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経済・政治・国際

2012年12月 9日 (日)

なぜ1%が富を独占するのか スティグリッッツ氏 1%は政治に投資する

2012年12月9日 更新版

 このブログは2012年9月19日付で書いたものです。実用的人間学研究会でこのテーマでお話ししました。私が12月7日に書いたブログ「選挙の予測でる。自公で3分の2か?~」という私の話しに対し、「ななし」さんが、コメントで「私が小選挙区制が悪いといっているが、欧米では小選挙区制を採用しているのが多い。民意により激しく変化するのが良いところで、小党乱立し連立で、決められない政治よりも、悪くとも決められる政治のほうが良い」と書いていました。それに対して私もコメントで、どのような立場に立つか、すなわち、大企業や、少数の富裕者や官僚やアメリカにとって有利な政治をするか一般庶民の立場に立つかで違うということを書きました。支配層は政治献金やマスコミ操作や様々な方策を使って、自分たちにとって有利な政党を応援し、またそれにより様々な見返りを得ると言うことを書き、それはスティグリッツ氏の話を読めばわかると書きました。そこで改めて、ブログを更新しました。欧米で小選挙区制度が多いのは、それらの国が、大企業(グローバリゼーションにもとづき、世界的に会社を広げている多国籍企業や大富豪がそれらの国を支配しているからです。

以下は9月に書いたブログです。一部文章を付け加えました。

ジョセフ・E・スティグリッツ氏の『世界の99%を貧困にする経済』が2012年7月31日付で徳間書店で発売されました。(価格1900円+税)新聞に大きな広告がのり、私はさっそく、本を注文しました。

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 この本は原題が"The Price of Inequality"で、アメリカで出版されたものがすぐに日本でも出版されたものです。原題は「不平等による代償」とでもいえばいいのでしょうか。

 スティグリッツ氏は、アメリカのユダヤ人の両親の子として生まれ、各大学で教鞭をとり、現在はコロンビア大学教授をしています。2001年にはノーベル経済学賞を受賞しました。また、クリントン政権では米国大統領経済諮問委員会委員長を務め、世界銀行で上級副総裁をう止めるなどの実務家でもあります。ところが、米財務省やIMFと対立しその職を辞しています。氏が職を辞した後、1%の富裕層のみに富を集中させる政策が行われた。

 アメリカの格差社会を告発し、世界の1%が富み、残りの99歳が貧困化する、現在の社会を告発し、ニューヨークのウオール街での、「われわれは99%だ」と主張するデモが起きた思想的源泉にもなっています。

 この本の内容は本の宣伝にかかれているものが良くあらわされています。以下書いてみます。

1、繁栄の分け前が1%の最上層に独占される理由

 (逆累進課税レントキーシングがもたらした。大金持ちの税金は一般人より安い税しか払わない。日本では証券優遇税制など。  レントキーシングとはー後述)                                          (アメリカでは政府の政策が、不平等を作り出す中心的な役割を果たしてきた)           (結果として高い失業率をもたらすマクロ経済学と通貨政策は、現在のアメリカ社会における不平等の主な源だ。

 (こういち 小泉政権のときに、証券取引による利益ー大金持ちはもっぱらこれによる利益であるーをただでさえ低い20%の税金を10%にまけてきました(証券優遇税制)。今までに超富裕層にどれだけ、税金をまけてきたか、想像してみてください。) 

2、上流層が大衆を食い物にする手口  

(様々なものがある。住宅バブルと略奪的貸付、債権者に有利な破産法、、学費ローン) 

3、大衆の認識はどのように操作されるのか                                 (不平等を正当化する宣伝、マスコミ支配 1%の人たちのためのマスメディア)

 (こういち記 これはアメリカだけではなく日本でも全く同じである。多くの新聞、テレビなどマスメディアは、自民党や、「変質した」民主党や維新などをもてはやしている。そして消費税増税には、決められる政治を行った、と手放しでほめそやしています)

