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2020年6月23日 (火)

『あなたの身体は9割が細菌』ベストセラー。多くの現代病は腸内細菌のせい?。細菌や、ウイルスも平和的に共存し重要な役割も。

 

新型コロナウイルスは日本においては少し下火になってきましたが、いろいろな制限が解除されるに従い、第2波、第3波の襲来も予測されます。ブラジルでは恐るべき勢いで感染者が増え、他の発展途上国の感染拡大が心配されます。

今、ウイルスや細菌や感染症についてのさまざまな書物が出版され、書店にも多くの本が積まれています。その中で、人体内にいるウイルスや細菌が必ずしも有害な働きをするわけではなく、極めて多量なウイルスや細菌が健康な人の体の中に『常在』するだけでなく、極めて重要な役割を果たしていることが書かれています。

ここでは体内に常在する細菌叢がいかに重要であるか、そしてその微生物の生態系が、抗生物質などの多用によって崩れることにより、さまざまな感染症、アレルギー、肥満、うつ病などの病気を引き起こしていることが明らかになってきた。

又一方、今話題となっている新型コロナウイルスなどの病原体であるウイルスも、発病していない感染者の身体の中に常在し生物や人類の進化に役立ってきたことも知られてきた。ここでは簡単に「あなたの体は9割が細菌」という本の紹介と、2020年6月21日の日本経済新聞の記事を紹介します。

1、「あなたの体は9割が細菌」微生物の生態系が崩れ始めた 

 アランナ・コリン 2016年8月30日初版発行 2020年5月10日11刷発行 河出書房新社 2000円税別

 3,5万部突破 Amazon 生化学・医科学カテゴリー ベストセラー第1位 

  原題 ”10%  HUMAN” How Your Body’s Microbes

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プロローグ 回復はしたけれど

筆者は野外調査でダニがもたらす熱帯病に感染しました。その治療のために大量の抗生物質を長期に処方した。けっかとして熱帯病は、治癒したが、皮膚の発疹、胃腸が弱くなり、他の感染症を何であれ拾うようになった。一連の抗生物質は,細菌を殺すだけでなく、かって私の体の中にいる細菌まで絶滅したのではないか。かっての友好的な微生物がどれだけ重要かをこの時初めて意識した。

あなたの体のうち、人の部分は10%しかない。あなたは「自分の体」と呼んでいる容器を構成している細胞1個につき、そこに乗っかっているヒッチハイカーの細胞は9個ある。あなたという存在には、血と筋肉と脳~、のほかに細菌と菌類が含まれている。あなたの体はあなたのもの以上に、微生物のものでもあるのだ。微生物は腸管内だけで100兆個存在し、海のサンゴ礁のように生態系を作っている。およそ4000種の微生物がそれぞれの小さなニッチェを開拓し、長さ1,5mの大腸表面を覆う襞に隠れるように住んでいる。~人の暮らしはヒッチハイカー微生物の暮らしとかみ合っていて、そこでは微生物が人体を動かしている。そうした微生物なしにヒトは健康ではいられない。

ヒトゲノムプロジェクトのおかげでDNA解析が格段に速く安くできるようになったからである。糞便に交じって体外に出てきた、「死んだ」微生物を特定することさえ可能になった。共生微生物のアンバランスが、胃腸疾患、アレルギー、自己免疫疾患、さらには肥満を引き起こしているという科学的証拠が続々と出ていることを私は知った。体の病気だけではない、不安症、うつ病、強迫性障害、自閉症といった心の病気にも微生物が影響している。私たちが人生の一部として、甘受している病気の多くはどうやら、遺伝子の欠陥や体力低下のせいではなく、ヒト細胞の延長にある微生物を軽んじたせいで出現した、新しい病態のようなのだ。

市民科学プロジェクトであるアメリカン・ガット・プロジェクト(AGF)は自分の糞便サンプルを提供するとその微生物のDNAを解析する。腸内のスナップ写真を受け取る。筆者は~使っていた(大量の)抗生物質で少数派の菌種を絶滅させていた。多様性の喪失がここ数年の体調不良に関係があるのかもしれないと私はおもった。

私は私の微生物を最優先に考え、微生物たちのニーズに合うように食生活を変えることにした。これは自分のためだけではなく、これから生み育てたいと思っている子どものためでもあった。生まれてくる子どもに遺伝子だけでなく微生物も手渡すことにになるのなら、わたしは手渡すに値する食生活を変える努力によって微生物集団の多様性と微生物を保有していると、胸を張って言えるようになりたかった。バランスに効果が表れることを期待していた。何よりも、微生物に対する投資の見返りとして、より健康で幸せになるための扉を開くカギを手にいれられることを期待していた。

