なぜ1%が富を独占するのか スティグリッッツ氏 1%は政治に投資する
2012年12月9日 更新版
このブログは2012年9月19日付で書いたものです。実用的人間学研究会でこのテーマでお話ししました。私が12月7日に書いたブログ「選挙の予測でる。自公で3分の2か?~」という私の話しに対し、「ななし」さんが、コメントで「私が小選挙区制が悪いといっているが、欧米では小選挙区制を採用しているのが多い。民意により激しく変化するのが良いところで、小党乱立し連立で、決められない政治よりも、悪くとも決められる政治のほうが良い」と書いていました。それに対して私もコメントで、どのような立場に立つか、すなわち、大企業や、少数の富裕者や官僚やアメリカにとって有利な政治をするか一般庶民の立場に立つかで違うということを書きました。支配層は政治献金やマスコミ操作や様々な方策を使って、自分たちにとって有利な政党を応援し、またそれにより様々な見返りを得ると言うことを書き、それはスティグリッツ氏の話を読めばわかると書きました。そこで改めて、ブログを更新しました。欧米で小選挙区制度が多いのは、それらの国が、大企業(グローバリゼーションにもとづき、世界的に会社を広げている多国籍企業や大富豪がそれらの国を支配しているからです。
以下は9月に書いたブログです。一部文章を付け加えました。
ジョセフ・E・スティグリッツ氏の『世界の99%を貧困にする経済』が2012年7月31日付で徳間書店で発売されました。(価格1900円+税)新聞に大きな広告がのり、私はさっそく、本を注文しました。
この本は原題が"The Price of Inequality"で、アメリカで出版されたものがすぐに日本でも出版されたものです。原題は「不平等による代償」とでもいえばいいのでしょうか。
スティグリッツ氏は、アメリカのユダヤ人の両親の子として生まれ、各大学で教鞭をとり、現在はコロンビア大学教授をしています。2001年にはノーベル経済学賞を受賞しました。また、クリントン政権では米国大統領経済諮問委員会委員長を務め、世界銀行で上級副総裁をう止めるなどの実務家でもあります。ところが、米財務省やIMFと対立しその職を辞しています。氏が職を辞した後、1%の富裕層のみに富を集中させる政策が行われた。
アメリカの格差社会を告発し、世界の1%が富み、残りの99歳が貧困化する、現在の社会を告発し、ニューヨークのウオール街での、「われわれは99%だ」と主張するデモが起きた思想的源泉にもなっています。
この本の内容は本の宣伝にかかれているものが良くあらわされています。以下書いてみます。
1、繁栄の分け前が1%の最上層に独占される理由
(逆累進課税とレントキーシングがもたらした。大金持ちの税金は一般人より安い税しか払わない。日本では証券優遇税制など。 レントキーシングとはー後述) (アメリカでは政府の政策が、不平等を作り出す中心的な役割を果たしてきた) (結果として高い失業率をもたらすマクロ経済学と通貨政策は、現在のアメリカ社会における不平等の主な源だ。
(こういち 小泉政権のときに、証券取引による利益ー大金持ちはもっぱらこれによる利益であるーをただでさえ低い20%の税金を10%にまけてきました(証券優遇税制)。今までに超富裕層にどれだけ、税金をまけてきたか、想像してみてください。)
2、上流層が大衆を食い物にする手口
(様々なものがある。住宅バブルと略奪的貸付、債権者に有利な破産法、、学費ローン)
3、大衆の認識はどのように操作されるのか (不平等を正当化する宣伝、マスコミ支配 1%の人たちのためのマスメディア)
(こういち記 これはアメリカだけではなく日本でも全く同じである。多くの新聞、テレビなどマスメディアは、自民党や、「変質した」民主党や維新などをもてはやしている。そして消費税増税には、決められる政治を行った、と手放しでほめそやしています)
4、政治と私欲によってゆがめられた市場
(企業に気前の良い政府 世界最大の多国籍企業であるGEは2010年に1兆1400億円の利益をあげていながら法人税を全く支払っていない。2004年、アメリカの多国籍企業は53兆円の利益を上げながら納税されたのは1,2兆円であった(2,3%) )
5、ヨーロッパより階級格差が大きいアメリカ
(貧しく生まれたものは、上に行く機会がほとんどない。教育不平等により)
