル入行組』(2004年文芸春秋社、2007年に文春文庫657円+税)が、前半の関西編のもとになり、『オレたち花のバブル組』(2008年文芸春秋、2010年文春文庫657円+税)が後半の東京編のもとになっています。シリーズ3作目は『ロスジェネノの逆襲』(2012年刊週刊ダイヤモンドで連載中)です。これも早々にドラマ化されるでしょう。筆者も早速に購入して、面白いのでそれぞれ1日で読んでしまいました。何かこのシリーズで170万部がうれたとか、これからさらに売れるでしょうね。それから原作を読んでドラマと比べると、いろいろな点で違いがありました。週刊誌の中には違いを一覧表にしたものがあります。(FLASH 9月 10日号 ドラマのここがリアル、ここがウソ」)
印象に残る違いは、主人公の父親が首つり自殺自殺したとなっているが原作では、自殺していない。融資を断り自殺のもとになった融資担当者が大和田専務となっているが原作では違う人物。半沢直樹が剣道をやるというのがあるが、原作にはない。東京編の伊勢島ホテルの専務が男性ではなく女性の倍賞美津子に変わっていることなのです。また原作では国税局の査察官が横柄な態度をとっていますが実際にはそういうことはないそうです。変更はいずれも内容をもっと強烈に印象付けるためでしょう。
「本とドラマは別物」 池井戸潤氏
WEBの中で、池井戸潤氏の特別寄稿があります。要旨を書きますが、「僕は、脚本に注文をつけていない。小説は人間の内面を書くものだ。しかし爆破シーンなどはいくら、字で書いてもそれを直接あらわすことができない。原作を提供したら、後は製作者に任せるしかない。したがって必然的に作品と原作とは別物になる。評価があるとすればそれは製作者に帰すものである。」
詳しくは下記をご覧ください。
http://www.diamondo.jp/articles/-/38364
また現実社会では、「半沢直樹」のようには行かず、原作者の池井戸潤氏は『半沢直樹の真似をしない方がいいですよ』といっています。{AERA]にて。
まあ明日から後4回の放送があります。筆者は原作を読みましたが、ドラマは違いますから、楽しみにして見ていきたいと思っています。みなさんもぜひご覧ください。
追記 2013年9月26日 毎日新聞から
9月22日に放送されたドラマ、「半沢直樹」の最終回の視聴率が関東地区で42,2%(関西地区45,5%)だったことがビデオリサーチの調べで分かった。ドラマの視聴率が40%を超えたのは2011年の日本テレビの「家政婦のミタ」の最終回(関東地区で40%)以来で歴代2位となった。過去の一位は「積み木くずし」の45,3%である。「半沢直樹」は初回の19,4%(関東地区)から一度も落ちることなく上り続けました。
「半沢直樹」の最終回では、大和田常務が取締役に落ちただけですみ、逆に大きな功績を上げた半沢直樹が証券会社への出向ということになりました。すなわち原作通りでした。おかしいではないかという声も放送局に来たそうです。
しかし、原作どおりにしないと、次の池井戸さんの続編の小説「ロスジェネの逆襲」につながらなくなってしまいますから。今度は証券会社を舞台にした続編が望まれます。
最近のコメント