水野南北の人相術 (1)生涯の吉凶はことごとく食からおきる 2011追加版 (2025年 追記版)
食は運命を左右する
先生五十歳像
平成4年に、『だまってすわれば』(神坂次郎、新潮文庫)という本が出ました。これは、江戸時代の人相術の中興の祖といわれた、水野南北を主人公とした小説です。水野南北はもともとやくざ稼業の暴れ者でしたが、通りがかりの乞食坊主から「死相が出ている」といわれました。目の中に赤い線が入っていているというのです。死んではたまらないと、どうしたらよいかを尋ねると、食を慎むことと陰徳を積めといわれました。そして、お寺に入り、麦と白豆だけの粗食にし、お寺をきれいにするなど陰徳を積み修行をしました。そうしたら、死ぬといわれた日を過ぎて、たまたま会った乞食坊主から、何と死相が消えておるといわれました。それ以後、水野南北は、その乞食坊主(水野海常)に弟子入りして人相術の本格的な勉強を始めます。そして、髪結いに3年、風呂屋の下働き(三助)を三年、そして死者の人相を調べるため、火葬場の人足(おんぼうといいます)を三年と、徹底的に人間の顔と体を調べたのです。今までの人相術は、中国からの人相術の本の受け売りで、日本人そのものを詳しく調べた結果というものはなかったのです。その結果わかったのが、食の重要性と、陰徳を積むという、正しい行いをして心の平安を得るということでした。これは極めて科学的な立場に立ったものといえましょう。
人間の吉凶も、もともとのその人の長年の行いや癖があらわれてきたことであるというのです。そして「生涯の吉凶はことごとく、食からおこる」ということを確信しました。これは極めて重要なことです。単にその人の顔の形だけでなくその人の生活の在り方も判断するということです。せっかくいい人相に産んでもらっても、その後の生活、特に食生活がいい加減だと、凶運になってしまうというのです。そして人相はただ、顔だけでなく、声、皮膚の状態、歩く姿、座る相など、総ての相(すがた)を総合して判断しなければならないといいます。これはそのまま現代にも当てはまります。
水野南北の本です
水野南北は『南北相法』という本をかきます。私はこの江戸時代の原本を手にいれました。(大正時代に複刊されたようです)そのほかに『相法極意修身録』という本も書きました。それらは現代語に翻訳されています。また、中国でも中国語に翻訳されて出版されています。そしてその人相術は、だまって座れば、ぴたりと当たるとまで言われました。多くの弟子をとり、ついには朝廷に認められ、従五位の下 出羽介という官位をもらうほどになりました。水野南北の『南北相法』のなかで、医者や占い師がその人を判断する方法、「望診」の方法を示しました。それは現代でも大変役に立ちます。
また、『相法極意修身録』には次のようなことばが書かれています。
粗食のものは貧相でも、幸運をつかむ。
食事量が一定していれば、心身健全
食事時間が不規則なものは吉相でも凶に転ずる
築山・泉水のある家は衰運に向かう
夜鍋は大凶。朝寝坊は貧窮短命
女性が吉相を自覚すれば凶相と変わる
などなど色色あります。
「本朝人相考」という本もあります
★ このブログは、2009年8月にかかれたものです。2010年9月の実用的人間学の例会で佐竹が「いい顔とはどういうものか」というお話しをして、改めて水野南北のことについてお話ししました。それをブログに書きますので、2011年にこのブログを移行しました。
★ 2011年9月の「実用的人間学研究会」で、「いい顔とはどのようなものか」というテーマで、実用的人間学研究会の例会で、佐竹が話をしました。その中で書いたことですが、師匠の水野南北の人相について、弟子がぶしつけに聞くところがあります。内容は以下の通りです。
『だまってすわれば』小説 神坂次郎より
南北自体は貧しく生まれ、実に貧相、下相であって
「先生の身体は中背にして一見卑俗、奴僕のごとし、面(おもて)せせこましく、耳小さく、目つき鋭くしてくぼみ、印堂(眉と眉の間)せまく、面皰(めんぽう ニキビ)は常に黒し、眉は小さく、家続(目と眉の間)狭く、鼻低うして顴骨(かんこつ)高し。歯短くして、少なし。足は小にして裏をくりぬき足るがごとしして、甲高し。手裕なりといえども左君子の官(左腕)に刀傷あり。以上どれを取り上げても、先生としてふさわしき相なし。いずれのところに先生の相ありや」
水野南北が答えるには、「ワイは貧家に生まれ、そののちさらに貧しくなり、善人と交わらず、善事をしらずそだったゆえわが相いたって下相。しかし相をみようみようとする心でみると誠の相をみることができない」
「己身の相は一心の相にしかず」と外貌の姿より心中の相(姿)を重んじた。これを無相の相を観るといい、相法の極意とする
◎ 面白いのは、こんなに素晴らしい人相術の達人でいながら、結婚した奥さんは、みんないろいろと問題があり、何回も離婚を繰り返しました。自分の好きな人のことになると、冷静に見られなくなってしまったのでしょう。
◎2022年3月に、この記事がアクセス数でトップになりました。本の写真などを加えました。
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