4、政治と私欲によってゆがめられた市場 

  (企業に気前の良い政府 世界最大の多国籍企業であるGEは2010年に1兆1400億円の利益をあげていながら法人税を全く支払っていない。2004年、アメリカの多国籍企業は53兆円の利益を上げながら納税されたのは1,2兆円であった(2,3%) )

5、ヨーロッパより階級格差が大きいアメリカ

(貧しく生まれたものは、上に行く機会がほとんどない。教育不平等により)

6、貿易のグローバル化がGDPを押し下げる                                 (グローバル化が格差を広げた)

7、富裕層は公共投資を望まない 

8、緊縮財政はうまくいかない                                           (景気を悪化させ、多くの失業者を生み出す)

9、お金を払える人たちの正義                                                     (法律を自分たちの都合のよいように変える)

10、FRBは富の配分を気にもとめない 

11、インフレ・ターゲット論の怪しい土台

12、アメリカ経済は長期低迷を避けられない                           (高水準の不平等は経済の効率性と生産性を低下させる 困窮者は消費をしなくなり景気が悪化sて、パイを小さくしてしまう。富裕者は消費をあまりしない)

13、危機にさらされる民主主義                                           (アメリカは民主主義ではない)(機会均等の終焉)                             (2,010年の下院選挙で若者層の投票率が20%近くまで低下) 

14日米ともに問題は経済より政治

 (アメリカの政策での戦い)

1、遺産税 2銀行の救済 3、住宅ローンの再編成など大企業や富裕層に有利なように政策がかえられてきた。

 アメリカでは一人一票ではなく、一人1ドルの政治である

 政治に対して一般の人は、どうせ投票しても、一向に政治は良くならないと、あきらめさせてしまう。(こういちーどう転んでも、民主党か共和党の大統領。フランスのような社会党の政権などはできないことになっている。)

 スティグリッツ氏は序文に「世界中の抗議者から見ると、資本主義は約束したことではなく、約束していないことー不平等、公害、失業、そして最も重要な価値観の劣化ーを実現させている。現在の価値観のもとでは、どんな行為も許容され、責任をとるものは誰もいない」と書かれています。アメリカの政治制度は“一人一票”から”一ドル一票”の様相を呈してきている。政治制度は市場の機能不全を直すどころか助長しているのだ。

 このような内容です。私はまだすべてを詳しく読んだわけではありませんが、9月20日の実用的人間学研究会でこの本についての話をするために今、まとめ中です。また当日は、2012年8月19日(日)のNHKBS特集“知の巨人”で「世界経済再生への提言」というテーマで、スティグリッツ氏と、プリンストン大教授でやはりノーベル経済学賞を受賞した ポール・クルーグマン氏の話を紹介しています。私はこの番組をDVDにとっておきましたので、皆さんにも当日の人間学の例会で見ていただきます。

 いずれにしても、ほんの少数(1%)の大富豪が、政治献金と言う投資をして、政治家に自分たちに有利な政策を行わせ、裁判所もマスコミも支配し、貪欲に金を求めている。その結果、世の中には不平等、経済格差、教育格差が蔓延し、購買力は上がらず、景気は低迷を続けている。その結果、すでに欧州経済は破綻しかけ、アメリカも日本も不景気から脱却できない状態が続いています。中国も成長が停止しはじめインドはすでに低落を始めている。DVDにはこのような事態がなぜ起きたのかを示し、それをどのようにすれば打開できるかの方策を示しています。

