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2021年4月 6日 (火)

「顔の進化」馬場悠男(ひさお)氏、顔についてよくまとまった興味深い本です。顔学会についても。

2021年4月3日の毎日新聞朝刊「今週の本棚」の筆頭に馬場悠男氏の「顔の進化」あなたの顔はどこから来たのか のことが書かれていました。書評を書いたのは作家の池沢夏樹氏です。講談社ブルーバックス 1100円 2021年1月20日発行

池沢夏樹氏は1945年生まれ、小説、詩、評論など、芥川賞など各種の賞を受賞しています。

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見出しに「疲れるとげっそりするのはなぜ」と書かれています。

感覚器官を集めた部分

顔とは何か?

植物は動かないから体軸は地面と垂直になる。せいぜい高く伸びて枝と葉を広げて陽光を集め、地下に張った根から水分などを得る。

動物は動くから体軸は地面と平行になる。どちらに動くか決めたほうがいい。そこで前と後ろができる。摂食のためには口が要り、体内を消化管が貫いてその先に肛門ができる。たいていの動物の体はこういう配置になっている。

さて、餌を得るには五感を活用しなければならない。視覚と、聴覚、嗅覚、口の中には味覚。これらの感覚器官を集めた部分、これを我々は「顔」と呼んでいる。

これはただ美醜のことではなく、遠大な動物史・人類史の本である。だからと言って学術的過ぎて難解という印象は全くない。よくもこれだけ小さな愉快な話題を集めたものだと笑いながら読める。

昔から各論は若手にも書けるが総論は碩学に任せたほうがいいというが、これなどその典型。進化の話だから顔のパーツも単純なものからそれぞれの目的に応じて特化してきた。

は初めはただの穴、せいぜいヤツメウナギのような吸盤型。やがて上下に分かれて顎を形成し、そこに歯が生える。両生類や爬虫類には顎があり、歯もある。しかしその歯は「尖っていて、獲物を捕らえるか食いちぎるが、哺乳類のように嚙み潰すことはできない。それは鼻腔と口腔を隔てる口蓋がないので、ゆっくり噛みながら息をすると、食物が気管に入って窒息するからでもある」なんておかしい。誤嚥の恐怖。一事が万事、こういう調子なのだ。つまりは生物の身体の工学的な解析である。

ウマの顔はなぜ長いか?これにはほとほと感心。馬は草をはむ。長距離を走るため脚は長い。しかし口は地面に届かねばならぬ、頸を伸ばすと重量がかさむ。咀嚼筋のある顎の奥はそれだけ重いから頸に近いほうが疲れない。そこで口だけが細く長く伸びた。好きな草の選択も容易。目は頭部の左右に分かれて視野を広くし外敵を発見しやすくなった。

は大事な器官だから頑丈な骨と柔らかい素材で守られている。「眼窩には眼窩脂肪があり、眼球にショックが加わったときにクッションとして働いている。だが急速な栄養不足に陥るとこの脂肪が真っ先に消費されるので、目が窪んでげっそりとする」なるほど。

 ◎動物では、わざわざ白目を目立たなくしている。それは、視線(眼差し)の方向を隠すためだ。ヒトでは、白目の露出により視線を明らかにすることによって、相手に注目していることを示し、個体同士の社会的関係を維持していると解釈されている。

は(と興味深々)「皮下脂肪がないので、毛細血管が赤く透けて見える。一般には赤唇縁(解剖学で言う唇)があるのは赤ん坊が乳首にうまく吸い付くためといわれている」が、「微笑んだり甘い言葉を発したりして微妙に動く唇が強烈なセックスアピールになることは誰でも知っている」。

その先に人種による顔の違いという大事な項目があり 最後は日本人の顔が論じられる。縄文人と弥生人の顔立ちから推測される系統の違い。遺骨が残っている徳川将軍家の人々の顔の復元、などは人類学の専門家の言なので詳しくて興味深い。

