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2016年7月24日 (日)

「第五倫伝」-後漢初期の人間学 第1章 第五倫、一族を守る (1)

「第五倫伝」-後漢初期の人間学
 王 伯人
第一部 後漢王朝成立と第五倫下積み時代
第1章 第五倫、一族を守る 目次
赤眉の来襲
恐るべき強弓と強弩
武器と戦法の違いが戦いを決めた
第五倫と第五雄
李秀の昔語
ふたたび赤眉の大軍が迫る
第五倫とその時代
第五倫の生い立ち
赤眉の来襲
 からからに乾ききった大地、9月の紺碧な晴天。はるか向こうから土ぼこりがせまる。ここ数か月雨が降らないのだ。見張り役に望楼にいた若者が直ちに鐘を鳴らす。それぞれに仕事にいそしんでいた一族は一斉に営保(砦)にかけもどってくる。
「はやく、はやく」
望楼で見張りをしていた若者が大声で叫ぶ。
その声を受けて、営保の長と思われる青年が、砦全体を見渡せる望楼にゆっくりと上がっていった。その姿はまだ驚くほど若い。
「兄さん、賊だ」
若者が指さす。
砦の長たる青年は、うなづいて、砦中に響き渡る大音声をあげた。
「早く砦に入れ」
・・・
「全員集合したな橋を上げよ」
「全員配置につけ」
「女子どもは、安全なところへ」
きびきびと指示を示すものは、まだ初々しさのなかに、きりりとした、尊貴さと、すでに長者の風があるような若者である。そしてみな見事な統制に元に、指示にしたがっている。
「こんどは赤眉だ」
望楼の若者が声を上げた。すでに営保は何度もいろいろな賊に襲われているのだ。
 賊はみな眉に赤あかと顔料を塗り、赤い鉢巻き、赤い旗、すべて血のように毒々しい。
全員騎乗だ。その数50人あまり。
 守る砦は当時営保とよばれた。けわしい土地を利用し、土塁を積み重ね、後方はけわしい崖。砦の前には堀が掘られている。前面はゆるく傾斜し上から見下ろすようになっていた。土塁の上には人が通れるようになっており、さらに胸の高さまで土塁は高くなっていた。そこから矢を射ることができるようになっていた。
 望楼はとくに頑丈に石で作られ、中を階段で上がれるようになっていた。望楼の下は食糧倉庫になっていた。
 営保の中にはおよそ七十人余り、近くに住む人たちも営保に助けを求めてきたのである。しかし半数は女子どもである。襲われた場合、降伏して貴重な食物や財物を提供して、下手をすると、餓死するか、あるいは盗賊の仲間になっておたづねものになるか、死を賭して、賊と戦うかである。当時、多くのものが賊に加担した。賊と戦って殺されるか、どちらにしても地獄であった。
 ひげ面で顔に傷があり、いかにも多くの人を殺めてきたという、凶暴な面相をした狩猟がどら声を張りあげる。
「門を開けて、降伏しろ。おとなしく食べ物や金めになるものをだせ。それとも抵抗して皆殺しになりたいか」
 副首領と思われる肥満体が、髪をつかんで生首をみせつける。
「こいつは、おとなしく降参しないからこのざまだ。降参すれば命まで取らない。お前たちのためだ門をあけろ」
 と、肥満体。子分たちもいっせいに。
「皆殺しになりたくなかったら早く降伏しろ」
と、はやし立てた。
 賊はこんな小さな営保は少し大げさにおどせば、簡単に落とせるものとたかをくくっていた。今までがそうだからである。
 一族をたばねる若者は、一人砦の土塁の上に立って張りのある大声で答える。
「おまえたちも、もともとまじめに働く良民だったはずだ。われわれをおそわず、悪徳地主や官軍をおそうべきだ。わたしは、お前たちを殺したくない。素直に帰った方が身のためだ」
 賊たちはどっと笑って、
「貴様のような若造が大口をたたきやがって、後で許してくれって泣きついても、もうおしまいだぜ、さっさと門を開けろ」
「そうだ、降参するなら今のうちだ」
賊はなめきって近くによって来る。
 その若い、砦の長は油断させ、堀にほとんど賊が接するまでに、近づくまで敵をひきつkた。
 「よし撃て」
と手先を敵に向けるとともに、かねてからの打ち合わせ通り同時にいっせいに、土塁の陰に身を潜めていた一族が、あるものは弓を、あるものは弩(いしゆみ)を一斉に発射した。40数本の矢が いっせいにに降り注ぐ。軽い弩は老人や女性など力のないものでも使え、ねらいは正確であった。若い砦の長の大弓は目にもとまらぬ速さで次々に射る。
 14,5歳の元服がすんだものは戦闘に参加した。普段から木でつくったいろいろの大きさの盾を作り、その盾は、支えがあり、その盾をもって隠れて、移動すれば矢にあたらないようにした。その盾に隠れて10歳以上の子どもや女性も矢を運んだり、補給の手伝いをした。望楼にいた少年は、あちこち駆け回って指示を伝える。
 「いいか、馬を狙え、的が大きいし、敵は混乱する」
賊たちは馬を射られ、馬が暴れて落馬して堀に落ちるもの、馬にけられるものなど、けが人が続出大混乱となった。
 思わぬ攻撃に、おどろきあわてて、
「ち、しまった油断した。もう容赦しねーぞ」
「皆殺しにしてやる」
と、口々にさけびつつ、倒れた人を引きずり、馬をそのままに、いっせいに後退した。
 砦の人たちは、ほっと息をついた。
 こんどは本格的に襲ってくる。本気になって攻撃して来ればその力はあなどれない。
なんといっても敵は、さまざまな戦いをへてきた荒くれどもである。
 手練れの戦闘員は敵の方がはるかに多い。そう簡単には引き下がらない。
こんどは体制を整え、襲ってくる。さていかなることに相成りましょうか。
(1)
コメント
 小説の名前を、結局、一番初めにつけた、小説の名前、
「第五倫伝」後漢初期の人間学 に戻しました。

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