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2022年7月10日 (日)

『延びすぎた寿命』長生きの限界と社会の不備

高田馬場の芳林堂書店に行って、目についた本があり、購入したのが『延びすぎた寿命』ジャンーダヴィッド―ゼトゥン です。

そうしましたら2022年(令和4年)7月9日(土曜日)の日経新聞の読書欄に、この本の紹介の記事が載りました。日経新聞の記事は早稲田大学教授の森岡正博氏の書評でした。

著者はパリ在住で肝臓病学などが専門の内科医。

ESCPビジネススクールでシニアフェローを務めます

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上記の新聞記事

 人類の寿命は、18世紀から現代にいたるまでじわじわと延び続けてきた.本書は膨大な医学史の文献を駆使して、長寿と健康をもたらした要因が何であったのかを浮かび上がらせていく試みである。そして21世紀になって寿命の延びに限界が見えてきたことにも触れている。

 本書の圧倒的な情報量には驚かされるが、もっとも面白かったのは、20世紀初頭のスペイン風邪(インフルエンザ)の大流行と最近の米国のオピオイド(鎮痛剤)依存問題であった。

 1918年の夏に、米国でインフルエンザのパンデミックが起きた。これはすぐさま世界に広がったが人々の自覚は薄かった。同年の秋に第2波が起き、膨大な数の人々が死んだ。若い人たちもたくさん死亡した。今でいう「サイトカインストーム」(免疫の過剰反応)だったと考える専門家がいる。

 私は全く知らなかったが、このパンデミックで人命を奪ったのは、インフルエンザウイルスそれ自体というよりも、そのあとに合併症として起きた細菌感染だった。当時は有効な抗生物質がなかったのだ。

 しかし2005年に開始された研究で当時のインフルエンザウイルスが復元され、その致死性が通常のウイルスよりも100倍も高かったことが分かった。結局のところ科学はスペイン風邪の真実に迫り切れていない。著者は科学の限界に対しても冷静な視線を投げかけている。

 著者によれば近年の英国と米国では、平均寿命が低下している。とくに白人中年男性のアルコール依存、オピオイド依存、自殺が寿命を押し下げている。その背景としては、彼らが心身の痛みを強く感じるようになっことがあると著者はいう。

 そのような痛みへの簡便な対処法としてオピオイドが使われており、その乱用によって人々が死んでいるというのである。苦痛を軽減するための医薬品によって、彼らはさらに苦しい状況へと追い込まれる。なんという逆説であろうか。米国の社会制度の不備によって、問題は簡単には解決しようがない。このペシミスティックなトーンは非常に現代的であり、新型コロナを経験したわれわれに刺さるであろう。

評 早稲田大学教授 森岡正博

 

「延びすぎた寿命」健康の歴史と未来 LA GRANDE EXTENSION

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帯封に「長生きはもう当たり前ではない」寿命の決定要因は「行動」と「社会環境」が大きい。

250年以上前から人類は寿命を延ばし続けてきた。しかし、もはやこれ以上の長生きは難しい。現代のさまざまな要因を調べつくして、たどりついた結論とは?(表紙の帯封)

(裏表紙の帯封)健康の歴史は医学の歴史ではない。健康が医学で決まる割合は10%から20%に過ぎないからだ。かってこの割合はもっと低かった。医学以外に健康の決定要因が3つある。行動、環境、生物学。大雑把に言えば、年齢、性別、遺伝である。

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本は2022年4月30日に翻訳、発行されたものです。訳者は吉田春美、発行所は河出書房新社 書名は「延びすぎた寿命-健康の歴史と未来」です。価格は2900円+税です。

 

序文

1部 微生物の時代

1 先史時代から工業化以前の時代まで―平均余命30年

2 1750-1830年 弱弱しい健康改善

3 自発的な免疫化

4 1830-1880年 -工業化と健康

5 1850-1914年-大きな前進

6 1918-1919年  スペイン風邪で世界の人口の2%から5%が死んだ

Ⅱ部 医学の時代

7 1945-1970年 モデル転換

8  心血管疾患

9  がんと闘う

10 1960-2020 薬と製薬産業

Ⅲ部 21世紀の健康をめぐる3つの問題

11 3倍長生きするのにいくらかかるか

12 健康格差

13 慢性疾患―世界的な第1の死亡原因

    タバコ、アルコール、運動不足、肥満

Ⅳ部  21世紀―後退

14 後退する人間の健康

  アメリカにおける平均寿命の低下  

    1960年代にアメリカの平均寿命、世界1だった。1998年にOECDの平均を下回った。2019年のアメリカの平均寿命は高所得国で最低

    だった。白人層の所得の低下。

  オピオイドの過剰摂取と自殺  2000年から2014年で4倍になった。

    絶と望から、自殺願望へ 肥満の増加も関連

15 人間の健康に対する気候のインパクト

16 新興感染症

終章

 

◎鎮痛剤オピオイド(医療用麻薬)

  モルヒネ、オキシコドン、メサトン、フェンタニル

     ジアチルモルヒネ(ヘロイン) ケシから取れるアルカロイド

 経済の衰退と健康の後退は部分的に関係がある

 薬物中毒の43% 過剰摂取

 とくにアメリカ人において死亡者が急増 オピオイド危機と呼ばれる

 オピオイドの過剰摂取による死亡数は2000年から2014年の間に4倍になった。オピオイドの過剰摂取と自殺との関係は 部分的に重なる

  絶望からきている 2017年には11万749人の自殺者 実際にはもっと多い    肥満は絶望の第4の型

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