”がんによくある誤解と迷信”上、下 食生活を変えると治る? 毎日新聞 4月17日、24日の記事 世の中には非科学的な療法に頼り死ぬ人が多い
2024年4月17日〈水)の毎日新聞の朝刊第4面の記事に、『がんによくある誤解と迷信』勝俣範之氏の記事で「食生活を変えると治る? 上」という記事が載っていました。4月24日にはその記事の下が掲載されていました。
2人に1人はがんと診断される時代。インターネットやテレビ、出版など、世の中にはがんの予防や治療に情報があふれています。それらの情報は信頼できるのでしょうか。勝俣範之・日本医科大武蔵小杉病院教授ががんに関する誤解や迷信を明らかにし、信頼できるがん情報を発信します。(勝俣さんの原稿を佐々木治一郎・北里大医学部付属新世紀医療開発センター教授がレビューした上で掲載します)。
◎この記事を書いた、ブログ筆者は2020年に大腸がんがわかり、2021年1月5日に慶応病院で大腸がんの手術を行いました。その後3か月に1回づつ、慶応病院で定期検診を受けております。4月19日も慶応病院の定期検診です。3か月前に行ったピロリ菌の検査結果も明らかになります。このテーマは、非科学的な人間に関する知識を批判する『こういちの人間学ブログ』にとっては、とても大事な分野なので、新聞の内容を皆さんにご紹介いたします。ー4月19日の慶応病院の大腸がんの検査結果は異状なしで、ピロリ菌の検査も異状なしでした。
ブログ筆者は11年前に旅先で脳出血をおこし、右半身が不自由となり、代々木病院に3か月入院しました。それ以後新大久保の自宅近くの代々木病院の診療所の内科医の医師に月に2回、歯科医に月1回、リハビリに理学療法士に週2回 他に入浴等の介護に週2回など、何もない日は水曜日と、土日だけていう生活をしております。
◎2020年胃腸の異常を、代々木病院の系列の診療所の医師に訴え、大腸の内視鏡検査をしてもらいました。その結果ポリープがたくさんありそのうちの1つが特に大きくなっていました。小さいポリープは取ってもらいましたが大きなポリープは詳しい検査を必要とするということでした。そこで慶応病院で再検査してもらった結果、大腸ガンのステージ1とわかりました。2020年の暮れに入院、2021年の1月5日に手術ということになりました。S字結腸切除手術は無事に終わりました。その後、2024年4月現在でも、慶応病院には3か月に1回、定期検診を受けています。
毎日新聞の記事から 4月7日の記事『がんによくある誤解と迷信」食生活を変えると治る?上
予防効果とは別
がん患者の最大の関心事は食事です。ネットでがんと食事について検索すると、「食事でがんが治る」「がんが消えていく食事療法」「食べ物で余命数か月のがんが消えた」といった書籍や記事が見つかります。これらの記事は本当でしょうか。
~医学的に食事ががんに与える効果は実際どうなるのでしょうか。~がんと食事の関係は、予防効果と治療的効果を分ける必要があります。糖尿病や虚血性心疾患などは食習慣がある程度原因になっており、また食生活を改善することである程度の治療効果が得られます。
医学の領域では治療法の確からしさを測る目安を科学的根拠(エビデンス)と呼びます。がんの1因に食習慣にあることには、一定のエビデンスがあります。しかし~食習慣を変えるなどの「食事療法」でがんが改善するという確実なエビデンスはありません。また特定の健康食品やサプリメントでがんが良くなるという確実なエビデンスもありません。
つまり、「予防効果がありそうだから、治療効果がある」とは言えません。~抗がん剤は副作用がある。それほどの強い薬を使って初めて「治療効果」が得られるのです。食生活を変えたぐらいでは、ガンが改善するという確実なエビデンスはありません。特定な健康食品やサプリメントでがんが良くなるという確実なエビデンスもありません。
エビデンスの確実性(質)について、ガイドライン作成の世界標準のシステムでは、4段階で評価しています。下記の表。
(記事の内容つづく)
◎下記の写真 ブログ筆者
