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2021年6月26日 (土)

「ヨーロッパ人相学-顔が語る西洋文化史」よくまとめられ、大変面白い本です。ブログ筆者は、顔の人間学ー人相学の本は比較的残しています。

2008年7月10日に、白水社から発行された本ですが、本に気付きませんでした。だいぶ遅くなってからの2021年の7月に気付きまして、早速本を購入しました。編著者は浜本隆志(関西大学教授・比較文化論)、柏木 治(関西大学教授、フランス文学・文化論)、森 貴史(関西大学准教授、ドイツ文化論)のいずれも関西大学の文学部所属の方です。そのほかに溝井裕一(日本学術振興会特別研究員)、横道 誠(京都府立大学専任講師)が執筆者です。定価 3400円+税 319p この本の巻末には13ページに及ぶ参考文献が詳しく載せられています。

◎の部分はブログ筆者の追記分です

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帯封のついた状態

 人を見た目で判断するために!

 ヨーロッパで古代から研究されてきた人相学を歴史的に跡づけ、それに関わる表象(聖像・彫刻・絵画・映像…)を詳解する

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目   次

序章 ヨーロッパ人相学とは

 人相学の歴史的な系譜  

     頭蓋測定学や骨相学は多くの誤解や似非科学を含んでいたので、ヨーロッパの伝統的な観相学は変質化してしまい、逆に差別の根源となる可能性を持っていた。ヨーロッパの白人が最も優れ、「黒人」や「未開人」が劣っているという人種的偏見」の根拠が導き出されたのである。

   人相学が提起するもの  顔の「規範」と「逸脱」

図1 頭蓋骨の騙し絵(19世紀後半)

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図3 ラーヴァーターの「グルジア人とパシキール人」1792

◎上のパシキール人はロシア最北部に住むアジア系の人々

 下のグルジア人(現ジョージア)はヨーロッパの地中海人種とみなされる

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図2 カンパーの『顔面角測定」1791 サルや類人猿、各人種の顔面が比較されている

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第一章 アリストテレスとルネサンス時代の観相学

 1、アリストテレスの観相学

  『動物誌』アリストテレス動物と人間を比較  

   偽アリストテレスの『人相学』

 2、ルネサンスの観相学

  観相学の復活 コクレスの『観相学要略』  

     大宇宙と小宇宙の照応-カルダーノと観額術

図10 七本の基本線と惑星〈『観額術』仏語版より)

  カルダーノ額のしわと占星術を結び付けた。中央のしわを太陽とし他の線を各惑星にあてはめる

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 3,デッラ・ポルタの観相学

図12 デッラ・ポルタ(「人間の観相学」)

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◎デッラ・ポルタ の「自然魔術-人体編」

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上記の本、自然魔術から 鼻の比較

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  伝統の総合  自然学的観相学  表情の読解へ

第二章  観相学の興隆と変質化

  1、宮廷社会と観相学

        太陽王の観相学者  

           1660年ころ ド・ラ・シャンブル 「人間を知る術」

  情念の読解へ  観相学と美術の結びつき]

 王立絵画彫刻アカデミーの総裁、ル・ブラン

人間の身体は体の縮図である。デカルトの機械論に大きく影響されつつも動物形態論的な部分も残している

図17 ル・ブランによる動物と人間の顔の相関デッサン

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  2、ラーヴァーターの観相学 -さまざまな知的伝統との関係

図18 ヨーハン・カスパル・ラーヴァーター(1741-1801)

 ラーヴァーターはかれのPhysiognomikを観相学と名づけた。

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◎ラーヴァーターは観相学で多大な名声を博した。1772年の『人〈観)相学断章』は非常に評判となる。リゲットの「人相 顔の人間学」1977年(原題 the fuman face)には図版入りで詳しく載せられている。下の図はその1枚。

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◎「人相 顔の人間学」第10章が「古典的人相学入門」です。p204から239まで

 ガルの骨相学については「人相」には出てくるがヨーロッパ人相学では出てこないようだ。

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   分水嶺としての観相学  観相学とキリスト教神学  観相学と占星術  観相学と数理主義的思考法 

 観相学と処世術または社交術

図23イマニエル カント

  カントの人相学ではデッラ・ポルタやラーヴァーターの人相術は科学ではない、とする。カントの「観相術」きわめてシンプルであり、実用主義的な性格を持っている。

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◎『カント全集 15』 岩波書店版

人相術についてはp270~282「人相術について」、人相術への自然のいざないについて 

人相術の分類 

 A  目鼻の分類について

 B  面貌に見られる性格的なものについて

 C  顔癖から読み取れる性格的なものについて

    他愛のない余談の数々

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「こういちの人間学ブログ」2011,11

「カントの人間学―カントの人相術も少し~」

http://koiti-ninngen.cocolog-nifty.com/koitiblog/2011/11/--2011-8232.html

 

