アフリカ外 最古現生人類がイスラエルで発掘 ネアンデルタール人と重なる期間長く
2016年1月26日の日経新聞に、「アフリカ外 最古現生人類 イスラエルで化石発見 5万年以上遡る」という記事が載りました。
毎日新聞でも同じような記事が載り、各紙で報道されたと思います。
アフリカ以外では最古となる現生人類の化石をイスラエルの洞くつで発見したと同国テルアビヴ大などのチームなどが26日付の米科学誌サイエンスに発表した。19万4千から17万7千年前のものとみられ、アフリカを除いた「最古」が5万年以上さかのぼることになる。
アフリカのエチオピアでは最古の現生人類とみられる約20万年前の化石が見つかっており、今回の発見は人類の進化や移動の謎を解き明かす手掛かりになりそうだ。
チームはイスラエルのミスりヤ洞窟で見つかった成人の上顎周辺や歯列の一部、近くにあった火打石などの年代を複数の手法で推定。歯茎から出ている「歯冠」が高く、幅が狭い点などが古い人類には見られない現生人類の特徴だと判断した。
アフリカ最古の現生人類とともに見つかったものと似た石器も発見したという。
ただ,諏訪元(げん)・東京大学教授(古人類学)は、「現生人類と言えるだけの特徴持っていたかはわからない。( (上顎だけでなく)頭骨全体が見つかるのを待ちたい」と慎重な見方をしている。
毎日新聞の記事では、日経新聞の記事と内容は同じ
1月26日の赤旗では、前半の記事は同じ
~。現生人類は20万年前ごろアフリカで誕生し、その後世界に広がったと考えられています。現生人類が初めてアフリカを出た時期については8万年前~5万年前とされていますが、地球が温暖化しサハラ砂漠が緑に覆われた12万年前ごろ現在のイスラエル周辺に一時的に進出しました。地球が再び寒冷化してからイスラエル周辺の現生人類の痕跡が消え再び現れるのは5万年前あたりからでした。
◎「地球の温暖化でサハラ砂漠が緑に覆われていた「」、というのは素晴らしいことではありませんか。
今回の研究結果について、研究グループは現生人類の誕生が少なくとも30万年以上さかのぼる可能性や、現生人類の世界各地への広がりについての現在の考えを見直す必要性について言及しています。
実際、2017年6月には、西アフリカのモロッコで見つかっていた人類の化石は30万年前の現生人類だという研究成果が発表されました。しかし、その見方に否定的な見解も示されており、今回の研究結果はさまざまな議論を呼ぶ可能性があります。
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インターネットでは、BBCニュースの内容が詳しくのりました
国際研究チームはこのほど、イスラエルで2002年に見つかった化石が、アフリカ以外で最も古い現生人類(ホモ・サピエンス)のものだと分かったと発表した。
研究の共同筆頭著者、テルアビヴ大学のイスラエル・ヘルシュコヴィッツ教授はBBCニュースに対し、今回の発見によって現生人類の進化についての発見に根本的な修正が迫られると語った。
ロンドン自然史博物館のクリス・ストリンガー教授は、「今回の発見は、現生人類は13万年以前にはアフリカにしかいなかったという、長らく信じられてきた限界を打ち砕いた。新たな年代決定は、もっと古いホモ・サピエンスでさえ西アジア地域で発見される可能性を示唆している」と語った。
新たな年代決定の証拠が出たことで、現生人類とすでに絶滅したほかのヒトの 種との間に、何万年にもわたる交流があった可能性が示されている。また、従来の説よりも早い時期に人類がアフリカから旅立っていたことを示唆する、最近の発掘成果や遺伝子研究の成果とも一致する。
2002年にイスラエルのミスリヤ洞窟で見つかったあごの一部を分析した。歯が8本残る骨はその特徴から、同時代に生きていた現生人類以外の種ではなく、現生人類のものだと指摘されていた。
研究者たちはコンピューター断層撮影によって3Dのバーチャル模型を作り、ほかの現生人類の骨と比較、歯冠の下の組織をスキャンし、現生人類だけにみられる特徴があるのを発見した。
これまでアフリカ以外で最も古いとされてきた人の化石は、イスラエルにある、発掘現場のスクールとカフゼーで見つかった9万年から12万5000年前のものだ。
ミスリヤ洞窟で発見された化石は、その地域で25万年から14万年前にかけて使われていた石器のルバロワ型石核と同じ地層で見つかっている。もし。現生人類がその地域で生きていたこととルバロワ型石核とが、関連付けられれば、現生人類が、アフリカから出た時期は、ミスリヤ洞窟の発掘物の年代よりも前の可能性もある。
最近までは、現生人類がアフリカから出発したことを示す早期の証拠はレバント(東部地中海沿岸地方)に限定されていた。しかし、過去数年、中国湖南省の道県や中国南西部の広西壮族(チワン族)にある智人洞窟で発見された現生人類の化石8万年から12万年前のもので、従来考えられてきたよりも早い時期にユーラシア大陸で分散していた可能性が示されている。
さらに、アフリカから出たヒトとネアンデルタール人の間で早い時期に混血が起きていたことが遺伝子研究から判明している。