目  次

プロローグ 回復はしたけれど

序章 人体の90%は微生物でできている

 私たちは微生物とともに進化した 人体は微生物進化系に満ちている

第1章 21世紀の病気

 健康向上にとって寄与した4つのイノベーション  人間にとって普通でないことの急増 二一世紀病を疫学的に問うてみる

第2章 あらゆる病気は腸から始まる

 カロリー計算で体重コントロールは出来ない 微生物が起こす消化器系のトラブル エネルギーをどう吸収するか エネルギーをどう貯蔵するか

第3章 心を操る微生物

 遅発性自閉症のきっかけ 腸と脳はつながっている 微生物が出す化学物質が信号になる 短鎖脂肪酸の役割

第4章 利己的な微生物

 アレルギーを説明する「衛生仮説」の不備 ホログラム進化論 「旧友仮説」に書き換える 腸の透過性が上がるという現象

第5章 微生物世界との果てしなき戦い

 無数の命を救ってきた薬 抗生物質が微生物集団の構成を変える 抗菌剤入り製品への懸念

第6章 あなたはあなたの微生物が食べたものでできている

 栄養摂取の複雑なプロセス 微生物に必要なエサをやり忘れていないか 食物不耐性のなぞ

第7章 産声を上げたときから

 産道にいる微生物 母乳の中にいる微生物 マイクロバイオームの驚くべき順応性

第8章 微生物生態系を修復する

 微生物は補助食品として補充できるのか 他人の糞便を分けてもらう 理想のドナーを求めて

終章 二十一世紀の健康

 社会としての姿勢を変える 個人としての姿勢を変える

エピローグ 100%の世話をする

 

この本には16ページにわたる多くの図版が載せられています。

p100 母のエレン・ボルトに抱かれている息子のアンドルーは自閉症を発症する p100(図版p144次)

アンドルーは耳の滲出物で小児科医へ、そこで何回も抗生物質の注射をされた。耳の症状は治ったがその後自閉症の症状が現れ,消化器の病気も生じた。自閉症は前は1万人に1人ぐらいだったが。2010年には68人に1人となった。

エレンは息子のアンドルーが自閉症になったのは腸内微生物である破傷風菌であるという仮説を立てて調査した。破傷風菌を殺すとその後自閉症の症状が消え消化器の病気も消えた。

トキソプラズマに感染しても行動が変わっていまう。

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カナダのゲルフ大学で、大学院生のエリン・ボルトはロボガットを駆使して、自閉症の原因は腸内微生物ではないかという母のエレンが立てた仮説をテストしている。

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右はレプチンというホルモンをつくる遺伝子が変異をおこしている遺伝性の肥満マウス(オブオブマウス)体重は同腹マウスの約3倍ある。

アメリカの疾病管理予防センター(CDC)行動リスク因子調査機構が集めたデータを基に作成された地図。肥満(BMI30以上と定義)の有病率は年々増加している。アメリカでは2012年、成人の35%と、小児の17%が肥満者だった。このほかに、肥満ではないものの過体重の成人が34%、小児が15%いる。

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高脂肪食を与えたマウスは通常食を与えたマウスより体脂肪が増えるが、出生直後から毎日低用量の抗生物質のペニシリンを与えると体脂肪の増加率が大幅に上がりより多く、脂肪組織が蓄積される。

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出生直後から低用量のペニシリンを投与していたマウスの腸内微生物を無菌マウスに移すと、それを移されたマウスは太った。比較のため、ペニシリン投与をしなかったマウスの腸内微生物を無菌マウスに移した場合はふとらなかった。

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p93~95から

腸壁の断面図 p95

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痩せた人と太った人の腸内で存在量の違いがみられる微生物に,アッカ―‣マンシア‣ムシニフィラという細菌がいる。痩せた人にはこの細菌が多くいて,この細菌が少ないほどBM値が高い。痩せた人では4%、太った人はほとんどゼロだ。アッカ―・マンシア・ムシニフィラは腸壁を覆う熱い粘液層に棲んでいる。(ムシニフィラとは粘液好きということだ)。腸壁の粘液層は腸内微生物が血液中に入り込んで悪さをするのを防ぐ障壁となっている。アッカ―マンシアの存在量はBMI値に関係するだけではない。この細菌が少ないと粘液層が薄くなり、リボ多糖が血液中に入り込みやすくなる。

アッカ―マンシアは腸壁細胞に働きかけて、より多くの粘液を分泌させている。そして住みどころを得て、結果的にリボ多糖が血液中に入り込むのを阻止している。~ウイルスと細菌を含めた微生物は、過食と運動不足だけで肥満になるわけではないことを教えてくれている。

p97から~

こころを操る微生物 遅発性自閉症 原因は息子の腸内にいる破傷風菌ではないか 母親エレンは息子の自閉症の原因を考えた。破傷風菌を退治して劇的に回復した。 

p135から~

人体内にはそれこそ莫大な外来微生物がいる。重量にすると合計1キロにもなる外来微生物集団― マイクロバイオータ ーは、結腸内の管理センターとともに免疫細胞のすぐそばで暮らしているが、免疫細胞の標的になることはない。マイクロバイオータは明らかに非自己である。

私は人体に棲む微生物を調べるうちに自分自身を独立した存在と考えるのをやめ、マイクロバイオータの容器だと考えるようになった。わたし自身と私のマイクロバイオータはまとめて1つの「チーム」なのだ。