  3、差別の人相学への変質ーユダヤ人差別のイメージとしての記号

図24,25,26 ユダヤ人のイメージ

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 ユダヤ教信仰していれば、その人はユダヤ人なのだ。

   ユダヤ人差別の歴史と理由  ユダヤ人の外見的特徴  揶揄されるイメージとしての動物戯画  類人猿とユダヤ人  身体的特徴と捏造されたイメージ

第三章  異形の顔

 1、メドゥーサの呪い

  醜いメドゥーサと美しいメドゥーサ  メドゥ―サの髪とヘビ

 2,グリーンマン探訪 

    グリーンマンとは、顔の一部が植物と化した人間像のことである。

         グリーンマンは様々な顔を持ち、魔よけであり、デーモンであり、地獄の入り口であり、生命の根源であった。

   森林破壊が進む今日 、グリーンマンは人と植物の共生の象徴というあたらしい意味が与えられヨーロッパを抜け出て世界的に有名な存在となりつつある。

図52 グリーンマンたち

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  グリーンマンとは  グリーンマン研究の開拓者たち  グリーンマンの起源を探る  キリスト教化とグリーンマンの登場  門に宿るグリーンマン   地獄の顔と天の顔-グリーンマンの図像学  キルベック教区教会のグリーンマン  バンベルク大聖堂のグリーンマン  グリーンマンの過去と現在   

  3,異形の系譜

   ガーゴイルの謎(ガーゴイルとは鬼瓦の1種 石工は教会や大聖堂の屋根周りの雨水用排水溝にガーゴイルを取り付け、そこに怪物、人間動物などの像を彫り込んだ)

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図62 フライブルク大聖堂なガーゴイルたち  

   悪魔の系譜

     一神教が悪魔の創造と最も深く関わり、キリスト教では神の具体的姿をキリスト像で提示し、逆にあらゆる不幸の原因を悪魔という醜悪な姿を通じて説明した。

第四章 顔の虚像と実像

 1、アルチンボルド・顔のコスモロジー

図 69 70

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   アルチンボルドとルドルフ2世  顔とマクロコスモス  だまし絵とアレゴリーの世界

 2、鏡像と実像のラビリンスー分身と闘う方法

   鏡の感覚  鏡の世界  鏡と分身  象徴としての鏡  鏡像をめぐるタブーの伝承  分身と決闘する

 3,仮面のドラマトゥルギー

   怪物クランプス   仮面の習俗  カーニヴァルの仮面

第五章 顔のパーツたち

  1,髭のパフォーマンス

図93 各種の髭   図94 ネプチューン像

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    髭の文化史  髭とキリスト教  ヨーロッパ髭王列伝(赤髭王  青髭 ナポレオン3世とと髭 ヴィルヘルム一世の皇帝髭  ヒトラーの髭)

  2,赤毛の両義性

    嫌悪される赤毛 (赤毛は娼婦の属性だといわれた)  

    赤毛とブロンド  娼婦たちの髪  

  赤毛の複権

      20世紀のスターやモデルたちは、自分の個性を演出させるためにわざと赤毛に染める。

  3,目が放つ魔の視線と神のしるし―邪視とまじない

図116 方相氏の仮面(京都市吉田神社)安倍晴明の同僚 目が4つある

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    「目は口ほどにものを言い」―邪視とは  バシリスクの恐怖の眼力  目の呪いで石になる  一つ目と4つ目の異能者たち  シンボルとしての目   邪視から逃れるために―魔の目に魅せられて

 

終章  現代の人相学

   氾濫する顔 すたれる観相学   

  p285   歴史上これほど顔が氾濫した時代はない。-星占いや現代風のオカルト趣味は人気があるのに、どういうわけか観相学や人相学はは  やらなくなった。観相学には多かれ少なかれ決定論的な意味の「読み取り」という行為があった。-ナチスの人種差別論 ヨーロッパの肖像画には笑う顔が圧倒的に少ないという事実である。宗教画において笑うことが許されているのは天使だけである。~

 20世紀に入って一変する。美女たちが歯を見せて笑い始めたことだろう。このことは観相学の不人気と深く関係している。~観相学は静止した「相」を読み取る知であり、もはや時代遅れというほかないであろう。相よりも表に現れた情の意味を救い上げるのは観相学ではなくもはや心理学である。

 

   「顔」と「顔面」   ナルシス的なまなざし

 

◎図版は129に及びます。

 

あとがき

 現代はステレオタイプ化した顔の類型化が成立しがたい時代。日本では通勤電車の中で化粧する光景に頻繁に出くわす。

しかしこのような光景はヨーロッパでは1度も見たことがない。美容整形もキリスト教では神への冒涜であるが~

われわれは日常生活では顔を通じてその人物評価をせざるを得ない。このように、顔から相手の心を推し量るという太古からの人間の習性は、人間が存続する限り継承されていく。言葉よりも顔の表情のほうが内面をものがたるからである。その意味において、現代にふさわしい人相学は存立しうる。すなわちそれは、類型化やステレオタイ化されたものではなく個人の立場からの人相学である。 これが多様化され、個人主義化された現代の人相学の姿といえよう。

 

主要参考文献一覧

和書110数冊

洋書 96冊

に及ぶ大量の文献が載せられています。

図版出典一覧

 

◎ 興味のある方はぜひご購入ください。

 