21万9000年から40万年前のネアンデルタール人との混血を示す、ドイツで見つかった骨に関する研究論文が昨年発表されている。また2016年には欧州の研究チームが、約10万年前のシベリヤのアルタイ地方で、アフリカからやってきたヒトとネアンデルタール人との混血が起きていたことを示す証拠を見つけたと発表した。
ヘルシュコビッツ教授は、「新たな証拠の断片があまりに多くて、どこに当てはまるのかわからなかった」と語った。
「新しい発見があったことで、すべての断片がつなぎ合わされた。(アフリカから)出た時期は、ミスリヤ洞窟で見つかった石器と同じ時期の25万年前までさかのぼれる可能性がある」
しかし、ミスリヤ洞窟から示唆される、早い時期での現生人類のアフリカからユーラシア大陸への分散の結末は、絶滅だったとの見方が一般的だ。遺伝子学及び考古学研究では、アフリカ以外ににいる現在の人類の祖先がアフリカから出たのはわずか6万年前だったとされる。これまでのDNA調査で、6万年前より前に我々の祖先がアフリカから出ていたことが示された例はほぼない。
これは、現生に進化した時期についても、あらたな発見がされている。モロッコで見つかった初期の現生人類のものとみられる化石の年代特定で、31万5000年前という研究成果が昨年発表された。
これは、現生人類の始まりを20万年前とする一般的な見方よりも大幅に古い年代だ。従来の説は、遺伝子学研究やエチオピアのオモで出土した19万5000年前の化石などをその証拠とするが、今後の発見によっては年代がさらに早められるかもしれない。
ネアンデルタール人について 「絶滅の人類史」更科 功 NHK出版新書 2017年12月
30万年前にホモ・ハイデルベルゲンシスからネアンデルタール人的な化石が出土する。そして12万5000年前の温暖な間氷期に入ると、ネアンデルタール人の遺跡は急増する。約7万年前に寒冷な時期になると、遺跡は地中海沿岸まで南下し、その数も減少する。約6万年前に温暖化が始まると、遺跡数は再び増加しヨーロッパの北部まで広がっていく。しかし、約4万8000万年前の寒冷化で人口が減り始め,さらに4万年7000万 年前には、ホモ・サピエンスがヨーロッパに侵入してくると、もはや再び人口が回復することはなかった。そして、ついに約4万年前にはネアンデルタール人は絶滅してしまう。3万8000年くらいまで生存していた可能性も。
ホモ・ハイデルゲンシスから、40万年ごろ、ヨーロッパに住むネアンデルタール人とアフリカにすむホモ・サピエンスが分離しはじめた。10万年以上たってからはっきり分岐した。
4万7000年前に2種の人類は再会した。4万7000年前の温暖化でホモサピエンスが進出してきた。はじめは多くはなかった。4万3000年前になると多くのホモ・サピエンスがヨーロッパに進出してくると。急速に分布を広げる。共存期間は少なかったと思われる。
中東のレパントが寒冷化したとき、姿を消したのはネアンデルタール人ではなく。ホモサピエンスだった。
ホモサピエンスのほうが骨で針を作り寒さに適応した服を作れた,ホモ・サピエンスは投げ槍器を使って遠くからやりを投げる。
ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが混血の証拠
3万7000年前から4万2000年前にルーマニアに住んでいた現生人で、ネアンデルタール人の遺伝子を6-9%持っている男性が存在し、4代前には高祖父母がネアンデルタール人であるだろうと推測された。
「ネアンデルタール人について 図像の変化」
http://koiti-ninngen.cocolog-nifty.com/koitiblog/2015/08/post-6640.html
◎現生人類の起源についての新説のもととなる化石がイスラエルから見つかった。
はじめホモ・サピエンスが中東やヨーロッパに進出した時には、ホモサピエンスのほうが絶滅してしまった。
寒冷期には温暖なアフリカにすんでいたほうが有利であった。どちらにしても、温暖な時期はいずれの人類にしても住みやすかったのです。寒冷化には人類は苦しみました。温暖化で2℃や3℃上昇してもよいことのほうが多いのです。逆に寒冷化はすべての人類を苦しめました。場合により絶滅しました。
興味深いのは、ネアンデルタール人と現生人類との混血が初めの予想よりずっと長く行われていたということだ。更科氏は混血の期間は数千年と短いと予測していますが、かなり長いように思われます。そうでないと、アフリカ人以外の現生人の遺伝子に2から4%のネアンデルタール人の遺伝子が必ず組み込まれるまでにはならないように思われるのです。
いずれにしても、ホモ・サピエンスの起源がより古く、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人と接触する期間もずっと長くなることは間違いありません。今までの常識とされたことが覆されていくということで大変興味深いと思います。
2018年3月追記
ケニアの近くで30万年前の石器が見つかりました。大型のハンドアックス以外の様々な形をした小型の石器を発見。32万年前から30万5000年前に作られたもの。
東アフリカ最古の現生人類はエチオピアで見つかった20万年前なので、これらの石器を作ったのがどんな人類なのかわかっていません。
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