ネアンデルタール人が壁画?高い知性の可能性。論争も。白人のネアンデルタール人。黒人のイギリス人。
最古6万年前の壁画、ネアンデルタール人が描いたのか?
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2018年3月29日の毎日新聞の科学欄―科学の森に、
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「壁画描く芸術性あった? ネアンデルタール人像、に新説、「野蛮」見直しも
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旧人のネアンデルタール人が6万年以上前に洞窟絵画を書いていたー。洞窟絵画は現生人類のホモ・サピエンスが描いたとする定説に、一石を投じる研究が発表された。4万年前に滅んだネアンデルタール人とは何者だったのか。最新研究を取材した。(鈴木理之)
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● 4万年前に絶滅
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毎日新聞では、すでに2月23日にはニュースで簡単に報道されています。今回はさらに詳しいニュースが書かれています。
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角を持つ牛のような動物や、梯子のようなマーク。ネアンデルタール人が描いたとの新説が浮上しているのは100年以上前に発見された世界遺産・ラバシエガ洞窟(スペイン)の壁画だ。赤い顔料が使われ、点描のような絵も見える。
ドイツの研究チームが、壁画に付着した天然の放射性物質の年代を測定したところ、一部は6万4000年以上前に描かれたと推定した。これまでは4万年前とされていたが、2万年以上さかのぼったことになる。ネアンデルタール人は、ヒトと共通の祖先から50万年前に分かれたとみられ、私たちの「遠い親戚」に当たる。
1856年にドイツのネアンデル谷の洞くつで、初めての骨格の化石が発掘された。これまでの遺跡調査から埋葬文化があったとされる。
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なぜ彼らがこの洞窟壁画を描いたと考えられるのか。私たちの祖先で、ホモ・サピエンスの仲間のクロマニョン人(新人)がアフリカから欧州に来たのは推定4万~4万5000年前。6万4000年以上前に欧州に定住していたのは、ネアンデルタール人だけと考えられるためだ。
4万年前以前に壁画などは見つかっておらず、今回の研究は「すでに定住していたネアンデルタール人が描いたもので、芸術的な能力があった」(研究チーム)としている。
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●境界あいまい
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「野蛮」などといったイメージがあったネアンデルタール人に対し、「芸術的な能力があった」とされるクロマニョン人。ショーベ洞窟(3万6000年前)やラスコー洞窟(2万年前)、アルタミラ洞窟(1万8000年前)など、クロマニョン人が描いたとされる壁画は牛やバイソンなどの動物が生き生きと描かれており、芸術性と知性がうかがえる。しかし最近の研究では両者の境界はあいまいになっていると言えそうだ。
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約4万年前には共存していたと考えられており、ゲノム(全遺伝情報)研究では、現代人にもネアンデルタール人に由来する残っている可能性が指摘されるなど、生物学的に近い種であることが明らかになっている。
ネアンデルタール人は氷河期に適応するため身長は低く、手足の短いがっちりした体形。一方クロマニョン人は身長が高く現代人に近い容姿だ。東京大学の近藤修准教授(古人類学)は骨格を比較したうえで「ネアンデルタール人には氷河期を生き抜くだけの知恵があった。知能の優劣を認めるほど生物学的な差はない」と指摘する。
ネアンデルタール人の遺跡からは火を使った痕跡や、壁画の絵具として使われた可能性のある赤い顔料も多く出土している。
東京芸術大学の五十嵐ジャンヌ講師(旧石器時代美術研究)は,「両者」は共存していた時代も長い。文化的な接点があったなら、ネアンデルタール人の芸術性を示す証拠が今後見つかる可能性もある」と指摘する。「原始人」などといったネアンデルタール人のイメージを見直す必要がありそうだ。
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●「研究の蓄積必要」
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一方、ラパシエガ洞窟の壁画が描かれた6万4000年以前に、新人の一部がすでに欧州に進出していたーの説もあり、ネアンデルタール人を壁画の「作者」とする今回の研究には異論もある。
国立科学博物館の海部陽介・人類史研究グループ長(人類進化学)は「ラパシエガ洞窟を含めこれまでの壁画は洞窟の奥で見つかっているが、ランプの痕跡はクロマニョン人の遺跡でしか見つかっていない」と指摘。年代測定方法についても「現時点では必ずしも制度が高いとはいけない。さまざまな角度からの検証が必要だ」と指摘する。
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近藤准教授は「生きた時代が重なる両者は何かと比較される。一般的に各研究は現代人の優位性を主張するキリスト教などの宗教的なな立場が強く影響することもある。という。両者の比較をめぐっては1980年代以降、学問的な論争が繰り返されてきた経緯があり、「確かな証拠を積み重ね、少しづつ正解に近づいていくしかない」と話している。
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100年前以上前に発見された世界遺産・ラバシエガ洞窟(スペイン)の壁画だ。赤い顔料が使われ、点描のような絵も見える。
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ネアンデルタール人
男性は身長165センチ程度
骨格筋が発達しがっしりした形
手足が短く、寒冷地で体温を保持しやすい
後頭部が発達し、頑丈な下あごを持つ
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クロマニョン人
男性は身長175センチ前後、現代人に近い容姿
手足が長く、熱帯地方で体温を拡散しやすい
頭部が大きく,歯は小さい
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ラバシエガ洞窟(スペイン)
6万4000年前
ショーべ洞窟(フランス)
2万6000年前
ラスコー洞窟(フランス)
2万年前
アルタミラ洞窟(スペイン)
1万8000年前
4万年前後の中期石器時代と後期石器時代の入れ替わる時期にネアンデルタール人とクコロマニョン人が共存していたと考えられる。
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赤い線で描かれたスペインの洞窟壁画―研究チーム提供(上記)
1913年の論文に掲載されたスペインの洞くつ洞窟壁画を写した絵=サイエンス誌提供」
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◎近藤氏の「現代人の優位性を主張するキリスト教などの宗教的な立場が強く影響することもある」という言葉は興味深い。
クロマニョン人が、前にLIFE誌で金髪で白い肌をした姿で描かれているのに違和感を感じたことがあります。今年2018年にイギリス人やスペイン人をゲノムの解析で、目は青いが肌は黒く、今までの復元図と大きく異なる、ということがわかりました。肌が白く、目が青くというのはむしろゲノム解析でネアンデルタール人の姿であることがわかっています。
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1万年前の黒人?のイギリス人の復元図。肌は黒く髪も黒い。
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「こういちの人間学ブログ」
「1万年前のヨーロッパ人は暗い肌に黒い髪、青い目。イギリス、スペインなど」
2018年2月23日
国立科学博物館にあるネアンデルタール人の復元像。肌は白く髪の毛は茶色。
「こういちの人間学ブログ」 2015年8月
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「ネアンデルタール人について 図像の変化~」
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