 DVDの中で、スティグリッツ氏は、日本は以前一時ようやく、景気が回復しようとする中で、消費税を上げ、また景気を悪くしてしまったといいます。今度の消費税引き上げも当然景気をさらに悪化させます。スティグリッツ氏は景気を回復するには、ほんの一部の大富豪から一般庶民に所得を増やし、そのことにより購買力を上げ、景気を良くしなければならないといっています。大富豪はお金を使いません。ところが庶民はお金があればすぐ使います。日米ともに、証券優遇税制のような、金持ち優遇策をとり、貧しい人から税金をとろうとしています。また、クルーグマン氏も言っていますが、雇用を増やすこと、特に若者の雇用を増やすために積極的な財政出動をする必要があるということです。現在は所得格差が教育格差を生んでいる。そこで教育の機会均等を図るための施策が必要である。また製造業に偏らず、サービス産業や、教育産業などを発展させる政策を取り、そこでの雇用を増やす必要があるといっています。製造業は効率化で労働者を減らし、海外移転で国内の雇用を増やしません。また、規制緩和ではなく、短期に目先の利益を求めるような近視眼的なシステムを、やめさせなければならない。そのためには短期の投資による利益に対する税を、長期の投資の利益に対する税より高くする必要があるといっています。

 詳しくは、ぜひ直接本を読んでいただきたいと思います。本でも強調されていることは日米ともに問題は経済より政治です。自民、民主がいやになったら大阪維新へなどと言うマスコミのキャンペーンを信じず、どこが本当に庶民のための政治をするのか見極める必要があると思います。橋下氏の大阪維新は基本的に大企業や大富豪に有利な政策な政策を作り、規制緩和をすすめる新自由主義の立場です。さらに、自民党の中でも憲法改悪を求める安倍元首相などが連携を求めるように極めて保守的、時に右翼的な傾向が顕著です。今の民主党政権よりもっとひどい政治になる可能性があります。

レントシーキングとは(参考)

 富裕層が残りの人々を食い物にする目的で政治プロセスに協力をもとめる手法。

これは様々な形態をとる。政府からの公然・非公然の資源移転と補助金給付。市場の競争性を低下させる法規。既存の競争法に関する甘い取り締まり。企業が他者を食い物にするすることを許す法律や企業がコストを社会に転化することを許す法律・・・。(p85)

 最後の10章でゆがみのない社会への指針として、「経済改革への七つの基本方針」、「税制改革」、「富裕層以外の人々を支援する」、「グローバル化の緩和」、「完全雇用の回復と維持」、「新たな社会契約」、「持続可能かつ公平な成長を取り戻す」、「政治改革」と具体的な項目があげられています。

 小泉自民党政権以降、アメリカの諸政策は日本でもまねられ、実行されてきました。その結果が長く続く不景気と貧困と格差の増大という有様です。今こそ日本でも、ほんの一部の人々のための政治を変えるチャンスではないでしょうか。

参考 富裕者とは、不動産や収集品、耐久消費財などを除いた、投資可能な金融資産を

 100万ドル(8000万円)以上持っている人。2012年世界で1100万人。アメリカ306万人。日本182万人、ドイツ95万、中国56万人の順である。日本は富裕者が多い国である。

追記 2012年9月19日 「実用的人間学研究会のレジメ」

 明日20日の第46回の実用的人間学研究会例会で、私がお話しする「世界の99%を貧困にする経済 について」のレジメがようやく完成しました。レジメはA 4版で15ページです。表紙裏にスティグリッツ氏の写真と紹介。法人税率の変化と消費税の変化についてのグラフ。

 1ページから4ページまでは、2012年8月19日にNHKBS1の、BS特集“知の巨人”で、テーマは「世界経済再生への提言」についてです。私がテレビの映像を録画し、それをDVDにダビングしたものを見ていただきます。ビデオプロジェクターで見られますから、わかりやすいと思います。J・スティグリッツ氏とP・クルーグマン氏がNHKの女性アナウンサーのインタビューを受けます。その話しのポイントを書きだしました。

 4ページからは9ページまでは『世界の99%を貧困にする経済』の要約です。私自身が調べた日本の状況も加えてあります。序から10章までの要旨を書きました。

 9から11ページには、用語解説として、富裕層、大企業に有利な制度、新自由主義、グローバリゼーション、経済学の学派、多国籍企業、などについて簡単に解説しました。

 11ページから12ページは関連年表と、「こういちの人間学」ブログに書いた、今回のお話しに関連した記事の一覧をのせました。

13ページから14ページは、本の、日本の読者へ「日本人は繁栄を幅広く共有できたのか」をそのままコピーしました。また序のいちぶと、第6章の「大衆の認識はどのように操作されるのか」の「まとめ」をそのままコピーしました。