6、貿易のグローバル化がGDPを押し下げる (グローバル化が格差を広げた)
7、富裕層は公共投資を望まない
8、緊縮財政はうまくいかない (景気を悪化させ、多くの失業者を生み出す)
9、お金を払える人たちの正義 (法律を自分たちの都合のよいように変える)
10、FRBは富の配分を気にもとめない
11、インフレ・ターゲット論の怪しい土台
12、アメリカ経済は長期低迷を避けられない (高水準の不平等は経済の効率性と生産性を低下させる 困窮者は消費をしなくなり景気が悪化sて、パイを小さくしてしまう。富裕者は消費をあまりしない)
13、危機にさらされる民主主義 (アメリカは民主主義ではない)(機会均等の終焉) (2,010年の下院選挙で若者層の投票率が20%近くまで低下)
14、日米ともに問題は経済より政治
(アメリカの政策での戦い)
1、遺産税 2銀行の救済 3、住宅ローンの再編成など大企業や富裕層に有利なように政策がかえられてきた。
アメリカでは一人一票ではなく、一人1ドルの政治である。
政治に対して一般の人は、どうせ投票しても、一向に政治は良くならないと、あきらめさせてしまう。(こういちーどう転んでも、民主党か共和党の大統領。フランスのような社会党の政権などはできないことになっている。)
スティグリッツ氏は序文に「世界中の抗議者から見ると、資本主義は約束したことではなく、約束していないことー不平等、公害、失業、そして最も重要な価値観の劣化ーを実現させている。現在の価値観のもとでは、どんな行為も許容され、責任をとるものは誰もいない」と書かれています。アメリカの政治制度は“一人一票”から”一ドル一票”の様相を呈してきている。政治制度は市場の機能不全を直すどころか助長しているのだ。
このような内容です。私はまだすべてを詳しく読んだわけではありませんが、9月20日の実用的人間学研究会でこの本についての話をするために今、まとめ中です。また当日は、2012年8月19日(日)のNHKBS特集“知の巨人”で「世界経済再生への提言」というテーマで、スティグリッツ氏と、プリンストン大教授でやはりノーベル経済学賞を受賞した ポール・クルーグマン氏の話を紹介しています。私はこの番組をDVDにとっておきましたので、皆さんにも当日の人間学の例会で見ていただきます。
いずれにしても、ほんの少数(1%)の大富豪が、政治献金と言う投資をして、政治家に自分たちに有利な政策を行わせ、裁判所もマスコミも支配し、貪欲に金を求めている。その結果、世の中には不平等、経済格差、教育格差が蔓延し、購買力は上がらず、景気は低迷を続けている。その結果、すでに欧州経済は破綻しかけ、アメリカも日本も不景気から脱却できない状態が続いています。中国も成長が停止しはじめインドはすでに低落を始めている。DVDにはこのような事態がなぜ起きたのかを示し、それをどのようにすれば打開できるかの方策を示しています。
DVDの中で、スティグリッツ氏は、日本は以前一時ようやく、景気が回復しようとする中で、消費税を上げ、また景気を悪くしてしまったといいます。今度の消費税引き上げも当然景気をさらに悪化させます。スティグリッツ氏は景気を回復するには、ほんの一部の大富豪から一般庶民に所得を増やし、そのことにより購買力を上げ、景気を良くしなければならないといっています。大富豪はお金を使いません。ところが庶民はお金があればすぐ使います。日米ともに、証券優遇税制のような、金持ち優遇策をとり、貧しい人から税金をとろうとしています。また、クルーグマン氏も言っていますが、雇用を増やすこと、特に若者の雇用を増やすために積極的な財政出動をする必要があるということです。現在は所得格差が教育格差を生んでいる。そこで教育の機会均等を図るための施策が必要である。また製造業に偏らず、サービス産業や、教育産業などを発展させる政策を取り、そこでの雇用を増やす必要があるといっています。製造業は効率化で労働者を減らし、海外移転で国内の雇用を増やしません。また、規制緩和ではなく、短期に目先の利益を求めるような近視眼的なシステムを、やめさせなければならない。そのためには短期の投資による利益に対する税を、長期の投資の利益に対する税より高くする必要があるといっています。
