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2013年10月21日 (月)

日経新聞のウソ 日本の農業保護は手厚い、農業保護は低所得者ほど負担と

はじめに

 このところ、10月17日の第58回実用的人間学例会で、「食の危機と多国籍企業」というテーマでお話しをしたのと、20日の『第65号人間学ニュース』ー10月の制作と送付などで忙しく、ブログの更新が遅れました。

カテゴリーは「原発、エネルギー、食の問題」とします。

日経新聞の主張は正しいのだろうか

 2013年10月21日(月)の日経新聞朝刊の記事の、エコノフォーカス、というところの記事に 「米などTPPの重要5項目 農業保護一人2万円負担、低所得者ほど重荷」という見出のものがありました。民間試算とし、記事は山崎純という記者の署名入りです。以下ほぼ記事の内容をそのまま転記しました。

 また別資料として、農家「保護率」日本は3位というグラフをのせています。これはOECDの推計で日本は平均の3倍である、というのです。

 またその隣の記事にはEUが経済連携協定で「TPPと同待遇を」ということを要求しているという記事がありました。TPPが締結されれば、EC諸国も当然、日本に食糧関係の関税引き下げを求めてくることでしょう。

 さて、記事によれば、米などの農作物の重要5品目を日本は関税撤廃の例外とするように各国に求めているが、関税で日本国内の価格が高止まりし、家計に「隠れた負担」を強いていることはほとんど論じられていない。民間試算では国民一人当たり年2万円以上。来年4月の消費税率引き上げによる負担増を上回り、低所得者ほど重荷になっている、というのです。 

 海外では農業規模が大きく生産が効率的なため、多くの農作物が日本より安い。輸入砂糖が1キロ80円。同じ品質の国産が200円なら差額の120円は「国内農家を守るために国民が払っている余分なコストにあたる」(日本経済研究センターの猿山純夫研究本部長)。日本が守っている5品目は国内産が高い。これは農業保護のための国民負担である、というのである。この価格差から算定した一人当たり負担額は年24000円である。これは低所得者ほど負担が大きい。キャノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「低所得者の財布からひそかにお金を抜き取っているようなもの」として関税の撤廃を訴える。

 静岡大の土井名誉教授は「関税が撤廃されれば家計は負担が減って、新たな消費が生まれる」が農機具メーカーなどは打撃を受けると。しかし、交渉では5項目も加工品は関税が撤廃削減される方向で、「聖域」を完全に維持するのは難しい状況だ。関税撤廃に伴う収入減を政府が税金で補償するのが所得補償制度で、TPPで自由化した農作物に導入される公算が大きい。税負担は関税と違って富裕層のほうが重いため、日経センターは「所得補償のほうが低所得者の負担は軽くなる」と結論づけている。

農家「保護率」日本は3位 、OECD推計、平均の3倍 

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日本の農家の収入の半分以上は政府の支援である。経済協力開発機構(OECD)は各国の農業収入のうち、関税や補助金といった保護策による収入の割合を算出している。日本は2012年で55,9%。前年より4,5ポイント上がり、OECD平均(18,6%)の3倍だ。21国の中で日本の保護率は3位である。OECDは日本の保護策の中身で関税など「貿易をゆがめる政策」は80%超で、平均を大きく上回っている。「政策を目的を絞った補助金に転換すべきだ」と訴えている。 

★ 聖域として守ると約束した自民党の公約を破り捨てて、TPPで、安い食品をどんどん輸入したほうが、低所得者のためにもなるのだという論理です。

上の記事ではウソと重大なことが抜けています。以下にで説明いたします。 

実用的人間学研究会例会で話したこと   

2013年10月の実用的人間学研究会では、筆者が「食の危機と多国籍企業」というテーマでお話しをしました。

 例会には16人の会員の方が参加されました。そして最初に18ページの資料を配布しました。最初の30分間は「モンサントの不自然な食べ物」と「世界が食べられなくなる日」という現在日本で上映中の映画の予告篇を見ていただきました。また、人間学研究所で購入した「キング・コーン」「フード・インク」「ありあまるごちそう」 の3本のDVDの予告編。そのほかに「チキンナゲットはなにから出来ているの」も見てもらいました。資料にはそれぞれの映画の説明をのせました。 

 筆者はそのすべてを見ましたが、アメリカのモンサントをはじめとするアグリビジネスの恐ろしさを痛感いたしました。本当は時間をかけて見てもらいたいので、DVDは希望者に貸し出し、見てもらうことにしました。