 今回は、本を読んで整理するのも大変であり、DVDの要旨を書きだすのも手間がかかったため、資料作りが大変でした。そのためにブログの更新が遅れました。50部ほど作りますので、人間学研究会関係の方には、例会参加者以外の方でも、ご希望があれば差し上げます。

 またここに書いたブログの記事は、あまりに不十分なので、ここに書き加えるか、新しい記事を加えます。いずれにしても、今回、お話しするためにいろいろ調べてみてアメリカや日本の政治、経済がいかなるものかについて実によくわかりました。

2013年9月追記

 安倍内閣のやっている、そしてやろうとしている政策はまさに、スティグリッツ氏が指摘する、1%のための政策そのものです。

http://koiti-ninngen.cocolog-nifty.com/koitiblog/2013/09/post-70bf.html

2010年8月16日 (月)

法人税の実質税率国際比較に対して 「通行人さん」にこたえます

8月15日付で私の書いたブログ「韓国と日本の比較」に対して「通行人」さんが、「日本の法人税の実効税率がそんなに高くない」というのは誤りであると、書いてこられました。コメントの中では、長くてこたえきれないので、改めてこちらに書いてみました。

 「通行人」さんによれば日本の法人所得税(以下法人税)の実効税率は、先進、中級工業国の中では、高いとおっしゃっています。ですから、日本の大企業は税率の高い日本を避け、税率の安い国を選んで事業を分散しているのではないかと言っています。それで一つ疑問なのは、そのように日本で法人税を払わないようにしている大企業が多いのだということです。ではそういう大企業は日本が法人税率を下げたら日本で法人税を払うようになるのでしょうか。そんなことを言ったら世界一低くするまで戻らないのでしょうか。

 それから、「通行人」さんが言っている実効税率には、企業の社会保険負担などが入っているのでしょうか。さらには日本では研究開発控除があって、大企業がその恩典を受けていることなども、計算に入れているのでしょうか。

 「法人税の実効税率の国際比較」については、その名前で、WEBで検索していただくと、上位に出てきますが、井立雅之氏(神奈川県総務税制企画担当部長)の詳細な資料があります。興味がある方は、ぜひお読みになってください。

 国の法人税は日本30%、アメリカ35%、ドイツ25%、フランス33%、イギリス、30%、イタリア、33%になっています。基本の国の法人税そのものは特別に高くはありません。ところが日本では法人地方税が9,54%あって合計で、39,54%となりそれが他の国より高いと言われるのです。それでは地方税などを入れて比べてみましょう。合計額でアメリカ、40,75%(カリフォルニア州税を含める、州により違い、ニューヨーク市では49,95%です)、イギリスは30%、ドイツ48,55%(付加税含む)フランス36,67%(付加税を含む)、中国25%、韓国24,2%です。いずれも2010年1月現在の数字です。

 企業は税金の他に、社会保険料の会社負担分があります。日本においては50%ですが、ヨーロッパでは企業の負担率が高いのです。アメリカは社会保険料の支払いがありませんが民間の保険会社に支払う金額はばかになりません。さらに日本にはない会社の所有する不動産に対しての税負担をさせる国もあります。井立氏の資料の別表5で、GDPに対する法人所得税の不動産に対しての課税まで含めた実質税率は、日本9,3%、イギリス8,3%、ドイツ9,2%、フランス15,8%、イタリア14,3%アメリカ7,2%となっていますが、アメリカは民間保険会社に払っている保険料は、計算に入っていないので実質はかなり高くなっているのです。この結果、井立氏は「日本の法人税実効税率は先進諸国の中で、高いとは言えない」といっています。このことは財務省の役人も実は知っていることなのです。表面だけの数字で日本の法人税は高いから低くしろなどという経団連の連中の厚かましさはどうでしょうか。また、実態を知らないで、確かに、日本の法人税は高いから消費税を高くしても、法人税を下げるべきだというのはおかしなことではないでしょうか。