食生活などの生活習慣を変えるとがんが治る‐という書物群。がんが治るだけでなく万病に効く生活習慣などなど。人々は科学的な判断より自分の気に入ったものの考え方で行動してしまう。以前のブログに書いたが、美空ひばりや江利チエミが誤った食生活で命を縮めててしまった。
以下新聞の記事から
普段から野菜中心の健康的な食事をとり、適度な運動をしている人は非常に少ないでしょう。そんな状況で、「食事でがんが治せる」などという記事を読んだら、誰でもやってみたくなるのではないでしょうか。医学的に食事ががんに与える効果は実際にどうなのでしょうか。
A,BにくらべC、Dは、エビデンスの質は低く、あまり信頼できません。
民間療法検証すると
世界中にはたくさんのがんの食事療法がありますが、ガンに対する治療効果が明確な食事療法1つもありません。
ゴンザレス療法は米ニューヨークのゴンザレス医師が開発し膵臓がんに効果があるとしてアメリカで流行しました。豚の膵臓から抽出した膵酵素をカプセル剤で4時間おきに服用したうえで、クエン酸マグネシウム、ビタミン、ミネラルなど150種類のサプリメントを患者に合わせて使い分けます。さらに1日2回コーヒー浣腸を実施するなどの厳しい食事療法です。
手術不能の進行すい臓がん患者11人を対象に試みたところ、9人が1年以上生存、5人が2年以上、4人が3年以上生存したと報告されました。1999年の研究報告ですが、当時は手術不能な進行すい臓がんには有効な抗がん剤治療が1つもなかったのでかなり注目を浴び」米国立衛生研究所(NIH)からも研究費を得て、さらに研究をつづけました。
その後の研究で抗がん剤治療群(23人)とゴンザレス療法群(32人)をバラバラに分けて予後が改善できるかを検証しました。ランダム化比較試験と呼ばれ、人間を対象とした試験でエビデンスの質の最も高い研究です。抗がン剤治療群の生存期間中央値は14か月で、ゴンザレス療法群の4,3か月に比べ有意に優れていました。「ゴンザレス療法に効果がなかった」というのがエビデンスの質はBになります。当初は期待されていたゴンザレス療法も科学的な手法で検証すると、有効な結果は得られませんでした。
4月24日〈水)の毎日新聞朝刊の記事です。
「食生活を変えると治る? 下」おいしく楽しく大切に
ケトン食は糖質を控え脂肪を増やした食事のことです。英語ではケトジェニックダイエットと呼び、海外に古くからある民間療法的な食事療法です。ケトン食ががんに有効とされる根拠の一つに、極北地方で生活するイヌイット族の疫学調査結果があります。イヌイット族は伝統的にケトン食類似の低炭水化物高脂防食の食習慣を守り、がんの発生率が極めて低いことが知られていました。しかし1910年以降、欧米型の食文化が入ってきて、50年代からは、大腸がん・肺がん・乳がん・前立腺がんが増加したことが報告されています。~
実際の患者さんを対象としたケトン食の研究では、QOL(生活の質)が、2011年に16人のがん患者で改善したという報告があるが、しかしこれは、ランダム化比較試験でなく、食事療法を完遂できたのは5人だけで研究参加者のルール順守にも問題があり、信頼できる結果ではありません。世界標準の評価で4段階の最も低いDとなります。
また大阪大学の研究では55人のステージ4の患者のうち10人にPET-CT検査での改善が認められたという報告があります。PET-CTとは陽電子放射断層撮影(PET)とコンピューター断層撮影(CT)の機能を備えた診断装置です。ただこの研究もランダム化比較試験でなく、患者は何らかの抗ガン治療も受けていたので、ケトン食単独の有効性というには無理があります。エビデンスの確実性についての評価はDです。
人間を対象とする最も信頼できる研究手法である、ランダム化比較試験の結果としては、イランで80人の乳がん患者を対象とした試験があります。ケトン食療法は全般的なQOLを改善したという報告ですが、途中脱落者を除外している。▽参加者に対する抗がん剤治療が均等に行われたか不明▽多数の評価項目(エンドポイント)を使っている。▽予後を改善したかどうかは不明ーなど研究の質が高くないため、信頼性に乏しいと、考えられています。エビデンスの確実性はCの評価です。
