小説『人相食む』における故事一覧 『後漢書』はおもしろい(その1)
追記:2014年6月6日、その1とその2とともに載せなおしました。1と2は分ける必要がありませんでした。
このブログははじめ2011年に書かれたものです。
右から中華書局版全12巻(中国)。あとから出版された 真中が岩波版 左が汲古書院版です。ほぼ同時に日本で全訳がだされました。汲古書院版は現代語訳がついています。
私が、書いている小説『人相食む』では、正史『後漢書』と王充の『論衡』の資料などをもとに書いています。『後漢書』は後漢の班固の書いた『漢書』に比べて劣っているとみられていました。『後漢書』は様々な人が書いています。その中で最も有名なのが宋の范曄(ハンヨウ)の書いたものです。『後漢書』は『漢書』に比べ、和訳されたのが大変遅く、2001年に岩波版と汲古書院版が相次いで出されました。それまでは、私は中華書局版を買って自分で訳しました。ただ部分的には、「光武帝紀」とか「第五倫伝」などの訳はありました。
『後漢書』は大変面白い内容で、日本の知識人で読んでいる人は昔から多かったのですが、和訳がなかったためでしょうか、今までの日本ではその時代の小説はあまりありませんでした。『三国志』関連の小説に比べて極めて少なかったのです。宮城谷氏の『草原の風』(主人公は光武帝、読売新聞連載中)などこれからだんだんできてくるかもしれません。(現在、上中下で発売されています)
『後漢書』には今私たちがよく使う、故事やことわざがたくさん入っているのです。私の小説では、それを王充の『論衡』の話とともに取り入れました。
以後、その内容について書いていきます。
「虎穴に入らずんば、虎児を得ず」 班超は、思い切って敵陣に潜入して勝利した。その案が危険だといったものに対していった言葉。班超は班固の弟です。
「井の中の蛙、大海を知らず」「井底(せいてい)の蛙」 すでに昔から言われていた) 班超が「臘西(ろうせい)」の支配者は井の中の蛙で、世の中のことが全く分かっていないといった
「百聞は一見にしかず」 漢書に書かれた言葉だが、班超が西域攻略のときに発した言葉
「敵はわが眼前(中)にあり」 馬援は敵の陣地や人のありようを、米粒を積んで光武帝に見せた。それを感嘆して光武帝が発した言葉
「臘(ろう)(西)を得て、蜀をのぞむ」 光武帝と馬援のはなし、臘西を占領すると今度は次に地つづきの蜀が征服したくなるという話
「かくしゃくたるかなこの翁は」 年老いているから、もう戦争に行くのは無理ではないかという光武帝の言葉に、馬援は颯爽として馬を乗りこなして見せた。それを見て光武帝がたたえた言葉
「薏苡(よくいーハト麦のこと)のそしり」 馬援が南方征伐に勝利してかえって来た時に健康のために、ハト麦を車いっぱい積んできました。それを金銀財宝を私物化していると、ありもしないことを、讒言したたとえです
「中庸、まことは天の道なり、これを誠にするは人の道なり」 光武帝の政治の基本理念です。バランスのとれた誠実な政治を光武帝はめざしました。
「柔よく剛を制し、柔なりといえどもかならず強し」 老子の言葉からとってきた言葉ですが、私(光武帝)の政治は、強引な政治を行わず、優しい、柔和なものにします。しかしそのような政治のほうが力を発揮するものです。
「元元(げんげん)Iをもって首となす」 光武帝の基本的な政治理念。民衆こそが最も大切である。この考え方を明帝以後の皇帝に徹底させ、かつてない善政が行われました。
「天地の性、人を尊しとなす」 光武帝の詔勅に現れた言葉。この世の中で人ほど大切なものはない。人間を大切にする政治を行わなければならない。奴隷解放の詔勅に用いられた。
その2 に続きます
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