 それに「通行人」さんも言っているように、大企業というか多国籍企業は、会社を税金や賃金の安い国に分散させ、税金を日本にたくさん払っていないではないですか。さらに、日本では、研究開発費の税額からの控除があり馬鹿にならない金額を大企業はまけてもらっています。また減価償却費も最近、早く償却できるように企業に有利なようにかえられました。研究開発費は平成19年3月期で、トヨタは762億円、ホンダは241億円まけてもらっています。また大銀行がこのところ大幅に利益を出しているにも関わらず、前の損失を埋めてからというので、税金を長いあいだだはらっていません。また会社や金持ちに有利な株式などの有価証券での利益に対しての20%の税を10%に下げたまま戻していません(証券優遇税制)。このようなことはおかしなことではないですか。このようなことをすべて論議する必要があると思います。

 

2010年3月24日 (水)

コロンビアのボコタ市長モックスの改革  NHK世界のドキュメンタリー

NHK、BS世界のドキュメンタリーで、シリーズ爆走都市の2回目で2010年3月23日放送された、コロンビア ボゴタを見ました。コロンビアというと、南米の国で、私の好きなコーヒー、コロンビアの生産国、そしてむかし、大久保で街娼がたくさんたっていた時、髪を金髪にしているけれども、背が低い女性たちを思い出します。コロンビアは南アメリカの北西部にあり、ブラジル、ベネズエラなどに接しています。ラテンアメリカでは人口が、ブラジル、メキシコに次いで多い国です。前にあげたコーヒーの生産が有名ですが、麻薬のコカインの生産も多く、反政府ゲリラの活動も強いところです。ボゴタは人口770万人、コロンビアの首都でアンデス山脈の2640mの盆地にあります。ちなみに、コロンビアの名はアメリカ大陸を発見したコロンブスから来ています。

 ここで取り上げられた、二人のボコダ市長が思い切った改革をするまでは、高級住宅街とスラム街が隣り合わせに併存し、暴力と犯罪が横行する世界一危険な都市と言われました。このままではいけないと思った、大学の学長で哲学者のアンタナス・モックス氏が1994年市長選に無党派で立候補し、見事当選しました。モックス氏は、まず、市役所や警察官などで汚職をした人たちを思い切って追放し、まじめで有能な職員に変えました。また市を変えるには、交通ルールを守らないとか、人々のモラルに対する意識を変えなければいけないといって、道路にピエロの恰好をした人たちを送り、マナーを守った人には、白いカードを、守らなかった人には赤い(レッド)カードを渡しました。そのような意表を突くいろいろな方法でモラルの向上を誠実にして愚直に訴え続けました。その結果市民の意識も少しづつ変わってきました。モックス氏はひげを生やした、ごく普通の哲学者がそのまま政治家になった感じで、そのスタイルは市長になっても変わりませんでした。市民の目から、アドバイスしてくれる母親の意見もいろいろとりあげて行きました。ちなみに、モックス氏は、リトアニア系の移民の子孫です。

 当時のボゴタ市では銃で殺される人が、大変多かったのです。1990年前半、人口10万人当たりの犯罪による死者の数は世界最悪でした。モックス氏は夜一時以後のレストランなどの営業禁止、家庭内暴力をなくそうという運動、市民の持っている武器を回収する運動などを行いました。大きな抵抗もありましたが、それらを実行し、その結果、犯罪での死者が劇的に減少しました。人々ははじめは疑問に思っていましたが次々と成果を上げる市長を支持しました。人々から資金を集め公共事業に投資しました。治安が安定した、ボゴタには外資も次々に投資を始めるようになりました。