以上から、ケトン食療法に関して「がんの予後を改善する」という確かなエビデンスは得られていません。加えてケトン食療法の問題点には体重減少があります。体重減少はがん患者さんのQOLにつながるので、患者さんに有害な作用をもたらす可能性があり、ケトン食はがん患者さんにお勧めできません
◎上記の写真の説明
糖質を控え、脂肪を増やしたケトン食の料理。がん患者に対する治療効果はDだった。難治性てんかんには治療効果が確立されている。一般社団法人低糖研究会提供。
極端な情報に注意
実際に、私の患者さんでもインターネット情報をもとに、独自にケトン食療法を行った患者さんがいました。抗がん剤治療をやりながら、どんどん体重が減ってきて、通院するのも大変になったので問いただしてみると、「抗がん剤だけでは不安だったので食事療法をやってみた」とのことでした。白米やパン類、麺類などを一切取っていなかったために、みるみる体重が減ってきたというのです。私が「がんに効果があるのかどうか、わかっていませんので、無理して食事療法をしなくともよいのですよ」と言うと、涙を流して喜ばれました。その後、患者さんは体重も元に戻り、抗がん剤治療も継続できました。幸いなことに抗がん剤の効果も持続しました。
このように、「がんに効く食事療法」は科学的に実証されていません。食事は患者さんの大切なQOLを維持する存在ですから、おいしく、楽しく食べることを心掛けるのが良いと思います。『がんに効く食事療法』の中にはかなり極端な内容のものもあり、ともするとQOL低下にもなるので、十分に注意が必要です。
次回は6月5日、
◎ブログ筆者の見解について
世の中には、残念ながら、科学的、批判的に考える。よりも、非科学的な考え方に染まってしまう方が多いのです。その中で特に大きな影響力を持っているのが、自分の身体に関する問題です。人は誰でも健康的で長生きしたいと思っています。それで身の回りにある、溢れるほどの非科学的な情報に惑わされてしまうのです。学校ではどれが科学的で、どれが非科学的なのかを見分ける訓練など、あまりしてくれません。カール・セーガンは『カール・セーガン 科学と悪霊をかたる』1997年新潮社刊、で、人はなぜ似非科学(トンデモ話)に騙されるのか。と語っています。『がんによくある誤解と迷信』の記事もカール・セーガンの本の記述につながっています。残念ながら、世の中には、科学的、批判的に、自分について考えるよりも、手っ取り早く、いろいろな考え方、例えば健康法についてに飛びつくのです。特に製薬会社でいろいろな健康食品の勧めに応じて健康食品を服用されることもあるでしょう。しかし今度の事件のように命にかかわることもあるのです。
誰でも健康で長生きしたいと願っていますから、たまたま自分の身の回りにある考え方に影響を受けてしまいます。私もそのことに関して、ブログにいろいろ書いてきました。そもそもこの『こういちの人間学ブログ』は人間に関しての科学的な見方について考えるヒントを提供したくて始めたものなのです。そして60年間、人間学研究会、人間学研究所、実用的人間学研究会、そして最近立ち上げた人間学懇話会へと続けてまいりました。残念ながら学校では十分に科学的な知識、(特に人間に関して)を与えてくれません。それでささやかながら、人間に関して科学的な考えについて、考える機会を与えられたら、と思ったわけです。
今度立ち上げた、人間学懇話会は、より一般の方向けに作られた会です。興味のある方はぜひ、お問い合わせの上。ぜひ試しにご参加ください。60周年になるにあたり、本も出版しました。
「人間」って何ですか 佐竹幸一、森岡修一、里見 脩、杉山靖夫 工作舎
2024年1月20日発行 2600円+税
pcr92240@nifty.com 佐竹幸一
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