本の感想

◎この本は西洋人相学について大変よくまとめられた本です。資料も多くとても参考になります。

◎人相学は洋の東西を問わず取り上げられてきました。近年、占いとしての人相学は衰えていますが、人間の顔は人々の関心を呼ぶものであって、いろいろな学問において取り上げられています。日本においては1995年3月に「日本顔学会」が作られ、ブログ筆者も直ちに入会しました。以後2019年に退会するまで、24年間も在籍していました。

 顔はいろいろな人々,学問分野の人々の関心をよんでいます。特に人類学、心理学、医学の人々はいろいろな著作を表しています。日本においては人間学の名のもとに取り扱おうとしている人々がいます。実用的人間学を提唱しているブログ筆者もその一人です。

 

◎参考 ブログ筆者の持つ、顔の人間学、人相学に関する本

ブログ筆者の書籍は人間学研究所の名前の下で、以前大量に保管していました。はじめの第2サタケビルの2階の人間学研究所に本があったときには12000冊の本がありました。その後人間学研究所が佐竹ビルに移りその時に2000冊ほどを処分しました。その後、ブログ筆者は病気で歩行困難となりエレベーターの無い佐竹ビルにもどれなくなりました。新しい自宅に2500冊ほどの本は残しましたが残りの本は処分しました。のこした本のなかでも顔に関する本は比較的残しました。

人相学―顔の人間学に関しては、今までいろいろな方にお話をしてきました。小平公民館でのカルチャーセンターでの話、読売カルチャーセンターでの話、女子栄養大学での特別講義などです。ずっと続けてきた、人間学研究会や人間学研究所でも何度もお話をしてきました。

 

参考  自分の部屋の書棚にある顔に関する本

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詳しく写してみます 下図

右端の「顔の百科事典」は、日本顔学会の創立20周年を記念して発行されたものです。編集 原島 博 出版社 丸善

隣りの「面相識人 好運来」は台湾の人相術の本、他に台湾や中国で購入した本があります

[顔相と日本人]、坂本宇一郎 丸紅支店長 サイマル出版社

[占い人間分析学」青柳秀道 鍼灸院長 ABC出版

「顔の読み方」漢方医秘伝の観相術 丁 宗鐡 平凡社新書

ー「顔相と日本人」坂本宇一郎氏は日本人の顔に5つのルーツがあると書いています。河口哲氏の「メンズカオロジー」や、川口哲夫氏の「メンタンピン」も同じ系統の本です。

「顔と表情の人間学」香原志勢 1995年1月20日 平凡社 自然草書25

「顔と表情の人間学」香原志勢 2000年1月15日 平凡社ライブラリー

「顔の本」中公文庫 1989年6月10日 の日本顔学会の創立者香原志勢氏は人類学中心

  香原氏は日本顔学会初代会長

「日本人の鼻はなぜ低い?」佐藤方彦 生理人類学の眼

 山崎清氏は歯科学、人類学等を元とし幅広く書いています。

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2,下記

「顔による診断と治療」 医学博士 樫尾太郎。 

「鼻の話」 高橋 良 医師 岩波新書

「人は顔を見れば99%わかる」佐藤ブゾン貴子 フランス生まれの顔の心理学 河出新書

「顔の進化」 馬場悠男 人類学者 講談社ブルーバックス

「人の顔を変えたのは何か」 馬場悠男.原島 博(東京大学工学部)

「人間にとって顔とは何か」心理学から見た容貌の影響 レイ・ブル 二コラ、ラムズイ―  ブルーバックス

     (以前、私のブログに書評を書きました)

「ヒトにとって顔とは」成田令博(歯学部)

「自分の顔が好きですか」顔の心理学 山口真美

「日本人の鼻はなぜ低い?」生理人類学の眼 佐藤方彦

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3,

「人相 顔の人間学」”the human  Face" ジョン、リゲット  平凡社 なかなか優れた本です

「ヨーロッパ人相学」 本書 白水社

「自然魔術 人体編」デッラ・ポルタ 青土社  

「顔の秘密」ライラン:ヤング 新潮文庫 (中国の算命術を西洋人に )

「容貌と性格」フランシス・ボオ(コルマンの「心理形態学」のいわば解説書 1955年著)クセジュ文庫 

「人間の顔」山崎清 人相学序説 白水社

( 横積  日本顔学会誌 顔学  大顔展(日本顔学会)

日本顔学会誌 2014年VOL14 創刊から一定の学会誌が残っています。

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大顔展 主催 日本顔学会 1999年 国立科学博物館 人間学研究所のメンバーで見に行きました。

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4、左から 下

「南北相法」 水野南北  天保書院 全5冊 大正時代に複刊したもの

「現代訳 南北相法」天保書房蔵 緑書房

「水野南北とその思想」大阪春秋社

「顔の人類学」山崎 清 昭和18年10月刊

「人相 顔の人間学」ジョン・リゲット 平凡社  1977年12月(原著1974年)

「ヨーロッパ人相学」

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◎大きな書棚のある別の部屋に置いてある本

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日本古来の人相術の本

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このほかに数段ありますが手が届かないところに置いてあります

―ブログ筆者は現在車いす生活です。

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