 1997年、コロンビアでは市長の再任はできないことになっているので、モックス氏のあとにやはり無所属のエンリケ、ペニャロサ氏が市長となりました。ペニャロサ氏はスタッフには多くの有能な民間人を登用しました。そして安定した市の状況を背景として思い切った、都市改革を始めました。町の中心にあった、犯罪の温床であったスラム街を取り壊し、公園に変えました。貧しい人のために、安い公営アパートを作りました。道路を整備し公共の交通機関、新交通システムであるトランスミレニオを作りました。専用レーンで、安く早く人々を運べます。また、自転車専用道路を作りました。そして多くの人が自転車を使うようになりました。市の中にあった豪華のゴルフ場を素敵な公園にし、そのほかにも1000か所の公園を造りました。また素晴らしい大きな図書館を作り、市民がみんな利用しやすいようにしました。これらの政策により町は劇的に素晴らしい都市に生まれ変わりました。これらの公共事業で多くの雇用が生じて、人々の所得も向上したことでしょう。

 二人の市長が行った、6年間の政治により、犯罪は劇的に減少し、所得階層の差が減少し、素晴らしい機能的な都市に変わりました。ペニャロサ市長は3年の任期を終えて再選できないので、再び、モックス氏が市長となりました。これを見ても、一般庶民のための政治をすることがいかに大事であるかがわかります。それに引き換え日本の政治状況は、まだまだ、民衆のための政治になっていません。民主党になってもあまり変化せず、人々は失望しています。残念なことです。その後モックスはじめその流れによる3人の元市長は、緑の党を作り早速5議席を獲得し、大統領候補にも挙がっています。この、ボゴタの市長に比べて、日本の石原都知事が、市民の暮らしを良くするのではなく、自分の名誉を高めるために、ファーストクラスで夫婦で外国に行き、超豪華なホテルに泊まったりするなど、オリンピックの招致に多大なお金をかけて来たのは嘆かわしい限りです。

 

2009年9月25日 (金)

民のための政治 ー朝鮮時代と現在の日本、アメリカ

韓国歴史ドラマ 世宗と、世祖について

 韓国歴史ドラマの「大王世宗」(86話)と、「イ、サン(世祖大王)77話」も、いよいよ面白くなってきました。ただ、両方とも、BS放送であることと、平日の昼間の時間なので、見ていない方も多いと思います。(追記:2011現在イ サンはNHKの通常放送で放送中です)朝鮮王朝の中で、特にすぐれた王とされる4人の王のうち、三人がこれらのドラマに登場してきます。朝鮮王朝で、もっともすぐれた大王といわれる、4代の世宗と、52年間も在位の21代の王である英祖とその孫の最も愛された王といわれる22代正祖です。

 その三人に共通していることは、民が最もたいせつであり、政治はその民のためにあるという、儒教の文治政治の精神に基づいて政治を行っていることです。大王世宗のドラマでは、「一人の民でも大切にし、民を思う心は、天地を超えた」という言葉が出てきます。世宗は三男として生まれ、重臣たちの争いにまきこまれいろいろな苦労を重ねています。英祖は、母親が低い位であったため、若い時には大変苦労します。(2011年現在NHKBS放送で日曜日に英祖の母である同伊(トンイ)が放送中です。)ともかく長い治世の間、民の暮らしを守るということを第一にします。息子の世子(皇太子)を、重臣のたくらみに乗せられ誤って米櫃に入れて殺してしまうという、過ちを犯しますが。次の世子にした孫には、世の中の庶民の暮らしを見せ、その苦労している有様を見せたりしています。正祖も厳しい後継者争いがあり、何回かの暗殺の危機を乗り越えてきました。