最後は日本人の顔の劣化。江戸時代あたりから金持ちは柔らかいものしか食べないので顎が細く,口腔が狭くなった。今の子供たちはその極端な例だから、「給食を改善して顔を変えよう」と著者は訴える。

 

◎早速、書店で購入しました。この本の表紙の絵は、顔学会の百科事典の顔と同じ作者のようです。

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本の内容

はじめに

序章 顔とは何か

第1章 動物の顔の進化

 咀嚼器の進化

 感覚器の進化

 「柔らかい顔」の由来

 顔の各部の大きさと変化

 動物の顔はなぜ違うのか

 

第2章 顔の人類学

 ヒトの顔は変な顔か

 皮膚と毛の不思議

 眼は口ほどにものをいうか

 「縁の下で」働く鼻

 口は食うより訴えたい

 顔の脇役たち

 

第3章 ヒトの顔はなぜ違うのか

 人種による違い

 性別による違い

 角度や表情による違い

 

第4章 ヒトの顔はどう進化したか

 「人間らしさ」の獲得

 人類の顔の進化

 どのように顔を復元するか

 

第5章 日本人の顔

 最古の日本人の顔は「アフリカ由来」

 縄文人の顔は南方由来か

 弥生人の顔は北方由来か

 徳川将軍家の顔

 子どもたちの顔を鍛える

 

終わりに

参考文献

 

裏表紙に書かれていること

人類学者の第一人者が読み解く「顔から見た進化」

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帯封の表紙側には「ヒトの白目はなぜ目立つのか?顔には深いわけがある―前出

 

帯封の裏にはあなたの知らない顔の不思議が満載!とあります。

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参考書 1

2015年(平成27年)9月15日発行「顔の百科事典」編集委員長 原島 博 25000円+税

1995年3月に顔学会は成立し、ブログ筆者は同年に入会しました。

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顔の本」1989年6月10日 香原志勢 中公文庫 380円

 香原氏は人類学者 顔学会初代会長

 1985年春 講談社から発売されたもので、文庫本化されたものです。顔というごく一般的な課題を扱いながら、同種類の著作は今まで見られなかったと、ひそかに自負している・・ 

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「人の顔を変えたのは何か」河出夢新書 1996年11月20日 680円

  原島 博(東京大学工学部教授)顔の百科事典編集委員長

  馬場 悠男(国立科学博物館、人類研究部部長)顔の百科事典副編集委員長

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「顔学」日本顔学会誌 この本はVOL14 2014年

顔学会は1995年3月に作られました。ブログ筆者も同じ年に入会しました。

国立科学博物館で開かれた展示会に人間学研究所の人たちで集団で見に行きました。

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2019年に顔学会を退会しました。顔学会は面白い学会で会費も5000円と安くいい学会です。24年間参加していました。

資生堂などの化粧品会社の人々も参加。学会誌に広告などもたくさん載り財政的に豊かでした。

様々な理由で創立以来参加したジャパンスケティプクスと設立にかかわった総合人間学会をやめましたが、この際でと顔学会もやめて、すべての学会をやめて、人間学研究所の活動一本に絞りました。

ブログ筆者も「人相術の科学的検証」と称して、顔に関するいろいろな資料をまとめています。科学的な知識に人相術の知識も加えています。耳と額に関して、皆さんの関心が高いようです。

参考書 2

顔と表情の人間学  香原志勢 平凡社ライブラリー 1000円+税 2000年1月15日

人間の顔      山崎 清 読売文庫  130円 昭和30年6月20日

日本人の鼻はなぜ低い? 佐藤方彦 日本経済新聞社 1200円 1990年11月19日

人相 顔の人間学(the human face)   ジョン リゲット 平凡社 1800円 1977年12月1日

人間にとって顔とは 成田令博 口腔保健協会 1648円 平成7年2月28日

自分の顔が好きですか 「顔」の心理学 山口真美 岩波ジュニア新書  860円+税 2016年5月20日

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