 みなさんに配布した資料には、

食の戦争 米国の罠に落ちる日本ー

 アグリビジネスの“怪物”による侵略と収奪』 鈴木宣弘

  2013年8月刊 710円+税 文春新書

遺伝子組み換え企業の脅威 モンサントファイル』

 エコロジスト編集部 2012年 増補版』 1900円+税 緑風出版

自殺する種 アグロバイオビジネスが食を支配する』

 2006年 安田節子 720円+税 平凡社新書

の3冊を元に、資料を作成、添付し、ご説明しました。

1、「食の戦争」

 著者の鈴木宣弘氏は元農林水産省に勤務し(現在は東大教授)、様々な具体的なデータでTPPの危険性を指摘しています。さまざまな書評が出ていましたが、研究会では10月6日の毎日新聞朝刊に掲載された松原隆一郎氏の書評をそのまま資料としてのせました。

 松原氏の書評によれば「TPPは「外交交渉」という紳士的な語感から連想される生ぬるいものではなく、ズバリ「食をめぐる戦争」、「今だけ、カネだけ、自分だけ」の利益を追求する米国の巨大企業が認可官庁や研究機関をも総動員し、経済学の初歩の理論も悪用して日本の食を価格競争に巻き込むものだ、そう警鐘を鳴らしている。

 「初歩の論理」とは、次のようなものです。すなわち、農業保護のせいで、貿易交渉では製造業が譲歩を強いられ、農家自体も弱体化・高齢化している。農業保護は百害あって一利なく、規制を緩和し貿易を自由化すれば競争力がつくし、消費者もより安い商品を選択できる。貿易量が増えれば農産物の価格が安定、危機にも備えられる。「食の安全」も各国で基準を決める自由が保障されるはずだ、と。

 本書の読みどころは、具体的なデータを紹介しつつ、以上の論理を突き崩し、交渉の狙いを痛快なまでに暴く点にある。

 その1日本の農業は(聖域とされる米、乳製品など1割の品目を除き)激しい競争にさらされており、世界のほうが過保護である。日本の平均関税率の11,7%は大半の国より低く農業生産額に占める予算にしても日本の3割弱に対し、フランスで4割強、米国で6割。多くは政府から農家への直接支払である。。日本が(農業を)5兆円規模で保護していると叩かれるか。からくりはOECDが公表しているPSE(生産者保護推定額)にある。スーパーで国産のネギひと束が158円、外国産が100円で売られているとして、消費者が国産を選べば、品質で選んだにもかかわらず差額の58円が「非関税障壁」として保護額に算入されてしまうのだ。一方米国は、国内販売にも援助しているという理屈で否定しているが、農産物の輸出にWTOで禁止されたはずの輸出補助金を実質一兆円規模で拠出している。まるで丸腰で武装勢力と戦う様なものである。

★ これが、上記の日経新聞の表で農家の「保護率」が、日本が3番目に高いといわれる理由である

★ 筆者の注 映画「キング・コーン」を見ると大学生二人が試しに作った、トウモロコシは原価を引くと赤字となってしまう。そして政府の補助金でかろうじて、黒字になる状態であることを示しています。日本の大豆は1955年まで41%あった大豆自給率が93~95年には2%にまで落ち込みました。(2006年は5%に)1961年の輸入自由化と、72年以降の関税ゼロ化により、アメリカでは巨額の補助金を受けて生産原価より安く輸出し、国産大豆の3分の一以下の価格にしてしまった。これで日本の大豆は壊滅状態になりました。トウモロコシなども同じ状況なのです。地場の農業が壊滅したとき、独占状態になると値段を釣りあげるというのがアメリカの常とう手段である。それにより、発展途上国で食べ物が急上昇し、買えなくなり、餓死者が出る大きな騒ぎとなりました。

 2001年に日本は遺伝子組み換え食品の表示が義務づけられましたが、味噌は表示義務があるが、しょうゆなどについては表示義務がないのです。TPPでは、農作物の遺伝子組み換え食品の表示義務廃止を要求する可能性があります。なぜならアメリカの首席農業交渉官は遺伝子組み換え(GM)種子のトップメーカー、モンサントのロビイストだった人物であるからです。

その2。日本では農協がもっぱら過保護の巣窟視されるが、世界ではさらに大きな流通・小売りの大型化が進んでいる。農協をつぶしても更なる巨大スーパーが支配するだけである。