 ただ、ドラマの「大王世宗」では世子が暴虐で、世子を辞めさせられることになっていますが。歴史上では、父親の太宗が三男の力を評価しかわいがっているのを知って、わざとおかしなふるまいをして、世子を降りたとも言われています。世宗は前にも書きましたが、学問を推奨し、1432年に天文台を作るなど天文学をすすめ、世界最初の雨量計が作られ、文字が読めない庶民のために、ハングル文字を作らせました。これらにより世の中は安定し李朝朝鮮が長く続く基礎を作りました。

 英祖と、正祖とで、、実力のある人物を抜擢し、さまざまに、教育、文化、芸術を推奨し、朝鮮王朝のルネッサンスといわれました。この時代の民は、平和で豊かな暮らしを楽しんだのです。ところが、正祖の死後、幼い王が立ち、王太后と外戚が権力を握るようになると、たちまち、民の暮らしはひどいものになりました。

 ちょうどこれは、後漢の初期の光武帝から第三代章帝までの世の中と全く同じです。初代の光武帝は早くから父親を亡くし、苦労します。そして民の暮らしを第一に考える政治を行います。元元(民衆のこと)持って首とす(最も大切である)という儒教の精神のもとに政治をおこない、その精神をのちの皇帝たちにも徹底します。また、政治を行う、官吏にも貧しい清廉潔白な人物に行わせます。そして前漢末の混乱によって急減した人口が急速に回復します。そして後代で「建武、永平の治」として、模範的な善政とたたえられたのです。しかし4代和帝の死後、わずか生後100日の幼児を皇帝にし、外戚や宦官が横暴な政治を行うと、人が人を食べるというような時代に戻ってしまいました。

 最近の、日本とアメリカの政治の急激な変化は、アメリカの、一握りの大企業や投資家そして政治家が世界を牛耳り、民衆の暮らしを顧みず、ほしいままに自分たちの利益を追求してきました。日本でも、小泉首相の新自由主義に基づく政策のもと、大企業の利益はどんどん上がり、逆に庶民の収入は1世帯当たり、100万円も減ってしまいました。小泉は大マスコミの世論操作も味方にし、「自民党をぶっつぶす」というキャッチフレーズの元、選挙に大勝しましたが。その結果庶民をいじめる政策をやりたい放題でした。あとを継いだ、首相も、何の庶民の苦労も知らぬ、二世、三世議員で、人々の反感を買いました。「おごれるものひさしからず」とは選挙の結果でさんざん言われましたね。その結果、見事に小泉は、自民党をぶっつぶしました。

 新たに生まれた、日本の民主党政権、そしてアメリカのオバマ大統領の民主党政権が人々の期待に応え、本当に民を大切にする政治を行うのを大いに期待しています。

2009年8月13日 (木)

衆議院選挙を前にして 民衆のための党がまとまらないか

民衆(一般市民)のための政治勢力がまとまらないものか

 衆議院選挙がもう少しで、始まろうとしています。小泉以来の自民、公明の政治により、民衆の暮らしはひどくなり、従来、自民党に入れていた人も、さすがに目をさまし、今度は民主党を中心とした政府に期待しようとしています。私のいる、東京一区でも、与謝野対海江田の一騎打ちで、影の首相とまで言われた現職大臣の与謝野さえ危ないといわれています。私は当然、与謝野を落としたいため、海江田にいれます。しかし、政党で、この党こそがと、心から言える党が残念ながらないのです。そのような人は多く、無党派層といわれますが。私もそうなのです。

 民主党は、今でこそ、庶民の味方となっていますが、その大本は自民党です。党首の鳩山氏は元自民党、小沢氏は自民党を仕切った元幹事長です。前原氏のように、かなり右寄りの考え方の人が多いのです。また政治家の二世、三世議員や、大会社の社長の息子や縁戚者も多いのです。もうすでに出始めていますが、政権をとったら、ころころとまた自民党寄りの、大企業本位、アメリカべったりに戻ってしまうのではないかと。