私は微生物に対する提供者であり保護者である。微生物はそのお返しに私に栄養を与えてくれる。私は私のマイクロバイオータの喜ぶような食事の摂り方を考えるようになった。

p307から

 人は雑食動物として進化してきた。人体はたくさんの植物と少しの肉を食べるようにできている。それなのにわたしたちは、たくさんの肉と少しの植物と、そして動物にも植物にも見えない加工食品を山ほど食べている。もしあなたが、食物繊維の摂取を増やそうと野菜をたくさん食べることを選択した場合には、あなたのマイクロバイオータが適応できるよう,あせらずゆっくり時間をかけて移行した方がよい。脂肪や、たんぱく質、単糖が中心の食生活に適応した細菌が多くいる腸内にいきなり大量の食物繊維が入ってくると、望ましくない作用が出ることがあるからだ。~食物性の食品を多く食べて有益な微生物の組成比を増やすことは健康への第1歩だ。きちんと考えて選択し、今以上に多くの植物を食べることにしよう。

 

筆者のアランナ・コリンはイギリスの生物学者。科学雑誌等に寄稿し、ラジオやテレビのコメンテーターも務める。本書が初の著作。

訳者あとがき【矢野真知子)

生物多様性の喪失と聞けば、熱帯雨林やサンゴ礁が目に浮かぶ。~私たちの体は無数の微生物からなる「生態系」であり、そこでも種の絶滅は進んでいる。

2003年にヒトゲノム・プロジェクトが完了した時、ヒトの遺伝子が線虫と同じ、2万1000個しかないのに驚いた。~体内に住む微生物に多くの活動を,「アウトソーシング」していることにあった。赤ん坊は産道を通る時、母乳を飲むとき、母親から微生物一式を受け取り、その微生物集団とともに成長する。ところが最近では赤ん坊がその細菌一式を受け取れなかったり、せっかく受け取ったコロニーを消滅させてしまうことが増えてきた。肥満、過敏性腸症候群、アレルギー、自己免疫疾患、自閉症など、20世紀後半から先進国で急増した病気は人体内に存在する細胞の90%を占める微生物の様相が従来と変わってしまったことで生じて居る。というのがこの本のテーマだ。~

微生物にきちんと餌を与える(与えすぎてはいけない)という宿主の責任を考えれば、流行のダイエット法を追いかけて、特定の食品を急に食べ始めたり、急に食べることを止めたりするのは良くないだろう。食品添加物は私のヒト細胞には無害でも、私の友人たちには害を与えるかもしれないと思うようになった。自分の体を生態系として眺めれば、森林伐採、外来種の持ち込み、農薬の使用、肥料のやりすぎを警戒すべき理由はいくらでも見つかる。

 

ブログ筆者の考え

◎世の中には本当に多くの健康法が存在しています。全く正反対の健康法が提唱されています。ブログ筆者もそれを指摘してきました。食べ物に関する健康法は今まで数限りなくありますが、その一つに糖質をとらないようにするという健康法がかなり世の中に影響を与えています。重度の糖尿病の患者には必要ですが、正常な人が健康法として行うのは感心しません。一定の糖質は栄養源として重要です。腸内細菌のためにも糖質とそれに絡んだ食物繊維の摂取が必要なのです。米や、麦、イモ類、雑穀類などです。

腸内細菌は長年かけて、いつも食べている食物に適応した腸内細菌に育っていきます。ラオスの山間には大量のごはんで健康体を保ち、マサイの人たちは牛乳と牛の血から栄養を取り、イヌイットはアザラシの脂肪が主食で健康です。しかし急激なアメリカ型の高カロリー,糖分過多、肉と脂肪の過食などといった食生活では、肥満やさまざまな成人病が多発しています。

だからと言って、急激なさまざまなダイエットや極端な健康法では大体が長続きせず、またその健康法では腸内細菌のバランスが崩れ、さまざまな病を引き起こしてしまいます。

先日足の指が少し化膿し、それを直すために抗生物質を1週間飲んだ。そのためか、今までお腹を壊したことがあまりないのに、おなかが気持ち悪く、調子悪くなってしまった。自分の腸内の細菌に悪いことをしたと反省しています。

 

2、日本経済新聞の2020年6月21日の朝刊には、「驚異のウイルスたち」、「健康なヒトの身体に『常在』」という記事が載りました。

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3,生物、ヒトにおけるウイルスの役割

 

「ヒトがいまあるのは ウイルスのおかげ」 武村正春  さくら舎 2019年1月10日 1650円

「生物はウイルスが進化させた」 武村正春 ブルーバックス 2017年4月19日

 2015年 武村氏は日本初の巨大ウイルスを発見

 

ウイルスを遺伝子を体の中に導入する運びや(ベクター)として使う

  レトロウイルスやアデノウイルス

 子宮胎盤形成における遺伝子―ウイルス由来 他たくさん

 

「私たちのDNAの大部分がウイルスでできていた?」

  中屋敷 均 神戸大学大学院教授 

 ヒトゲノムもその半分はウイルスとウイルスもどきの遺伝子系列が占めているよ言う。

 つまりヒトを含む生物のゲノムは、ウイルスの様な寄生者と合体して出来上がっていると言えるのだ。 

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