その3.「自由化」時は関税という経済的規制のみにかかわるはずなのに、食の安全基準など社会的規制にも要求が及んでいる。

 すでに米国から輸入しているトウモロコシ。小麦大豆など年間約3100万トンのうち、GM作物は約1700万とに達している。日本は遺伝子組み換え作物の輸入大国である。

日本は貿易戦争の一方的被害者ではない。米国から見れば日本は国をあげて「クルマ戦争」をしかけ基幹産業を瓦解させた。政府にとってTPPは製造業のために農業を切り捨てる策なのである。だが農業抜きの立国はたして可能なのか。非GM作物を選択する自由すら奪われて、食をすべて輸入するのはまっとうな先進国ではない。米(コメ)の関税率を半減させるなど農業も改革の余地はあるが「食の戦争」は、何より社会の破壊である。

筆者の見解

 本来、もっと自国の農業生産物(食糧自給率)の比率を上げるべきである。極めて重要な食を貪欲な多国籍企業が牛耳るアメリカに任せてはいけない。

食にかかわる関税を引き下げて、外国の安い食物をどんどん輸入してくれば、低所得者にはいいのではないかというのが、日経新聞の言い分である。例えば、アメリカや中国の米がどんどん安く出入ってきたらどうなのだろう。中国やアメリカの米は日本に比べ安全基準が低く、それも非表示になる可能性がある。中国でもお金持ちは中国の米を食べないで安全な日本の米を買うといいます。米の関税を下げるとアメリカや中国の安いコメが入り日本の米作は大豆のように滅びる可能性があります。そうすると、遺伝子組み換えなど様々な危険性をはらんだ米をほとんどの日本人は食べるようになります。お金持ちだけが少なくなった日本の米を食べることになってしまいます。

 日本でもすでに単位面積当たりの農薬散布量は世界一です。世界的なネオニコチノイド農薬の散布でミツバチが絶滅しようとしています。でも三ちゃん農業といわれる農業は日本の里山など自然を守る大きな砦です。政府がいう日本の農業を集約化して単品のものを大規模に作る農業は、どうあがいてもアメリカやオーストラリアにはかないません。オーストラリアでは日本の農地の1800倍、アメリカでは150倍です。さらに近代的大規模農業はアメリカでも破綻しつつあります。(大量の水を必要とする。農地の砂漠化、塩害、などで農地は荒れ果てています)

 なにしろ、モンサント社を告発した映画をみると、その恐ろしさに身の毛もよだつようです。モンサントは枯葉剤のダイオキシンやPCBで世界を汚染してきました。そしてまた遺伝子組み換えした、モンサントが作った除草剤に耐性を持ったトウモロコシや大豆を売っています。モンサントはたった3カ月のラットの実験で安全としました。モンサントの社員がたくさん入っているFBAはそれを認可しました。しかしラットを2年飼い続けた結果ほとんどがんで死んでしまった、ということを示した映画『世界が食べられなくなる日』を見るとその恐ろしさが分かります。モンサントを告発した科学者はモンサントの圧力でみんなやめさせられてしまいます。アメリカの食の安全を管理する役人はほとんどモンサントの社員です。出たりは入ったりで回転ドアと言われます。また歴代大統領が全面的にモンサントを支援しています。

 ★ 書き上げて、よく見直さないで、公開してしまいました。後で見直しましたら、転換ミスばかりでした。書き直していますがその後、お恥ずかしい次第です。申し訳ありませんでした。

 これについては筆者のブログがあります。

 2013年6月14日「こういちの人間学ブログ」

『モンサントの不自然な食べ物』、『世界が食べられなくなる日』原発との関連

http://koiti-ninngen.cocolog-nifty.com/koitiblog/2013/06/post-4d5f.html

★ 実用的人間学研究会例会で配布した資料の中から、いくつか表を示してみます。

以下は『食の戦争』より

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 日本の農産物平均関税率はすでにかなり低いということがわかります。日経新聞の農業保護率は上記の文章のその1にもあるように、あたかも関税率も高いと錯覚させるマヤカシである。

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日本の農業生産高は決して低くない。また日本の生産高に占める政府予算高はかえって低いのである。(日本 27,8% アメリカ55,3%)

下図は『食の戦争』から、すでに世界中でいかに遺伝子組み換え作物の割合が多いかを示しています。

またその下の図は、アメリカの米が残留農薬基準が日本に比べ極めて高いことを示しています。米の自由化をすすめればこのような米が国内にたくさん入ってくることを示します。

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上図は『自殺する種子』からのもので、アメリカの多国籍企業は地場の農業を壊滅させた後、価格を吊り上げることを示しています。

 ○まだ、例会でお話ししたことのわずかしかかけていません。また書き加えていきます。

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