 社民党はそのいうところは、中なかいいのですが、いかんせんその勢力は小さすぎです。共産党は、昔私もずいぶん前に党員だったこともあり、その政策に共感するところは多いのです。最も徹底して、庶民の立場に立っているのは、共産党です。大企業の利益を抑え、アメリカへの追随を止め、庶民の暮らしを豊かにする。しかし、いろいろな弾圧もあり、またまだ、人々へのイメージの転換を積極的に図ろうとしないこともあり、中なか社民党と同じで、特に小選挙区制では伸びません。共産党という名前や赤旗という名前を変えたらどうかといわれますが、変えようとはしません。その強力なしたざさえをしている、いわゆる民主団体のメンバーも、高齢化し、メンバーの意識も旧態依然なのではないかと思われます。

 しかし私は、何とか、民主党のなかの、民衆の立場に立つ人、民主主義的革新的な人々、さらには、自民党の中でもリベラルな立場の人々、社民党や共産党まで、その考え方の違いを超えて、政策ごとでもいいから連合して、ひとつの勢力を作ることができれば、人々の目にもはっきりして、良いのではないかと思います。これは夢物語のようではあるけれど、もしこのような党、若しくは当面勢力ができれば、多くの人々の支持を得られるのではないかと思うのですが。いかがでしょうか。

追記 2011年10月 民主党に与謝野馨が大臣で入ったとか、現在の民主党の政治はもうほとんど自民党と代わりません。

2009年7月28日 (火)

後漢初期の政治と日本(修正)

 三国志の時代の小説が多いのに比べ、後漢初期の時代というのは、ほとんどありません。現在私の知るところ2冊*です。この時代がまじめで地味な時代だからでしょう。最近あいついで、「後漢書」の訳が出てきましたから、これから増えるかもしれません。私が小説を書き始めたころは全訳がなく、中国語を勉強し、中国語の原文を訳しながら、小説を書いていました。  (*『光武帝』と『班彪』)

追記 

今(2011年)読売新聞に宮城谷昌光氏の光武帝を主人公にした『草原の風』が連載中です。

 建武・永平の治

 さて後漢の最初の皇帝である、光武帝という人は、若い時に父親を亡くし、大変若い時に苦労した人です。そして、皇帝になると、民衆こそが最も大事であると(元元をもって首とする)いって、民衆のための政治をしました。宮殿での生活は質素にして、余計な経費を使いません。周辺の国と友好関係を結び常備軍を廃止しました。無駄な役所は整理し経費を大幅に削減しました。それらにより、税金を10分の一から何と30分の1にしました。また、[人間ほど尊いものはない]と言って奴隷を解放しました。飢饉には手厚く対処し、灌漑設備を整備しました。これらの善政により、その後4代皇帝まで、「人相食むー人が人食べる」という恐ろしい事態が起きず、農民の反乱もおきませんでした。これを後世では、建武、永平の治としてたたえました。日本でもそれにあやかりたいと、後醍醐天皇が元号を建武とし、建武の中興といわれました。ところが、4代皇帝和帝が死ぬと、わずか生後100日の乳児を皇帝にしました。それいご、私欲にはしる外戚や宦官が幅を利かせ、また、「人相食む」という事態になってしまいました。

 人口の変化

さて、その政治を支えたのが、第五倫(三公のうち、司空となる)などの清廉潔白なすぐれた役人(循吏といいます)でした。その結果、王莽の乱により5000万人から1400万人まで減った人口が4代の皇帝の間に、ほぼ元に戻りました。ところが三国志の時代には全国で800万人に減少してしまいました。特に蜀の国では90万くらいしか人口がなかったのです。その少ない人口では諸葛孔明もたいへんだったことでしょう。またいかに戦乱が厳しかったかがわかります。今から2000年も前のことですが、このようなことはあまり知られていません。

日本の悪政

それにくらべ、日本では小泉政治以後の新自由主義にもとづく自民党政治により、弱者を痛めつける政治を続けてきました。生活保護の家庭で母子加算をなくすなんて本当にひどい政治です。自殺者も増えています。本当に早く政権が代わって、民衆のための政治に変わればよいと思います。

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