詳しくは、ぜひ直接本を読んでいただきたいと思います。本でも強調されていることは日米ともに問題は経済より政治です。自民、民主がいやになったら大阪維新へなどと言うマスコミのキャンペーンを信じず、どこが本当に庶民のための政治をするのか見極める必要があると思います。橋下氏の大阪維新は基本的に大企業や大富豪に有利な政策な政策を作り、規制緩和をすすめる新自由主義の立場です。さらに、自民党の中でも憲法改悪を求める安倍元首相などが連携を求めるように極めて保守的、時に右翼的な傾向が顕著です。今の民主党政権よりもっとひどい政治になる可能性があります。
レントシーキングとは(参考)
富裕層が残りの人々を食い物にする目的で政治プロセスに協力をもとめる手法。
これは様々な形態をとる。政府からの公然・非公然の資源移転と補助金給付。市場の競争性を低下させる法規。既存の競争法に関する甘い取り締まり。企業が他者を食い物にするすることを許す法律や企業がコストを社会に転化することを許す法律・・・。(p85)
最後の10章でゆがみのない社会への指針として、「経済改革への七つの基本方針」、「税制改革」、「富裕層以外の人々を支援する」、「グローバル化の緩和」、「完全雇用の回復と維持」、「新たな社会契約」、「持続可能かつ公平な成長を取り戻す」、「政治改革」と具体的な項目があげられています。
小泉自民党政権以降、アメリカの諸政策は日本でもまねられ、実行されてきました。その結果が長く続く不景気と貧困と格差の増大という有様です。今こそ日本でも、ほんの一部の人々のための政治を変えるチャンスではないでしょうか。
参考 富裕者とは、不動産や収集品、耐久消費財などを除いた、投資可能な金融資産を
100万ドル(8000万円)以上持っている人。2012年世界で1100万人。アメリカ306万人。日本182万人、ドイツ95万、中国56万人の順である。日本は富裕者が多い国である。
追記 2012年9月19日 「実用的人間学研究会のレジメ」
明日20日の第46回の実用的人間学研究会例会で、私がお話しする「世界の99%を貧困にする経済 について」のレジメがようやく完成しました。レジメはA 4版で15ページです。表紙裏にスティグリッツ氏の写真と紹介。法人税率の変化と消費税の変化についてのグラフ。
1ページから4ページまでは、2012年8月19日にNHKBS1の、BS特集“知の巨人”で、テーマは「世界経済再生への提言」についてです。私がテレビの映像を録画し、それをDVDにダビングしたものを見ていただきます。ビデオプロジェクターで見られますから、わかりやすいと思います。J・スティグリッツ氏とP・クルーグマン氏がNHKの女性アナウンサーのインタビューを受けます。その話しのポイントを書きだしました。
4ページからは9ページまでは『世界の99%を貧困にする経済』の要約です。私自身が調べた日本の状況も加えてあります。序から10章までの要旨を書きました。
9から11ページには、用語解説として、富裕層、大企業に有利な制度、新自由主義、グローバリゼーション、経済学の学派、多国籍企業、などについて簡単に解説しました。
11ページから12ページは関連年表と、「こういちの人間学」ブログに書いた、今回のお話しに関連した記事の一覧をのせました。
13ページから14ページは、本の、日本の読者へ「日本人は繁栄を幅広く共有できたのか」をそのままコピーしました。また序のいちぶと、第6章の「大衆の認識はどのように操作されるのか」の「まとめ」をそのままコピーしました。
今回は、本を読んで整理するのも大変であり、DVDの要旨を書きだすのも手間がかかったため、資料作りが大変でした。そのためにブログの更新が遅れました。50部ほど作りますので、人間学研究会関係の方には、例会参加者以外の方でも、ご希望があれば差し上げます。
またここに書いたブログの記事は、あまりに不十分なので、ここに書き加えるか、新しい記事を加えます。いずれにしても、今回、お話しするためにいろいろ調べてみてアメリカや日本の政治、経済がいかなるものかについて実によくわかりました。
2013年9月追記
安倍内閣のやっている、そしてやろうとしている政策はまさに、スティグリッツ氏が指摘する、1%のための政策そのものです。
http://koiti-ninngen.cocolog-nifty.com/koitiblog/2013/09/post-70bf.html
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